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4.異世界での初戦闘

「ん・・・ここは・・・?」


 気を失って長い夢を見ていた朔が目を覚ますと壁面がゴツゴツとした洞穴の中だった。奥行きがそこまであるわけでもなく長年の雨風で削れたことによってできた空洞。倒れていたそばに焚火がされていたお陰で寒さを感じることは無かった。


「おや。目が覚めたようね」


 洞穴の入り口から現れたその姿をみてハッキリと思い出す。


「あなたは助けてくれた吸血鬼の・・・」

「私の名はルナ・ノウア・レルファウナ。好きに呼ぶといいわ。それに吸血鬼は君もだろう」


 自らも名前を告げていないことに気が付き慌てて自己紹介をする朔。

 ルナの言葉を聞いた朔が首に手を当てると二つの穴がぽっかり開いていた。不思議と痛みは感じ無かった。


「やっぱり、夢じゃなかったんだ・・・。本当に吸血鬼に・・・」

「吸血鬼とは言っても完全じゃないわ。半分は人間って言ってもいい。うまいこと調整したからね」


 ルナは手に持った木材を焚火にくべる。焚き火の勢いが増し洞穴の温度が上がる。


「調整ってことは意図的にそうしたってことですよね?」

「ええ、そういう事。完全に吸血鬼になると太陽の日に当たることが出来ない。燃えカスになっちゃうもの。君もそれは嫌だろう?」

「半分人間が残っていればその心配がなくなると」

「正解、賢いじゃない。君は吸血鬼でありながら日中も外を出歩けるんだからいい話だろう。それに私にもメリットがあるの。君の影に入っていればそこから指示を出して私も日の下を自由に歩き回れるわけ」


 そう言うと影の中に沈むように消えていった。朔が混乱していると背後に回っていたルナが姿を現した。


「本当に影な中に・・・。じゃあ俺にも出来るってことか」

「それは無理だね。とても高度な技術だもの」


 ルナは完全な吸血鬼、交じりっけない純度百パーセントの彼女は例にもれず日中外を出歩くことはできない。影の中に入ることは出来るがその影が途切れてしまうとそれ以上進むことが出来ない。ルナにとって朔は便利な交通手段、タクシーだ。


(つまり俺はルナの言いなりって訳か・・・。まぁ今生きているのもルナのお陰だしな)


 朔はもう一度首の傷跡に手を当てる。さっきまであったはずのその穴がまるで何事もなかったかのように塞がっていた。普通では考えられない傷が塞がるスピードを体感し改めて朔は吸血鬼になったことを実感した。


 朔はこれまでの経緯をルナに話した。仮にも自分の主である彼女には話すべきだと考えたからだ。


「当面の目標は冒険者になって力をつけるってことなんだけど・・・」

「君の自由にするといいよ。私は基本、放任主義だからそこらへんは安心していいわ。でもたまには昼間の散歩に連れていって頂戴」

「もちろん。どこへでも」


 ルナに対する朔なりの忠誠と感謝。


「それにしても転移者とは面白い。数百年ぶりの眷属が転移者だとは運がいいね私わ。こう何千年も生きていると興味を持てるものもなくなっていくのよね」


 数百年ぶりとか何千年ぶりとか聞いたことがない単語を聞いて朔は一瞬戸惑ったが相手が吸血鬼であることを思い出し納得する。朔の元の世界での話がルナの中にあるその知識欲、好奇心、探求心を湧き立てる。


「とりあえずこれからよろしく。ルナ」

「ふふ。主を呼び捨てとはね。まぁ好きに呼んでいいって言ったのは私だからいいけど」


 ルナ・ノウア・レルファウナの眷属になった朔は目的に向けて歩みを進める。


 * * *


 朝日が昇り再度森を抜けるべく出発をした。昨日の話であった通り日の光を浴びても何も感じることは無かった。


「ちょ、ちょい。ルナさんルナさん助けてくれませんか~~!」


 またもや魔物に追われ、情けないSOSを上げながら森の中を縦横無尽に駆け回る。昨晩の暗闇を経験した朔にとって光の入る明るい森を逃げ回るのは造作もないことだ。ただし、反撃する手段はいまだにない。


「君は魔物に追い回されるのが好きだね。今回はホーンラビットね」


 朔の影の中に入っているルナは何事もないかのように状況解説をする。一本の角をはやしたウサギの魔物が飛び跳ねるようにして朔との距離を少しずつ詰めていく。

 

「それに君は吸血鬼になったんだ。その程度の魔物素手でも行けるよ」

「そういわれても俺こう見えても真面目で優等生だったんだ。だから喧嘩とかもしたことなくて」


 誰もがそう見えているだろうに無駄な言い訳をする朔。痺れを切らしたホーンラビットが角の先端に魔力を集中させ朔めがけて雷を放つ。


「痛・・・った」


 直撃はしなかったが朔の右足を掠める。しびれるような痛みが朔を襲う。


「背を向けて逃げてるだけじゃ何も始まらない。目をそらさず敵の動きを見なさい」


 やれやれとため息をつくとルナは影の中から一振りの刀を差し出す。自らの影から湧き出すかのように地上に現れた刀の柄を握り引き抜く。鍛え抜かれたその刀は波紋が美しい波を打ち、刀身が輝きを放っていた。今の朔には部不相応、身の丈に合わない業物だ。


「貸してあげる。武器があれば戦えるでしょう」


(いつまでも逃げてばかりじゃ成長できないか)


 覚悟を決める朔。さっきまで背を向けていた魔物に正面から向き合う。

 刀を構えた朔のことを気にするそぶりもせず、素早く駆け抜け高く跳躍するホーンラビットはその尖った角を武器にし朔めがけ刺突する。

 普通の人間なら、吸血鬼化する以前の朔なら躱すことは不可能な速度。だが、今の朔にはその動きを完全に見切ることが出来ていた。

 刺突攻撃に合わせ身を捻り寸でのとこで回避する。

 朔を通り過ぎたホーンラビットの背後を取り、すかさず刀を振り下ろした。


「た、倒せた・・・」


 振り下ろした刀は見事に命中。致命的な一撃を食らったホーンラビットはその場で絶命した。


「やれば出来るじゃない。いい身のこなしだったわ」


 ルナの賛辞を受け、初めての魔物討伐、初勝利に浸った。

 

(これが吸血鬼の力なのか・・・)


 明らかな能力向上を実感した。敵の動きがスローモーションになったようだった。


「勝利に浸ってるところ悪いんだけど魔物が近寄ってきてる」


 魔物との連戦が続く。だが、数分前までの怯えて逃げ回っていた朔の姿はそこには無かった。

 一度得た成功体験が朔を成長させる。

 魔物と戦闘を繰り返しながら森の出口に向かい、着実に経験を積んでいく。


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