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31話

 


 進んでいく掛け時計の秒針を見ながら考える。犯人はどうして僕の名前を知っているのか。


 こんな手紙を出してくる人間が自分を知っている思うとぞっとする。いまになって美佳の気持ちが少しだけ理解できた気がする。


「犯人は鯰の知り合いじゃないの?」


「僕の?」


「名前を知ってるっていうことを考えればそうでしょ。思い出して見なさいよ、家庭教師のアルバイトをすることを誰かに喋ったんじゃないの?」


「友達には喋ったね」


「そうでしょ?っていうことはもしかしたらその友達が、どんな家で家庭教師をするのか気になってこっそりつけて来て私のことを知ったんじゃない?」


「それで美佳に一目ぼれしてあの手紙を?」


「ただの思い付きだけど………」


 かなり自信が無さそうに言った。


「僕の友達だとしたら名前を間違うのはおかしいよ。犯人はどこかで僕の名前を聞いたことがある、それくらいの関係だよ」


「どんな関係よそれ」


「皆目見当もつかない!」


「なんでそんなに自信満々に言うのよ」


「そっちこそ心当たりはないの?犯人は僕の事は名前も知らないけど、美佳のことに異常に詳しいんだから美佳の身近な人物でしょ」


「えー、だからそんな変な人知らないって。それに名前の話で言えば、私は鯰の事なんか誰にも話してないよ」


「うーん………」


 確かに美佳はいま不登校だから、学校の友達に僕のことを喋るという事は考えにくい。それでも僕としては美佳の身近にいる人物だと思うんだけど………。


「学校以外の場所はどう?」


 日向さんが聞いてきた。


「学校以外ですか?」


「鯰君が言う通り、クラスメイトや先生は名前を間違えないと思うの。それなら学校の外で名前を知られるような出来事があったんじゃない?」


「えーと………」


 外で名前を言うのはどういう時だろう?そんな機会は滅多にないような気がする。


「難しいですね」


「お店とかはどう?」


「お店で名前を言う時なんか………」


「私は最近ポイントカードを作ったんだけど、その時には名前を書いたわよ」


「なるほど」


 そう言われてみれば確かにそういう時はある。


 そう言う考え方で言えば、ファミレスで順番待ちをする時に紙に名前を書いたぞ。ってことは美容院でもそうだ。いや待てよ、書いたのは苗字だけだった気がする。


 そうだ!




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