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異世界カレー屋はスパイスで癒します。〜聖女として召喚された俺のカレーの効果がヤバ過ぎる。  作者: 間宮芽衣(旧ブー横丁)


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【23】覚醒!筋肉ぱっつんぱっつんへの第一歩〜ルナリア視点


◇◇ルナリア視点


 私が『ラグナの番』であるということを思い出したのは18才の誕生日を迎えた夏の終わりだった。


 両親を流行病で亡くし、私は一人で山奥の小屋で自給自足をしながら暮らしていた。


 元々父親が木こりだった影響で森に住んでいたのだ。


 私は、ひっそりとした森の奥に住むのが好きだった。何故か、人に会いたいと思う事があまりなかったのだ。


 ――今思えば前世までに何度も殺されてきたことがその原因だったのかもしれない。


 人里には極力最低限の買い物以外で近づいた事がなかった。


 記憶を取り戻した日。


 大切な番であるラグナの事もそうだが、何度も殺された記憶まで戻ってしまった。


 生々しい痛みの記憶に一人で震えていると、ラグナが私を迎えに来てくれた。


「ルナリア…。」


そう言ってラグナは痛ましさと嬉しさ、それに愛おしさが混ざったような顔をした。


「っ、ラグナ」


私は自分の中にある痛みを埋めるように彼にしがみつく。


「…会いたかった。いつも、苦しませてごめんな。」


「…私の方こそ何度も死んで、貴方を悲しませてしまってごめんなさい。」


私達はひっそり数日間だけ一緒に暮らしていたが、王子である彼がそんな生活を続けられる訳もなく…。


「ごめん。ルナリア。『あいつら』が追ってきている。ここに残っていてもどちらにしても君は殺されてしまう。


 ――だから一緒に行こう?」


そう言われて私は頷く。


 『番』とはお互いがお互いしか好きになれない。まるで呪いのようだ。


(それでも、ラグナのことが好きだから仕方ない。)


私は彼と一緒に行く事を選択した。


 そして、私達は何度か襲撃に遭遇したもののなんとかレガルド王国に辿り着いたのだ。


 ――だが、普通の宿では万が一見つけられた場合多くの死者を出してしまう可能性もある。


 途方にくれていたところ、ラグナがオサダさんの店の前で目を見開いて立ち止まったのだ。


「――この店は亜空間につながっているようだ。

 ここならば万が一何かあっても、身を守れそうだ。


 どうしてこんな不思議な建物が出来たのかわからない。それに、どんな人物が店主かわからないが。


 匿って貰えないかお願いしよう。」


 ――そして私達はオサダさんと出会ったのだ。


 彼はとても親切で公平な人物だった。


 オサダさんの提供してくれた部屋は見たこともない程豪華で、食事もとても美味しく驚いてしまった。


 だが、翌日王宮に行った私達は、宰相様に協力を要請したが断られてしまった。


 …確かに見ず知らずの人物の為に国が滅ぶリスクなど彼の立場なら取る事が出来ないだろう。


 私達が困り果てているとクラリッサ様が私に言ったのだ。


「――ルナリア。

 お前のせいで番のラグナは王子なのに逃げ回ることになって、うちの国にまで飛び火しそうになっている。


 なのにテメェはさっきから黙ったままだよな?何守られて何も言わずにビクビクしてんだ?


 ぁ゛あ?何とか言えよ!!


 ――テメェ、ラグナのこと好きなんだろ?!」


頭を殴られたような衝撃だった。


 『私の事を認めない。』と言われていたのに、振り返ってみると私は自分で変わろうなんて思った事がなかった。


 どこかで最初から無理だ、ラグナの環境の難しさのせいだ、と思ってしまっていたのかもしれない。


(――本当に好きなら変わらなきゃ。)


その日、私の心に火が付いた。


 絶対に認められるくらい強くなると決心をした。


◇◇

 

「ほら、ルナリア。ルナリアの好きな苺飴だ。」


大きな広場でラグナが私の好きな苺飴を買ってくれた。


 馬車が来るとサッと庇ってくれて、いつも優しくしてくれる。


 ――いつからか、彼の優しさに私は甘えきってはいなかっただろうか。


「…ラグナ。ありがとう。

 その、今まで甘えてばかりで、本当にごめんなさい。」


その言葉にラグナが目を見開く。


「ルナリア…。」


「私、竜人族の人に認めて貰えるまで頑張るから!!

 筋肉、パッツンパッツンになるまで、頑張るから!!」


泣きながら言うと、ラグナがぷるぷると首を振る。


「…私も君を守りきれずすまない。」


「ねえ、ラグナ。私がパッツンパッツンで首がごんぶとになっても、私の事を好きでいてくれる…?」


その言葉にラグナが頷く。


「ああ!!もちろんだ!!君がどんな姿でも私の君への愛は変わらない!!」


その言葉に私は涙ぐむ。


「わかったわ!!私、頑張るからっ!!

