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127 噂の火消し

「で、結局、例の彼はどうなったのかしら?」


「誰のことだ?」


 今日は学園が休日ということで、寮の談話室を利用してレナ、クリスタ、ローズマリー嬢とお茶会兼報告会をしている。

 で、話しかけてきたのはローズマリー嬢だが、彼って誰だ?


「レナに付きまとって、マックスに喧嘩を売ってきた彼よ。対処したんでしょ?」


「ああ、シャウナ男爵のところのやつか。男爵からは貴族籍からは外して、農家に預けたと聞いてるぞ」


「生きてるの?」


「辺境伯といえども喧嘩を売ってきた程度で、生き死にをどうにかはできないよ。その辺の裁量は責任者である男爵の領分だからな」


 俺としては意味不明な言い分で喧嘩を売ってきたのだから殺してもよかったが、流石にヴァイセンベルク王国の法律では他領の人間を簡単に死刑にはできない。

 男爵には決闘の結果だから取引を停止する旨、停止してほしくなかったら息子を俺たちに二度と会わせるなと伝えておいた。

 結果として、貴族籍のはく奪と、領内の知り合いの家に預けて領外に出さないこととなったらしい。


「生きているのなら逆恨みして襲ってきたりしないの?」


「その辺は男爵が責任をもって対処してるだろ。ゲルハルディ家との取引がなくなったら困るのは男爵なんだし」


 辺境の中でもゲルハルディ家が取り扱っているのは海外の商品で、替えが効かない。

 ゲルハルディ家との取引がなくなれば、商人や領民から突き上げを食らう領主は多く、シャウナ男爵もその1人だったというわけだな。


「そもそも、男爵令息だったんでしょう? 貴族籍から外して大丈夫なの?」


「やつは次男で、長男も三男もいるから大丈夫だとよ」


「私にはあんまり実害なかったんですけど」


「レナはそういうけど、けじめは大事だからな。ゲルハルディ家に喧嘩を売ればこうなるってのは、周囲に知らしめておかなきゃいけないよ」


 結局、やつの一件からゲルハルディ家が単なる伯爵家ではないと気づいた連中も増えたらしいけど、陛下から聞いた話では特に問題はないらしい。

 というか、気づいたのは一部で、ヤバいやつらは、こんな事件があっても俺が辺境伯になっていると知らないらしい。


「まあ、クリスタの負担もあったからな。しばらくは警戒を続けてもらうけど、直に元の生活に戻れるだろう」


「確かに。クリスタには領主・騎士科と家政科の間を行ったり来たりさせてしまいましたからね」


「訓練よりはずっと楽ですよ。それに、レナが傷ついて困るのは私もですからね」


 クリスタがこう言うのにも理由がある。

 レナはゲルハルディ夫人としての教育を受けていて、俺の正妻になることが決まっているが、もしレナに何かあった場合にはその立場は第二夫人のアイリーンではなく、第三夫人のクリスタになる。

 当然だが、辺境伯夫人の教育はかなり厳しいものになるので、クリスタとしては避けたいところなのだろう。

 ちなみに、アイリーンが正妻になれないのは貴族ではないので、辺境伯夫人になるのが難しいということだな。


「ま、エルンストやマルクスにも手伝ってもらって噂の火消しもしてるから、ローズマリー嬢もしばらくはレナやクリスタと一緒に行動してくれ」


「2人と行動するのは楽しいからそれは問題ないけれど、そんな簡単に噂の火消しなんてできるの?」


「学園内の噂なんて移りゆくものだからな。もっと問題になる噂があれば上書きできるらしいぞ」


 王都に住んでいるエルンストに相談した結果、もっとヤバい噂で上書きするのが手っ取り早いということで、俺とマルクスが噂を集めている最中だ。

 どうも学園内で情事にふけっている男女がいるという話が出ているようで、それが本当ならその話で上書きするつもりなのだが……なんか嫌な予感がするんだよな。

 ヴァイセンベルク王国の貴族は男女ともに身ぎれいであることを重視されるので、学園内で情事にふけることはまずない。


 にもかかわらず、そんなうわさが出るということは、ヴァイセンベルク王国の常識を無視しても問題ないと思っている奴が関わっているということだ。

 つまり……前世の記憶持ち、ミネッティ伯爵令嬢が関わっている可能性大ということだな。

 ちなみに、この世界の元となっているゲームは成人向け美少女ゲームではあるものの、そういうシーンはクリア後に解放されるので、学園内のシーンは存在しない。


 情事にふけっているのがミネッティ伯爵令嬢と主人公だけなら問題ないが、他のヒロインたちが関わっていた場合には手を引いた方が良いかもな。

 なんといってもヒロインの中には第三王女……陛下の娘がいるわけで、辺境伯と言えども王族の噂に関わるのは危険すぎるというものだ。

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