第3話 ソウルアビリティ
それからルスヤエルからソウルアビリティの概要を聞いた。
――――ソウルアビリティ――――
それは古の神が生み出した加護のひとつ。
死者の魂を下界の人間の魂を介して現世に顕現させる力。
下界、つまり現世の人間は皆、魂器という魂の器を持っている。しかし、その器の大きさには個人差があり、人間の魂のエネルギー量に比例する。
そして、魂器の大きい人間は死者の魂を住まわせることが可能だという。死者の魂は魂器に住まわせてもらっている対価として、自身の生前のピーク時の能力を魂器の持ち主であるその人間に付与する。
死者の中には生前の無念を魂器の持ち主を介して晴らす者もいるという。しかし、それは宿主となる魂器を持つ人間との対話が重要である。
決めるのはあくまでもその人間。それがソウルアビリティの概要であった。
宿主となる人間からすれば、メリットよりもデメリットが目立つ。
なぜなら、魂のエネルギーを多く消費し、それは倦怠感や死につながるからだ。それゆえ、どの世界でもソウルアビリティを使おうとする者もおらず、その存在は古の記憶と共に歴史の表舞台から消えた。
しかし、まれに複数のソウルを装備しても副作用をおこすどころか、生命力があふれ出る者もいるという。そんな人間を下界の歴史では使徒と称した。使徒は数世紀に一度存在するらしい。
ルスヤエルの話によれば、とある世界でその使徒がこれから誕生するらしい。私はその話に興味を持ち、詳細を聞いた。
彼の名前はジョン。フランツ王国の貧民街で育つらしい。私は彼の世界でもう一度、人々が笑う世の中を作れるかもしれない。彼を介して、守れなかった一族や家族を守れる人生を歩めるかもしれない。
その時から私は下界のジョンの人生を見守ることに決めた。彼がソウルアビリティに覚醒したら、私が彼の力となろう。そしてルスヤエルは私にソウルアビリティのソウルとなる契約の儀を施した。
ソウルとなることで、使徒がソウルアビリティを装備する際に下界に顕現することが可能になるという。また、ソウルとならなければ、時間の経過と共に魂は転生してしまう。
ソウルとなることで、成仏するまでの時間を先延ばしにすることが可能であり、ソウルとしての役目を終えたその時、死者の魂は成仏し、別の命へと転生する。もちろん、転生したらその人格と記憶はなくなる。
私は、ソウルとなり、モンドと呼ばれる地球とよく似た世界をこの天界より観察する日々が始まった。それからジョンがソウルアビリティに覚醒するまでの年月を私は天界で過ごすことになる。
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