9話 ~次なる作戦~
窓から差し込む光に照らされた金色の髪が上下に揺れる。さっきから吼えてばかりなのだから息が上がって当然だ。それにしても美形だなと思う。お母さんのいい所を全て受け継いだ感じだ、羨ましい。
好きな人もいるんだろうな。
「何よ………」
「別に?」
綺麗な顔をした金髪の女子中学生に罵声を浴びせられる。僕の趣味ではないけれど、大金を払ってでもお願いしたい人はいるだろうな。
「目がキモいんだけど」
「そう?ごめん」
やはり女性は勘が鋭い。
「ごめんなんて思っても無いくせにまた謝ってきて………」
「ごめん」
「くっ!鯰、あんたって信じられないほどしつこい奴ね。本当はこんなことしたくなかったけど、しょうがない。全部あんたが悪いんだから」
そう言いながら部屋の中から取ってきたのは木刀。それを僕の鼻先に付きつけた。
「帰れ!」
悪口作戦の次は暴力で脅す作戦らしい。
「私は小学生の時剣道をやっていた。一番得意なのは突きだ、突きは痛いぞ!」
彼女は僕よりも背が高いから一応の迫力はある。しかしそこに殺気のようなものは無く、ただの脅しだという事は分かる。
「突きって喉を思いっきり突くやつだよね?」
「当たり前だ!それが嫌だったらすぐに帰れ」
「そんなことしたら逮捕だよ」
僕は両手をあげて無抵抗をアピールする。
「僕が女たらしの顔してるから嫌なのは分かるよ。だけどそれはやり過ぎだよ。犯罪だよ。すぐ下の階には警察官がいるんだよ?」
それは言うまでも無く彼女の母親の事だ。これで本当に攻撃してくるようならこの子は反抗期とかじゃなくて、ただのギャングだ。
「う、うるさい!」
「逮捕だよ?自分の娘に手錠をかけるなんて警察官にとってはこれだけ辛いことは無いだろうな。泣いちゃうかもしれないな」
「う、」
明らかに彼女に動揺の色が見えた。ここは一気に畳みかけるべきだ。
「もしそんなことになったら日向さんは職場でも近所でもあれこれ言われるんだろうな。虐められるんだろうな。そして結局は警察官を辞めることになるんだろうな。今までの努力が一瞬で全部水の泡だ、かわいそうだなぁ………」
「嫌なこと言うな!」
吼えているけど迫力はかなり無くなっている。まだまだ攻撃の手は緩めないぞ。
「君はたったひとりで刑務所に行くことになるんだろうな。いや、未成年だから少年院か」
「しつこい!」
「少年院にはヤバい奴が大勢いるんだろうな、そんな奴等と毎日一緒に牢屋で共同生活かぁ………。辛いだろうな、寂しいだろうな………」
「うるさい!マジでうるさい!」
なんとなくのイメージだけで揺さぶってみたら思ったよりも効果があったらしく、かなり嫌そうな顔をしている。
「………くそ、」
こっちを睨みつけながらも、しぶしぶといった感じで木刀を下げた。どうやらこの作戦では無理だと思ってくれたようだ。
「鯰は川に帰れ!」
ぽいっと木刀を部屋の中に放り投げてから、何事も無かったかのようにまた悪口作戦に戻った。
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