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70 トーマス叔父さんの事情説明

「まあ、とりあえず座ってよトーマス叔父さん。何か事情があるんでしょ?」


「ありがとうございます。……そうですね、どこから話したものか」


 執務室の中には応接を兼ねたテーブルも用意されていて、そちらにトーマス叔父さんともども座り、ヨーゼフにはお茶の準備をお願いする。

 フィッシャー商会のお嬢様が待ってる? アポなしで突撃してきた人間は多少待たされても仕方がないから放っておくに限る。

 ま、そちらの方にもメイドがお茶を出しているはずだし、トーマス叔父さんから話を聞く位の時間は問題ないだろう。


「フィッシャー商会のお嬢さんが来てるってのは聞いてるけど」


「そう……まずはそこからですね。商会同士の会合でフィッシャー商会から物言いがあったんですよ」


「商業ギルド所属の商会が集まるアレ?」


「そうです」


 この街に所属する商会は扱う品目や客層がかぶらないように定期的に会合を開いているのだが、そこで突撃をかましてきたのか。

 トーマス叔父さんとユリア叔母さんのアンドレ商会はバルディ領からの輸入品の取り扱いと、ゲルハルディ家に品物を卸すのをメインとしている。

 輸入品を他商会に卸すためと、ウチに卸す商品の確保のためにも他商会との会合は重要ってわけだな。


「というか、フィッシャー商会といざこざが起こる理由がわからないんだけど。あそこは王都への輸送がメインで領内に関しては割とノータッチでしょ」


 商会にもそれぞれ役割があり、平民へ品物を販売する商会、商会に品物を卸す商会などあるが、その中でもフィッシャー商会は王都との繋がりを持つ商会だ。

 ゲルハルディ領周辺の品物を王都で販売し、王都で仕入れた商品をギルドを通じてゲルハルディ領内の商会へと卸すのを生業にしている。


「……ウイスキーボンボンですよ」


「は? ウイスキーボンボン?」


「そうです。王宮からウイスキーボンボンの問い合わせがウチにきたって話はマックス坊ちゃんにはしたでしょう?」


「アンナを連れて行った時の話だよな……ああ、王宮の方には父上の方から早馬を出してゲルハルディ家を通してもらうように話はしてあるよ」


「ありがとうございます。……ですが、フィッシャー商会は王宮に卸すのならフィッシャー商会が担当するのが筋だと言い出したんですよ」


「ああ、そういう……ん、でもあれは販売ではなくゲルハルディ土産とする予定だし、販売するにしても一部高位貴族限定になるよ?」


「王宮への伝手というのはそれほど魅力的なのでしょう。こちらとしても製作を請け負っている以上、タダで誰かに渡すわけにもいきませんし、マックス坊ちゃんに聞かなければと言ったのですが……」


「したら、ウチまで来たと」


「はい。責任者と直接話すと言ってきかないので……」


 はあ、これはトーマス叔父さんも相当苦労したんだろうな。

 ゲルハルディ家と直通の回線を持つ商会はアンドレ商会だけだし、ウチに繋ぎを作ろうと思ったらアンドレ商会に突撃するしかない。

 王宮との繋ぎが欲しいというのもわからなくはないけど、王宮で卸す先は陛下か宰相閣下くらいだし、いくらフィッシャー商会でも持て余すと思うけどな。


「フィッシャー商会のお嬢さんって聞いてるけど、長女? それとも次女?」


 設定ではアイリーン・フィッシャーは三女。長女は王都貴族の三男と結婚して商会を継ぎ、次女はカレンベルクの貴族と結婚していたはずだ。

 領主教育の一環でフィッシャー商会についても調べてあるが、長女は第一王子殿下と同い年で現在は王都の学園に通っていて、次女は現在14歳でフィッシャー商会を手伝ってるはずだ。


「いいえ、どちらも違います。アンドレ商会を訪ねてきたのは三女です」


「……はっ!? 三女って、アイリーン・フィッシャーか!? 9歳だろ?」


「マックス坊ちゃん。マックス坊ちゃんと同じくらいの年なのですからおかしくはないでしょう?」


「いやいや、9歳の子供が商会の運営に口出すなんておかしいだろ!?」


「ご自覚がおありのようで助かりますな」


 トーマス叔父さんが俺に対して皮肉を言っているが、まあそれはいいや。

 9歳が商会に口を出す? 前の世界なら小学校低学年だぞ?

 ……うーん、確かにゲーム内でもアイリーンは購入アイテムの値引きと売却時の金額アップの効果を持つサブヒロインだったから、おかしくはないのか?

 現実的に考えればそれだけの販路とコネを持っているということになるし、それだけの才能がなければできないことだとは思うが……うーん、実際に会ってみないとわからないか。

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