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122 休日のお茶会

「学園が始まりましたが、どうですか?」


 今日は休日ということで、レナとクリスタ、それにローズマリー嬢と寮の談話室でお茶会を行っている。

 基本的に男女それぞれの寮は異性の入室は禁止されているが、婚約者同士の交流のためなら談話室が解放される。

 談話室は半個室となっていて、扉こそないものの壁はしっかりしているという感じだ。


「そうだな。授業はほとんど領で学んできたことの復習といった感じだな。レナの方は?」


「こちらもお義母様に習ったことの復習が主ですね」


「だろうな」


 ゲームのメイン舞台である学園内では何が起こるかわからないから、領ではかなり過酷なメニューにしていたから少なくとも1年次に苦労することはないだろう。

 学科に関しては領主・騎士科も家政科も内容は完璧にしてあるし、実技の剣術の授業に関しても同級生……特に中央出身者には負ける気がしないレベルにはなっている。

 問題は戦術や交渉なんかの対人が必要な授業だな。

 戦術は副団長と、交渉は母上と訓練したが、この辺は人によって重要とすることが変わってくるから、実際にどうなるのかわからないんだよなぁ。


「私は不満です」


 と思っていたら、クリスタから声が上がった。


「クリスタはマックス様と同じ授業ですよね?」


「学科の授業は問題ありませんが、問題は実技の方です」


「そりゃ、騎士の娘のクリスタからしたら中央の剣術は拙く見えるだろうが……」


「そちらではありません。魔術の授業です」


 領主・騎士科では剣術だけでなく魔術も習うのだが、ソレに関しての不満か。

 とはいえ、クリスタは回復系統の魔法しか使えないので魔術の授業は受けていないんだがな。


「魔術の授業を受けられなかったのが不満なのか?」


「マックス様が魔術の授業を拒否されたのが不満なのです」


 おっと、俺のことか。

 クリスタは魔術の授業を受けられていないが、かくいう俺も魔術の授業に関しては受講を拒否されている。

 まあこれはゲーム内でもそうだったが、貴族学園の魔術の授業は戦術に組み込むレベルの大規模魔術を教える授業なので全属性の俺はお呼びでないというわけだ。


「全属性の俺は単体の魔術しか使えないし、教師陣が見捨てても仕方がないだろう?」


「他の学生がバカにしていたのが許せないのですよ!」


 あ~、貴族の中には魔術の実力こそが正義みたいな連中がいて、そういった連中は属性が多い人間や魔術が上手く使えない人間をバカにしている。

 ま、ゲルハルディ領ではそういうことはないんだがな。

 そもそも個人の突出した能力じゃなくて、集団で攻めることを主眼に置いてるし、魔術が使えなくても連携して剣が振れる方が重要とされている。


「まあ、いいだろ。魔術に関しては領で修行してたし、魔術を使えない人間をバカにしてるような連中をゲルハルディ領に招くことはないからな」


「そうですね。お義父様もお義爺様も魔術はあまり使いませんものね」


「それはそうですけど」


「ま、魔術の授業に関しては自由に使える時間が増えたと思っておくのが良いな。書物に関してはゲルハルディ領にないものが多いし、図書室での自習も大事だ」


 教師の水準は母上や騎士団の上位者とさして変わらないが、書物に関してはゲルハルディ領は大差で負けている。

 クリエイティブ系の職業が中央に偏っていて、危険を冒してまで書物を辺境に運ぼうとする商人が少ないことが原因だな。

 フィッシャー商会なんかの中央に伝手のある商会が頑張ってくれてはいるんだが、この辺は将来の課題でもあるな。


「はぁ、辺境は大変ですのね」


 おっと、ローズマリー嬢のことを忘れてた。


「ローズマリー嬢が嫁ぐ北東辺境伯では、また違うと思うけどな。あそこは山岳地帯だから個人の能力も必要になるし」


「でも、私はレナに教わるばかりで……」


「俺もレナも幼少期から普通の貴族以上に勉学に励んでいたから仕方がないだろう。ローズマリー嬢はローズマリー嬢で、何がしたいのかを考えて学園を過ごすのが良いんじゃないか?」


 俺たちはゲルハルディを含む辺境の暮らしが良くなるように、ずっと過ごしていたが、ローズマリー嬢は急に辺境に嫁ぐことになったからな。

 自分に何が足りなくて、自分に何が必要なのかを考える時間も必要だろう。

 そんな感じで休日のお茶会はつつがなく過ぎていくのだった。

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