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120 すり合わせ

「そういえば、婚約者が決まったそうだな」


「あら? 誰に聞きましたの?」


「公爵閣下から手紙が来ていたよ。というわけで、レナ。貴族学園ではなるべくローズマリー嬢と行動を共にしてくれ」


「わかりました、マックス様」


「? マックスはレナと一緒に居るのでしょう?」


「俺とクリスタは領主・騎士科、ローズマリー嬢とレナは家政科だから、そこでペアを組んでいた方が良いだろう?」


 領主・騎士科は学科と実技の両方があり、家政科は学科のみ。

 授業時間や使う教室なども違うと聞いているから、学園内で接点を持つのは難しいだろう。


「マックス様とは休日に交流を持つので、ローズマリー様も一緒にどうですか?」


「そうね。予定があえば一緒してもよろしくて?」


「俺とレナとクリスタ……夫婦の交流に参加してローズマリー嬢が良いのであればいいですよ?」


「あら? それも勉強よね」


 嫌味を言ってみたつもりだったが、ローズマリー嬢には伝わらなかったというか、伝わったけどスルーされたな。

 ま、辺境伯は中央貴族と違うから、ローズマリー嬢が北東辺境伯に嫁ぐなら辺境伯である俺たちとの交流を深めたいというのは分かるがな。


「とりあえずローズマリー嬢とレナは学園でも寮でもなるべく行動を共にしてくれ。あ、寮ではクリスタもだぞ」


「マックス様はどうします?」


「学園内ではなるべくクリスタと一緒に居るが、寮内は流石に無理だからな。友好的な領の人間と仲良くなっておくさ」


「? 別に学園内で危険なことなんて起きないでしょう? 一人でも問題ないのでは?」


 ローズマリー嬢の言うことももっともではあるが、こちらにはこちらの事情があるんだよな。


「通常であれば貴族学園内で危険などないが、ミネッティ伯爵令嬢がな」


「あら? マックスと破談になった方だったかしら?」


「破談というか、そもそも婚約すらしなかったという感じだがな。同格とはいえ貴族としてあるまじき行動をしてくれた令嬢だからな。何をしでかすかわからん」


「お父様から概要だけは聞いていたけれど、そんな子なの?」


 ローズマリー嬢が眉をひそめるが、普通に考えて婚約の打診に現れた相手に対して、暴言を吐いて顔合わせも拒否するなんて貴族じゃなくてもあり得んからな。


「王都に来るたびに情報を集めてはいるが、下位の貴族への当たりが強いらしいな」


「私もマックスも上位の存在だけれど、それでも危険なもの?」


「貴族学園内には辺境伯家や公爵家よりも上位の存在がいるからな」


 俺がぼかして伝えるとハッとしたような顔をするローズマリー嬢。


「……まさか第三王女が絡めとられると?」


「可能性としてはなきにしもあらずだな。王宮の噂によると第三王女は先だって貴族学園を卒業した第三王子と同じく、相当の世間知らずらしいからな」


「第三王子って、確か臣籍降下で伯爵になったのよね」


「そう。普通なら第三といえ王子が臣籍降下するなら公爵……能力がなくても侯爵になるはずなのに伯爵だ」


 第一王子のマティアス殿下は立太子の準備中、第二王子はマティアス殿下に何かあった時のスペア兼外交特使として研鑽を積んでいる。

 そんな中、第三王子は王都と辺境の間という、なんとも中途半端な領地の伯爵となっているのだ。

 もちろん臣籍降下時に王位継承権もはく奪され、その辺の貴族と同じ権力しか持たされていない。


「確か第三王子は貴族派の下位貴族とばかり交流をもって、王家派とも国王派とも交流を持たなかったのだったかしら」


「普通なら公爵になるだろう王家の人間は王家派の人間と交流を持つはずなんだが、そんなことすら考えつかないほどの世間知らずだったらしいぞ」


 王宮に残って国のために働く侯爵になるのなら国王派、自身で領地を治める公爵になるなら王家派と繋ぎを持つのが当たり前なのだが、そんなことすら知らなかったらしい。

 陛下のつけた側近候補や教育係も諫言をしていたようだが、聞こえの良い言葉に惑わされてしまったようだな。


「その第三王女がミネッティ伯爵令嬢と交流を持つことをマックスは危惧しているということ?」


「まあ、それだけじゃないがな。貴族学園は貴族が集まるが、未成年ゆえに常識を知らない者もいる。相手が上位の存在と知っていてなお、喧嘩を売ってくる可能性もあるということだよ」


 ゲーム内では第三王女、侯爵令嬢、伯爵令嬢、子爵令嬢が攻略対象だったが、ここは現実。

 ヒロインだけでなく、だれがどのタイミングでこちらの敵になるかはわからない。

 ゲームには主人公とヒロイン、それに敵役である俺やローズマリー嬢くらいしか描写されていないが、現実なら数多くの令息、令嬢が通っているはずだからな。

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