 竜人族のどんな女性よりパッツンパッツンになってみせるから!!」


 ――その日の夜。


 オサダさんが送別会を開いてくれた。


 パーシーさん、タロッサさん、ゴードンさん、オサダさん、そして私達二人だけの身内だけのものである。


 パーシーさんが私の大好きな苺タルトを作ってくれて、オサダさんがタンドリーチキンやカレー、ラグナの好物の海老を使った料理など色んな料理を作ってくれた。


「それではラグナ様とルナリアさん、二人の前途を祝して!!カンパーイ!!」


オサダさんの言葉で私達はモヒートで乾杯する。


 楽しくて温かい、最高の夜だった。


 ラグナがこんなに楽しそうに笑っているのを何回も転生してそばにいたけれど初めて見た気がする。


「それにしても、まさかの展開ですが一番穏便に済みそうな方法が見つかって良かったですね。」


そう言ってタロッサさんが笑った。


「僕、戦争になるかと思ってたよ。」


パーシーさんも安心したように息を吐いた。


「嬢ちゃん。筋トレくらいなら俺も付き合うからなっ!」


ゴードンさんもそう言ってニカッと笑った。


 ご馳走も美味しくて、周りの人達も温かくてなんだか鼻の奥がツンとしてくる。


 苺タルトを口の中に入れると、苺と優しいカスタードの甘味にミントの爽やかさが溶け合ってすごく幸せな気分になった。


「皆さん、ありがとうございます!!


 ――私!!必ず認めてもらえるように頑張ります!!これから宜しくお願いします。」


そんな私の事をラグナが少し寂しそうに見ていたけれど、これはその後ずっと一緒にいる為の必要な時間なのだ。


◇◇


 送別会が終わると、オサダさんが私とラグナに内密に話がしたいと言ってきた。


 私達三人はスタッフルームの中の客室の中に入ると、オサダさんが意を決したように切り出した。


「――実は僕、貴方達を不老不死にする方法を知っているんです。」


「…え?」

その言葉に私達は固まる。


「…でも。今その方法を選択したとしても、恐らく平和的に解決する事は無理だと思います。


 生きていたとしても、周りから認められていないということは、逃げ続けるか、戦うことになる事には変わりない。


 ――だから、一年間。


 ルナリアさんが修行している間、不老不死になりたいかどうかじっくり考えてみて下さい。


 そして一年後、ルナリアさんが竜人族の方達に認めて頂いた時に。


 その時に、答えを頂くことは出来ますか?」


私は暫く考え込んだ後に頷く。


「わかりました。必ず一年以内に答えを出します。


 ――オサダさん、どうか宜しくお願いします。」


◇◇


 次の日の朝。


 ラグナは名残惜しそうな顔で何度も何度も振り返りながら竜人国に旅立って行った。


 見送りにはフィリップ様、クラリッサ様、そして新しく師になるというライルさんも来てくれた。


 ラグナの背中が見えなくなると、クラリッサ様がニカッと笑った。


「よーし!!ルナリア!準備はいいか!!」


 するとオサダさんが、何やらお弁当と飲み物のようなものをライルさんに渡してくれた。


「これ。三人のお弁当とクラリッサ様に頼まれていたものです。」


「オサダさんありがとうございますっ。

 ――大丈夫です。」


私が緊張しながら頷くと、クラリッサ様はライルさんに自分と私を近くの湖に連れて行くように指示した。


(…え?)


すると、なんとライルさんは宙に浮き上がったのだ。


 驚いていると、ライルさんがニヤリと笑った。


「――すげぇだろ?いずれ、君にも飛べるようになってもらうから。」


「よーし!!ライル!!連れてってくれ!」


クラリッサ様の言葉を合図にライルさんは私達を大きな湖に連れて行った。


「ルナリア。じゃあ着替えてまずはこの湖を泳げ。

 今日は初日だから5周ってとこかな。


 耐寒バリアを張ってやる。

 水中は効率よく筋肉がつくからな。」


そう言われて、私はひたすら湖を泳ぐ事になった。


(腕が重い…!!)


少しでもスピードが落ちるとクラリッサ様の怒号が飛んでくる。


「おせぇ!!もっと早く泳げ!!」

 

そして、疲れ切るとひたすらオサダさんのタンドリーチキンを食べさせられた。


 ――すると何故か不思議と疲れが取れる。


「よし、疲れは取れたな!!じゃあ行ってこい!!」


そしてまた泳ぐ。


 ――こうしてスパルタ修行が始まった。

 



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