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28話 ~起死回生~

 

 僕の推理を披露するべく美佳と日向さんの表情を見る。


「僕は思う犯人は………剣道の関係者です」


「それはどういうことですか?」


 裁判長日向が聞いて来る。


「手紙には剣道着を着た美佳さんの事をやたらと褒めています。そうですね?」


「はい、確かにここに書かれてします。一番気持ちの悪い文章です」


 手紙を指さしながら言った。


「ここで言えるのは、僕は美佳さんの剣道着姿を見たことが無いという事です」


「う………」


「それは確かにそうですね」


 美佳が言葉に詰まり、日向さんが頷く。


「美佳さんが剣道をやっていたのは小学生までで、今は一切していないと聞きました。つまり犯人は小学校の時の剣道の関係者。同じ道場の先輩後輩同級生あるいは指導者の可能性があります」


「ふっふっふっ………」


 美佳が悪い顔でこっちを見た。


「なんですか?」


「その推理は完全に間違っています!」


「どうしてですか?」


「なぜなら私は小学校を卒業するのと同時にここに引っ越してきたからです。ですので、近所に同じ道場に通っていた人はいません」


 僕は動揺した。


 引越をしたから当時の関係者がいない!?完璧な推理だと思っていたのに急激に怪しく思えて来た。けれどまだ諦めるには早すぎる。


「犯人が近所の人であるとは限りませんよ?」


「異議あり!ご近所さんが怪しいと言ったのはあなたでは無いんですか?」


「ぐ………」


 してやったりと笑う美佳に対して、僕は何も言い返せなかった。


「裁判長に質問です。大福をお裾分けした家族の中に、私と同じ道場にいた人はいますか?」


「いないと思います」


「ほら見なさい!」


 美佳は胸を張る。


「これは犯人が自分で罪を認めたようなものです」


 どどんと人差し指を突き刺した。


「豆大福の情報を知っている人は剣道の情報を知らない。そして逆もまた然りです。この両方の情報を知っているのは、たったひとりだけ。つまりーーーお前が犯人だ!」


 何て自信満々な態度だ。


「鯰君、何か反論はありますか?」


「えっと………」


 豆大福、問題はとにかく豆大福だ。犯人はどうして僕らが豆大福を食べたことを知っているんだろうか。それが分からない。


「残念です」


 日向さんがため息をついた。


「私が見込んだ人がまさか娘のストーカーになってしまうなんて、これほど残念なことはありません」


 日本刀を手に取り、すぅっと鞘から引き抜く。


 偽物であることを祈っていたが、そこにある圧倒的威圧感。水面に映る月のような色をした美しい刃から冷たさを感じる。


「け、剣道関係者だという僕の推理は間違っていたかもしれません。だけどもうひとつ決定的におかしい所があるんです」


「知っていますか?日本には警察官は自分の家族に危害を加えられた場合、自分の手で犯人を斬首してもよいという法律があるのですよ?」


「落ち着いてください、そんな法律ありません!」


 我が子を思うあまり今日の日向さんは冷静さを欠いているらしい。


「安心して………痛いと思う暇もないから」


 微笑みを浮かべる彼女の目がガラス玉のようで、本当に人間を殺そうとしている人間の目に見えた。


 抜き身が放つ光がダイニングテーブルを、天井を、日向さんの顔を照らして言える。


「名前が違います!」


 僕はテーブルの上の手紙の一番最後を指さした。




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