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35 再びの旅立ち

「では、母上、レナ、またとなりますが行ってまいります」


「ええ、今回は騒動を起こさないように」


「お待ちしておりますね、マックス様」


 母上に報告をした2日後には父上から即刻、王都に来るようにとの早馬が来て、翌日には旅立つことになった。

 こっちとしても騒動を起こすつもりなどさらさらないが、俺が旅立つと婚約が取りやめになったり、ダンジョンを攻略したりと騒動が起きているので何も言い返せない。

 レナは健気に俺の旅立ちを見送ってくれているので、レナには笑顔を返しておこう。


「……はあ……お前ら、行くぞ」


「はい、マックス様」


 騎士団長は父上に付き添って王都にいるし、流石に旅から帰ってきたばかりのクルトたちを連れまわすこともできないので、俺の護衛は騎士団の副団長が務める。

 もちろん、副団長だけでなく小隊も選りすぐりのメンバーがそろっていて、王都の騎士団相手でもそれなりの戦いができるメンツとなっている。

 ま、別に喧嘩を売るつもりはないし、ここまでの戦力は必要ないと思うがな。


「あ~、売りに出される子牛の気分~」


 小隊に見守られた馬車に乗せられ、旅をしていると、まさにこの気分になるんだよな。

 前世の記憶を取り戻した時は父上とレナが居たし、クルトたちとは馬車ではなく馬での移動だったからあまり思わなかったが、1人で馬車に乗せられているとまるで民謡の世界なんだよな。


「マックス様、農村でも子牛を売りに出すことなどありませんよ」


「そういう話じゃない。これからのことを思うと憂鬱って話だ」


「ご自身が招いたことですので」


「わかっちゃいても面倒だと思うことはあるってことだよ」


「ま、わからなくもないですね」


「だろ? あ~あ、ダンジョン攻略程度で王都に呼びつけることはね~よな?」


「100年ぶりの快挙ですよ? それは呼びますよ」


「……7歳のガキが攻略できる程度のことに大げさなんだよ」


「ま、辺境の領の者が本気を出していたらもっとダンジョンは攻略されていたでしょうね」


 この国の昔話になるが、100年ほど前にこの国を囲む周辺国が同時に侵攻してきた時代があった。

 それに対抗するために各辺境伯領は緊張を強いられ、ダンジョン攻略どころではなくなった。

 辺境伯領の代わりに、中央貴族がダンジョンの攻略を担うことになったが、うまくは行かず、冒険者組合の誘致や傭兵団設立の緩和など行ったという経緯がある。

 ま、その辺もうまくいかずダンジョン攻略は侵攻以来、全くと言ってこの国に無縁のものとなり、すでに攻略済みだったダンジョンだけがこの国の資源となっていたんだな。


「その辺も国王陛下に伝えておくかな」


「辺境の者ならということですか?」


「というか、中央貴族の横領に関わる問題だろ。中央貴族にはダンジョン攻略用として補助金が出ているのに、成果が出ていない」


「……即座に横領とつなげることは出来ませんが怪しいのは確かですね」


「調査するのは俺たちの仕事ではないが、つつく位はしといた方が良いだろ。俺たちの納めた税が不当に使われている可能性があるってことだからな」


「つつき方は慎重にしてくださいよ」


「わかってるって。父上もいるしゲルハルディ領が不利になる様にはしないよ」


 副団長はそこまで俺と関りがあるわけではないから、俺に対する信用度が低いが、それが今回は助かるな。

 面倒とは思っているが、ダンジョン攻略が快挙なのは確かなことで、それに対する慢心がないとは言えないからな。

 とにかく、王都についたら父上との打ち合わせ、陛下との謁見では勇者制度の撤廃を申し出るか。


 この国ではダンジョン攻略者を勇者に任命し、準貴族の地位を授ける制度があり、主人公もそれを利用するからな。

 主人公がダンジョンを攻略しても勇者として任命されなければ、行動を縛ることが可能だろう。

 勇者となれば他領への通行許可、他領の未発見ダンジョンの攻略権、軍事行動の追認が行われるからな。

 主人公が勇者でなければ、ゲームのように行動するのはまず不可能となる……というか、ゲーム通りに行動すれば貴族への反逆、あるいは国家反逆罪になるだろうな。


「マックス様、王都まではまだまだ、かかります。少しでもお身体をお休めください」


「わかっているよ。父上だけならともかく、国王陛下に謁見するのに寝不足、疲れ気味の身体で、というわけにはいかないからな。旅の最中の雑事は任せるぞ」


「わかっております。道中の宿も先触れを出しておりますので、馬車内でもお休みください」


「助かる」


 ま、信頼度は低くても優秀なのは優秀だからな。任せられるところは、どんどん任せていくか。

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