23話
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
警察から連絡が来てすぐに健斗と瑠璃のお母さんがやってきて、子供たちはいっせいに泣きだしてお母さんに抱き着き、僕達はお母さんからは何度も感謝された。
別れるときは美佳も寂しそうな顔をしていたのが印象的だった。
「Thank you for your help.」
スマホを盗まれたスコッティ一家に対しては英語の出来る警察官の人が電話対応してくれて、盗難の手続きと大使館への連絡をするようにとのアドバイスをくれて、こちらからも何度も感謝された。
迷い犬に関しては、この交番では保護できないという事で近くの警察署に連れて行って、飼い主からの連絡を待つことになった。
犬(仮名マイケル)からは感謝の言葉を貰うことは出来なかったが、連れていかれるときにすごく寂しそうな顔をしながらクンクン言っていたのが可哀そうで胸が痛んだ。飼い主にはできるだけ早く迎えに来てほしいと思っている。
「それにしてもお手柄だよ、鯰君と美佳さん。まさか一度に三件も困っている人を助けるなんてすごいことだよ」
数寄屋橋交番へ戻って来た福本裕太がほっとした表情で言う。
「偶然ってすごいですよね」
「そうだね」
「福本さんは警察官じゃなかったんですね」
美佳が聞く。
「うん。僕は警察学校の生徒でいまは実務実習の最中なんだ。君たちのお陰ですごく勉強になったよ、ありがとうね」
「いえいえ僕らこそ助けてもらえてありがたいです」
福本と鯰がお互いに頭を下げた。
「福本さんって、もしかしてキャリアですか?」
「え!なんでわかったの」
美佳の質問に福本が驚きの声をあげる。
「警察官にしては線が細い感じだし、仕事にもあまり慣れていない感じだったので、もしかしてと思って………」
「美佳さんすごいね、かなりの観察眼だよ」
「ありがとうございます」
美佳が鯰の顔をニヤリと見つめながら、私の推理はどうだとばかりに胸を張りっている。
「キャリアって確かすごい難しい試験を合格したエリートなんですよね?どうして交番にいるんですか?」
「鯰は何にも知らないのね。キャリアでも最初の方は勉強のために交番に配置されるのよ」
「そうなんだ、知らなかった………」
「ふん!」
美佳は満足げにさらに胸を張って、張りすぎて海老くらい反っている。
それから少し話をしてみると福本は東大法学部の出身で、美佳の母親である日向の後輩であることが分かった。
「美佳さんは鹿島警視正の娘さんなんだね。すごいなぁ………っていう事は美佳さんも将来は警察官に?」
「私はなりません」
美佳ははっきりと言い切った。
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