42話 ~計画通り~
分厚い雲に覆われた普段は平穏な住宅街は騒然としている。いつの間にか現れていた野次馬たちは目出し帽の男と、それに向けて銃を構える警察官に向けてスマホを映している。
「計画通りだ」
「………」
思考停止していた松田はその声で我に返った。
「罠を仕掛けさせた貰ったよ」
「ありえねぇ………」
「十分にあり得るんだよ。俺たちがそう仕向け、待ち構えた。そうじゃなかったら都合よく今ここに警察官がいるわけないだろ?」
「一体どうやって………」
「考えればわかるだろう。盗聴器だよ盗聴器、お前が美佳に渡したぬいぐるみの中に仕掛けた盗聴器を利用させてもらったんだ」
「盗聴器?何のことだ、俺はそんなもの知らねぇ」
「いくら何でもそれは無理があるだろう」
鯰は鼻で笑った。
「知らねぇ、知らねえったら知らねえ!」
「とぼけたかったらそうすればいいさ。殺人未遂に比べたら盗聴なんて些細な罪だ」
「殺人未遂!?ふざけんな!お前は怪我一つしてねぇじゃねぇか、一体それのどこが殺人未遂だってんだ!」
「教師のくせに不勉強だな、せっかくだから教えてやるよ。殺人未遂の成立要件というのは殺意をもって殺害行為に及んだことだ。お前の行為は立派に該当するんだよ」
「んだとぉお!?」
「そして、殺人未遂罪の刑罰は殺人罪と同じく死刑、無期懲役、5年以上の懲役のどれかだ。お前はどれが良い?僕としては一生刑務所に入っててほしいんだけどな」
松田が歯を噛みしめたまま呻いた。
「ふざけんな、ふざけんな………ふざけんな」
「武器を捨てろ!」
警察官の強い声が遠くに聞きこえる。
松田は金属バット強く握りしめたが全く手に馴染まなかった。子供の頃からずっと握って来たものとは違うから。
竹刀だったら。
今更ながらに思う。竹刀だったらこいつの脳天に一撃喰らわしてやることが出来るのに。どうして俺はこんなものを武器として選んでしまったんだ。
「お前の考えは読めてるんだ」
アスファルトの上を無音の足音が響く。
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