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01 気づいたら美少女ゲームの悪役令息に転生していたんだが

「ぐぁっっ!!?」


 突然、頭に人生初と思うほどの衝撃がきやがった。

 ここはどこ!? わたしは誰!? なんて、お決まりのボケを決めたくなるほどの衝撃で、マジですべてを忘れそう……と、思うが、忘れるどころか前世の記憶が蘇りやがった。

 そうだ、俺は成年向けの美少女ゲームを作る会社に勤めていて、外回りの最中に暴走自転車のせいでよろけた婆さんを助けようとして……うん、車に轢かれたんだよな。


 んで、ここはそう、馬車の中……うん、言いたいことは分かるだろうが、これはあれだな、異世界転生ってやつだな。

 俺自身はそういうのに造詣はないんだが、同僚兼幼なじみのシナリオライターが好きだったからいろいろと解説されていたんだよな。

 ここは最後に作った美少女ゲームの世界で、俺はどうやら主人公にやられる中ボス悪役令息に転生してしまったらしい。


 え? なんでそんなことがわかるのかって?

 こういう時のお約束としてそれまでの記憶が無いってことが多々あるらしいんだが、俺はこれまで生きてきた記憶もきちんと持っているからだな。

 伯爵令息として生まれたのも、これまでに受けてきた教育も、人間関係も覚えている。

 だから、正面にいるおっさん……まあ、俺の前世とそう変わらない年齢の人をおっさん呼ばわりも失礼だが……が俺の父親であることも、傍で心配そうにしているのが幼なじみのレナであることもわかっている。


「だから、あれほど急停車に備えて椅子につかまっておけと言っただろう」


「大丈夫ですか、若?」


「お父様、レナ、大丈夫です。心配かけました」


 おお~、ゾワってきた! まさか自分の父親をお父様なんて呼ぶとは貴族とは何て面倒なんだ!

 まあ、この辺は習慣だし、もう少し年齢を重ねれば呼び方を変えても問題ないだろうけど、しばらくはお父様呼びなんだよなぁ。

 んで、そう、俺はマックス・フォン・ゲルハルディ。ゲルハルディ伯爵家の長男で、今は婚約者になるはずの伯爵令嬢に会いに行く途中だ。


 このゲームをざっくり説明すると、公爵令嬢の執事をしていた主人公(孤児)が貴族学園のダンジョン実習中にヒロインとともにダンジョン攻略をして勇者と認められる。

 勇者となった主人公は公爵令嬢の悪行を断罪、ヒロイン(4人)とハーレムを築くというシナリオになっている。

 んで、俺はヒロインと婚約していたが主人公やヒロインにいじめをしていたとして断罪、公爵令嬢とともに主人公たちに立ちはだかる敵ってわけだ。


 ゲームの開始は貴族学園入学からだが、今はゲーム開始10年前ってところか……貴族学園の入学は15歳で、今は5歳ってことだな。

 え? ゲーム開始前なのに中ボスだって一発でわかるのはおかしいって?

 確かに俺でもその疑問は持つが、俺はこのゲームのディレクション、デバッグ、外回りと一通りの仕事を全部任されていた。

 んで、このゲームのシナリオライター、メインプログラマー、メインデザイナーの3人が幼なじみで、飲みに行っては設定やらなんやら聞かされまくっていたからわかるんだよ。

 この中ボス……マックスも戦闘時のデバッグで何十回と同じ戦闘画面を見ていたし、設定資料集のチェックもクソほどしてきたから幼少期の容姿もわかるのさ。


 でー、あー、どうするべきかな。この世界で生きるというのはわかっているんだが、破滅? 中ボス化はどうにか回避しないと、世界が救われてもマックスとしてはバッドエンド一直線なんだよな。

 この手の回避方法としては、破滅直前までシナリオ通りに行動しつつ決定的な悪行を回避する、あるいは最初からシナリオブレイクしてアドリブでどうにかするの2択なんだが。

 うん、俺はこのゲームを隅から隅まで知り尽くしているし、この世界の常識やルールについてもそれなりの知識がある。

 となったら、シナリオ通りに話を進めていって、直前に回避する方がリスクは少ないか。


 あとそうだな、中ボス化と同時にこのゲームで雑な扱いを受けてきたサブヒロインたちを救うことを目標にしていくか。

 何を隠そう、隣で未だに心配そうにこちらを見ているレナもサブヒロインの1人。

 サブヒロインはヒロインとは名ばかりで、スチルもなければ立ち絵もない、ゲームでのお役立ちアイテム代わりの性能を持っているだけの存在で、誰からも見向きもされない。

 でも、ここは確かにゲームの設定を持っている世界ではあるものの、現実の世界。

 1人の人間がそんな雑な扱いを受けるのを……しかも、それが自分の幼なじみならなおのこと、そんな扱いは回避しなければならないだろう!


 というわけで、気づいたら美少女ゲームの中ボス悪役令息となってしまった俺は、サブヒロインを救うことと自身の破滅回避のために全力を尽くしていくぜ!

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