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128 噂の真相

 嫌な予感はしていたが、やはり噂の真偽を確かめなければならないので、マルクスと共に学園内を散策していたが、本当にやめとけばよかった。

 とある空き教室の近くに来た段階で、女性の嬌声が響いてきた。


「マックス……これって」


「噂の奴だろうな……」


 前世の学校と違って貴族学園には部活などは存在しないので、補習や自主練を行う学生以外は速やかに領に帰宅することになっている。

 補習や自主練にしても特別教室や訓練場を使用するので、こんな校舎の片隅にある空き教室を使ってるってのは普通じゃない。


「なあ、聞き覚えのある声が聞こえるんだが……」


「マルクスは聞かなかったことにしていいぞ」


 4人の女性と1人の男性の声が聞こえてくる。

 デバッグ作業で脳内に焼き付くまでゲームをプレイしていた俺にはわかるが、4人の女性はゲームのヒロインだ。

 ゲーム内には主人公のボイスがついていなかったので男の方は確証がないが、アルフレートと叫ぶ声も聞こえてくるので主人公で確定だろう。


 ゲームの主人公の名前はアルフレート、ヒロインはミネッティ伯爵令嬢、マテス侯爵令嬢、ニューエン子爵令嬢……そして第三王女だ。

 主人公は孤児だし、マテス侯爵令嬢、ミネッティ伯爵令嬢、ニューエン子爵令嬢も辺境伯である俺からしたら格下だし、伯爵令息であるマルクスからしても同格以下だ。

 ただ、第三王女……こいつだけが問題で、マルクスは当然だが、俺にしたって第三王女のスキャンダルを王家の断りなしに広めたりすれば、どうなるかわからん。


「マックス……どうするんだ?」


「とりあえずは陛下に奏上だな」


 陛下も学園内には手の者を入れているだろうが、第三王女がここまでフリーダムに行動しているということは陛下はまだ知らないんだろうなぁ。

 流石に知っていたら、王宮内で謹慎させるか、下手したら王族から排除するレベルだ。


「奏上って……辺境伯とはいえ、流石に陛下に直ぐに会えるわけじゃないだろ?」


「昔の功績で緊急時面会権をもらっているから、会うこと自体は可能だ」


「緊急時面会権って……そんな簡単に使っていいものじゃないだろ」


 緊急時面会権は字のごとく、陛下に対して緊急と判断した場合に即時に面会することが可能な権利で、主に領地間抗争などで使用されることが多い。

 自身で解決できない場合に騎士団の派兵をお願いするって感じで使われる……ま、外敵の場合は辺境伯が自分の判断で撃滅するからそっちでは使われないんだよな。


「まあ、領地のために使うことが多いが、今回のことは即座に動かないと国の不利益につながるからな」


「それはそうだが、そのために自身の権利を行使するのか?」


「あんまり知られてないが、緊急時面会権は妥当性が認められれば消化されないことになっているから、別に俺の権利は消えないぞ?」


「そうなのか?」


 後々の調査で緊急時面会権を使用した側に問題があったり、双方に問題があった場合には権利は消化されるのだが、今回のように国益にかなう場合や一方的な被害者の場合は消化されない。

 ま、緊急時面会権は褒賞で与えられることが多いし、国益にかなうことに使っても消化されるのでは使われなくなってしまうからな。


「ってことで、俺は教師に話を通してから王宮に向かうとするよ」


「このことを話すのか?」


「いや、教師といえども貴族だからな。流石に王族のスキャンダルを伝えるわけにはいかないし、適当に誤魔化すさ」


 貴族学園の教師は貴族の次男以降の、当主になることができず文官や騎士となった人が務めている。

 特段の活躍はないが人に教えるのが上手い人、あるいは地方でくすぶっている有能な人材が宛がわれることで質自体は高い。

 だが派閥や友好関係は度外視されることが多いので、家自体は国王派でも本人は王家派、あるいは貴族派ということもあり簡単にこのことを教える気にはならないんだな。


「というわけで、エルンストやキンスキー侯爵令息にも帰りは遅くなると伝えておいてくれ」


「エルンストはいいが……キンスキーは帰ってきてるかわからないぞ」


「あいつもフラフラしているからな。ま、いたらでいいさ」


 キンスキー侯爵令息は自由人というか、寮の部屋になかなか帰ってこないんだよなぁ。

 まあ、キンスキー侯爵は王宮で仕事してるし、屋敷も王都にあるはずだからそっちに帰ってるのかなぁとも思うんだが、本当に何をやってるのか。


「ま、寮監たちにも伝えておくから、そっちは心配するな」


 マルクスの頼もしい言葉を背に、俺はため息をつきつつ教員室へと歩を進める。

 まったく、厄介なことになったもんだ。

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