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31 疾風の指輪の検証

 この旅の目的自体は達成したから伯爵邸に帰ってもいいんだけど、まだやるべきことがあるんだよな。

 それは、疾風の指輪の能力の確認。

 ゲームでは1ターンに2回行動できるという能力のアクセサリーだったんだけど、現実世界には1ターンなんて存在しない。

 だから、どうなっているのか確認しなきゃいけないんだけど……うーん、クルトたちの前で試していいものだろうか?


「マックス様、何かお悩みですか?」


「ああ、クルト。……お前たちは俺が不思議なことをしても驚かないか?」


「マックス様が不思議なことをするのは日常ですが?」


「……日常って」


 いやいや、そこまでじゃないだろ……ないよな?

 確かに貴族の嫡男が調理室に入っていって料理をしたり、騎士団長や父親じゃなくてただの団員に剣を習っていたり、普通とは違う自覚はある。

 でも、どれも必要なことだったし、やるべきことだった。


「で、マックス様は何をなさるのですか?」


「ああ、攻略報酬の確認だな」


「攻略報酬……アーティファクトですか?」


「アクセサリー型のものだった。この手のものは誰でも装備可能なはずだから能力の確認をな」


 攻略報酬は回復アイテムだったり、装備品だったりといろいろな種類があるが、いくつかの装備品には制限がかかっている。

 この辺はゲーム的なシステムの話になるが、昔の手記などから確認した限りでは過去にも女性にしか着られないドレス、男性の中でも一部にしか持てない剣などがあったらしい。

 今回ゲットした疾風の指輪はゲーム内でも装備制限なし、主人公パーティーの誰でも装備可能で、DLCで一部の敵をプレイアブル化する準備のために敵でも装備可能になっている。

 この装備制限が俺が疾風の指輪とマナの指輪以外の攻略報酬に興味がない理由で、ゲルハルディ領内のダンジョンの攻略報酬は勇者の剣だの、紺碧のドレスだの主人公パーティーの誰かにしか装備できないものばかりだからだ。


「危険なのですか?」


「使ってないからな。危険かもしれないし、危険じゃないかもしれない。どんなことが起こるかわからないからな」


「……伯爵邸に戻ってからの方が良いのでは? クラウス様とヨアヒム様がいらっしゃるときに試した方が」


「ああ、それは俺も考えたんだ。父上や爺様がいたほうが何かあった時の対処は楽だろうなって。……ただ、そうすると母上とレナも傍にいるわけだろ?」


「……騎士団の訓練場を使うにしても伯爵邸は目と鼻の先ですからね」


「そうなんだよなぁ。父上や爺様は当然として、騎士団の連中も何が起こっても自衛はできるだろうけど、伯爵邸にいる母上やレナ、使用人たちは違うだろ?」


「……そう、ですね。確かにこちらで試した方が良いかもしれません」


「ま、あとはここなら近隣の町や村からも遠いから何か起きても誰にもバレんが、伯爵邸でやったら街の住人にバレそうだしな」


「確かに、アーティファクトの情報は無暗に公開するものではありませんね。冒険者組合にも秘匿すると言ってしまっていますし」


「ってわけで、ここで試そうと思ったんだが、何も相談せずにやって問題が起きたら怒られそうだし、事前に聞いたってわけだ」


「はい、わかりました。……では、小隊の者にも伝えてきますので、しばしお待ちを」


 言うなり、クルトは冒険者組合の人を見送っていた小隊のところまで走っていった。

 小隊のメンバーに疾風の指輪の効果を見せるのは賭けだが、ゲームとは全く違う効果が出て暴走したら危ないからな。

 伯爵邸に戻る前に確認は必須だろう。


「若様~、何かやるんですか~?」


「マックス様に対してぞんざいすぎるぞ。……マックス様、こちらの準備は出来ております」


「オッケー、じゃちゃちゃっと試すかね。あと、クルト、伯爵邸ならいざ知らず旅の間はもっと軽くていいんだって」


「そういうわけにはまいりませんので」


「ま、それもクルトの味かな」


 過去の手記によるとアーティファクトの特殊能力の使用条件は大体が装備し、念じること。

 中には装備した瞬間から発動し続けるものもあるが、疾風の指輪は前者だろう。

 1ターン2回行動……普通に考えたら装備者の素早さを上げるもので、常時素早さが上がり続けていたら危険すぎるからな。


「……うーん、何か変わったか?」


「……発動……したのですか?」


 装備して、発動したはずなのだが、特に変わりがない。

 うーん、1ターン2回行動っていうのは当然だけど、戦闘中だけのことだし、戦闘中以外には効果がない……とか?


「クルト、構えてくれ」


「……はっ!?」


「アーティファクトの中には装備者が危機的状況にならないと効果が発動しないものもあると聞く。これがそうかもしれないからな。切りかかってくる必要はない、構えてくれ」


「…………わかりました」


 流石に自分の主人の息子相手に訓練でもないのに剣を向けるのは嫌なのか、しぶしぶと言った感じでクルトが俺と相対する。

 ……ん? なんか、構えた瞬間からクルトの動きが鈍くなったような……なんだ? いやいやだからか?


「……えっ!?」


 試しに構えているクルトの背後を取るように動いてみれば、クルトも他の小隊員も俺の動きを目で追うことができていない。

 いきなり眼前から消え、背後に現れた俺に驚いているようだ。


「ああ、なんとなくわかった」


「マックス様?」

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