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39話

 


 鹿島家は広い庭を持つ一軒家で東京の中でも比較的高級住宅街と言われるような場所にある。


 その建物の二階へと続く階段を昇っていく二人の足音が響く。廊下を歩いて行くとその扉には「MIKA」というプレートが掛けられている。


 ガチャリ、と扉が開く音。そして二人の男女がその中に入って来た。


「ねえ、あの手紙本当に鯰が書いたやつじゃないのね?」


「だから違うって言ってんじゃん」


 鯰がかなりチャラい口調で言った。


「本当?」


「だって考えてもみろよ、俺たちもう付き合ってんだぞ?それなのにあんな手紙なんか書く必要ないじゃん」


「うーん………それなら誰の仕業なの?」


「どうだっていいんだよそんなの。ただのイタズラなんだから気にすんなよ」


「でも怖い」


 不安そうな声の美佳。


「俺が守ってやるよ」


「本当?」


「あんなことするやつ雑魚に決まってんだろ。俺は小学生の時から極真空手やってて滅茶苦茶強いんだからワンパンで片づけてやるよ」


「鯰って頼もしい!」


「おいおいいきなり抱き着いてくんなよ美佳」


「は?!」


「お前ってば本当に可愛いやつだな」


「あ、ありがとう………」


「それにしてもこの手紙書いたやつ絶対童貞だよ。今まで一度も彼女なんか出来たこと無いんだぜ、マジでめちゃくちゃキモくねぇか?」


「そうね」


「取り柄は妄想力だけのマジゴミだよ。男なら正面から告ってオッケー貰えばいいだろ、マジで情けないやつだよな。何で生まれてきたんだよ」


「戦ったら絶対勝てるの?」


「余裕に決まってんじゃん、極真だよ?もしそいつが現れたらボコボコにぶん殴って美佳に見せてやるよ」


「鯰最高!」


「任せとけって………それよりさ、今度の日曜日遊びに来ていいか?」


「え?でも家庭教師のアルバイトはお母さんがいる時にっていう約束でしょ?」


「わかってるよ、けど家庭教師としてじゃなくて彼氏として来んの!」


「え!?」


「だって俺たちもう付き合ってんだからさ、それくらいいいだろ?」


「なんか目がイヤらしい」


「いやいや、全然そんなこと無いって、マジで!」


「多分日曜日はお母さん居ないと思うけど」


「だったら決まりな、な!」


「う、うん………」


「よっしゃー!」


「けど午前中はやめてね。いろいろ準備したいこととかあるから」


「だったら3時とかどう?また豆大福買って持って来るから、一緒におやつ食べようぜ」


「私あの豆大福大好き!」


「マジで楽しみだな-美佳とふたりっきりだ」


「ねえ、なんか恥ずかしい………」


 少しの間静かな時間が流れる。


「あ、ごめん!」


「どうしたの?」


「俺今日さ、早めに帰んないと駄目なんだよね」


「そうなの?」


「悪りぃな………」


「まさか女じゃないわよね?」


「違うって!」


「まあしょうがないけど………」


「ごめん。美佳は優しいよな、そういうとこ好きだぜ」


 またしばらく静かな時間が流れる。


「あれ?」


「どうしたの?」


「あれって「ミニカワ」のぬいぐるみじゃん!いま流行ってるやつだよな、美佳ってミニカワすきだったの?」


「貰ったの」


「興味ないんだったら俺にくれない?妹が好きで集めてるんだよね」


「別にいいけど………」


「それじゃあ貰うな!」


「うん。日曜日3時ね」


「ああ!楽しみだなぁ」



 ぬいぐるみを持った鯰が部屋を出て、階段を下りていく。


 部屋の中には緊張から解放され、溜息をつく美佳。リビングへとやってきた鯰は無言でぬいぐるみを手渡し、受け取った日向は頷いた。


 三人の考えた罠とは盗聴器の前で芝居を打つこと。


 一つ目、偽手紙作戦が失敗したと分からせる。二つ目、鯰と美佳が付き合ったと思わせる。三つ目、親が居ない状態で二人きりで会う約束をする。


 これらを犯人に対してあえて教えることで行動を誘発する。日時もこちらがコントロールする。


 犯人は必ず動く。動かなければ大切なものをみすみす逃す。


 金色の髪の乙女という餌は極上。緋色の研究で指輪を求めた犯人のように、危険を覚悟でやって来る。


 決戦は日曜三時。


 美佳、日向、鯰はそれぞれ緊張と興奮と不安が入り混じる時間を過ごすことになる。


 それはきっと犯人も同じなのだ。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


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