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44話

 

 とっくに壊れている喉をさらに壊すように松田が叫ぶ。


「だったら!だったら何だってんだよ!当たり前だろ、当たり前!俺は教師だ、俺は美佳の担任なんだよ。みんなと同じように部活をやるのが当たり前なんだよ、サボってる生徒の根性を俺が叩き直してやるんだよ!」


「それだよそれ、お前のその時代錯誤の傲慢さが諸悪の根源なんだ」


「なんだとぉ!?え!もう一度言ってみろ」


 怒りのあまり松田の口の端からはブクブクと泡が立っている。


「教師だなんて偉そうな顔をしているけどお前は生徒の気持ちが少しも分かってない。美佳が不登校になった原因は間違いなくお前だ!」


「ざ、ざけんじゃねーーーー!!世間知らずの餓鬼が何知ったような口きいてんだ、この野郎!俺が原因!?んなわけねーだろ、んなわけがぁああああああ!」


「松田!武器を捨てろ!」


 松田の叫びと警官の叫びが混ざる。


「お前はもうとっくに終わってるんだ」


「撃つぞ、これは警告じゃない!」


 拳銃という黒い暴力が自分を捉えている。けれどそれより何より「終わっている」その言葉が自分を貫いたのを感じた。


 終わっているのなら大人しく捕まってやる必要があるか?見苦しかろうと何だろうと関係ない。終わっているのならやりたいようにやるべきだ。真っ暗な闇の中にある真っ黒な道が見えた気がした。


 尚も余裕の表情をしている奴がいる。俺を罠に嵌めた奴が目の前にいる。俺を終わらせておいて、自分は美佳と仲良くやっていこうとしている奴がいる。


 許せない。


 半死半生の熊のように血走った目を見開いた松田が、ひときわ大きく息を吸った。


「ぎょえーーーーい!」


 バットを真上に構え、今までで一番大きな奇声をあげながら、今まさに鯰へと足を踏み出そうとしたその時、松田の頭部が強烈な力によって進行方向とは真逆に弾かれた。


 まるで拳銃で撃たれたかのようだが、銃声は鳴っていない。バク転失敗のように松田はゆっくりと後頭部から倒れていった。


 野次馬たちがシャッター音を連打した。




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