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第9話 状況整理が必要です

 


「大丈夫。アルシオ叔父上は、あまり世間的にも顔が知られていないからね。サシャが詳しくないのもおかしくないよ」


「そもそもあの人、外交とか王宮行事とかも、本当に必要最低限しか出席しないですもんねー」


「うん。勉学や研究が好きで、基本外に出たがらないから。まぁ王宮で過ごしていれば、サシャもその内会えるかな」


「はぁ……」


 どんな見た目の方なのか分からないけど、アルシオ王弟殿下は変わり者のレアキャラって扱いでいいかな……



 ────────────────



 それからノエル様と、その他の契約内容について、あれこれ再確認をした後、(主に私からの質問責めである)ライから突然こんな事を提案された。


「そうだ。サシャ嬢、なんでもいいんで、俺を占ってみてくださいよ」


「え、ライをですか?」


「はい! 実は気になってたんすよねー!」


「うぅん……簡単なのでよければ」


 この世界にはタロットカードや水晶玉は存在しないので、私が出来る占いといえば、特別な道具を必要としない簡単な占いだけだ。


 だから私の占いが、探し物を見つける手助けになるかと聞かれると……ぶっちゃけ、確証なんてほとんどないに等しい。むしろ失敗する確率の方が高いと思う。


 それでもいいからと、ノエル様に言われて雇われたからには、私なりの全力は尽くすけども。


「じゃあ……ちょっと隣に座って、手のひらを出して下さい」


 私はポフポフとソファーの座面を叩いて、ライを隣に座らせた。


「手ですか?」


 えーと、どっちの手を見るんだったっけかな。

 左手が潜在能力や本質をあらわして、右手が現在の状態だと考えてと……


 そんな手相の知識を思い出しながら、私はキョトンとしているライを横目に、左右の手のひらをマジマジと見比べた。

 ふむ、右手の方に沢山いい線がある気がする。つまり、今の地位を築き上げる為に、沢山頑張ってきたって事だ。


「手のひらを見ただけで、何が分かるんすかね……?」


「ライは……うん、努力家なんですね」


「へ!?」


 私はもう少し細かく見ようと、ライの大きな手のひらを両手で掴んで、顔を近づけて細かな線までしっかりと確認する。さて、感情線はっと……


「性格は……ちょっと怒りっぽい? 恋愛は惚れやすくて、好きになったら一直線な感じ?」


「う、うぁぁ……」


 図星なのかな。語彙力(ごいりょく)(とぼ)しくなってるけど。


「な、なんか自分を丸裸にされてる気分……恥ずかしくなってきたんですけど!?」


 自分からやって欲しいと言ってたのに、この程度で丸裸とか言わないでほしいのだが。私が変態みたいじゃないか。


「なら、これくらいにしときますか? ……それと、占いとは関係ないけれど、ライは日々鍛えてるんですね。目に見える努力の証が沢山」


 手のひらにあった複数の剣ダコが、それを物語っていた。ライはふざけているように見えても、優秀な護衛騎士なんだなと、私は再確認したのだった。


 えい、と剣ダコを押しておいた。こういうのって何故か見ると押したくなるよね。ふくく。


「うわー! しゅ、しゅーりょー!」


 バババッと勢いよく手を離された。


 自分から占ってほしいって言ったのに、なんだなんだ。顔が赤いですよ、護衛騎士様。


 ライってチャラチャラしてて、いかにも遊んでそうなのに、意外と純情なタイプなのかもしれない。


「サシャ」


 向かい側に座って、静かに一部始終を見ていたノエル様に声を掛けられ、はいと返事をする。


「占いの時って、こんなに距離が近いんだ?」


「え? 種類によりますけど……今やった占いはそうですね。手のひらの線を見る占いなので、近くで見ないと分からないです」


「ふぅん」


「?」


 ノエル様、何か機嫌悪くない?


 私に占いを信じてないと思われた手前、占ってほしいって言えなくなったのかな。私はよく分からず小首を傾げるのだった。



 ────────────────



 ──夜になり、入浴だったり寝る前の身支度をメイドに整えてもらった。至れり尽くせりである。


「サシャの身の回りの世話をする為に選ばれた特別なメイドだから、安心して色々任せていいよ」と言われたけど、手厚過ぎて逆に怖い。特別なメイドとは。


 王宮仕様の高級フカフカベッドにダイブしたら、あとは寝るだけ。今日1日で色んな事があったから、身体はクタクタだけど……その前にちょっとだけ状況整理だ。


「主に、乙女ゲームの情報を、だよね……」


 眠気を誘ってくるベッドから、えいっと気力で起き上がり、窓辺に置かれた机の上にあるランプを灯す。椅子に座って、紙とペンを準備した。


 ……さて、何から書き出そうか。

 前世の友人からあれほど話を聞かされていたのに、今じゃすっかり記憶から抜けてしまっているのは、本当に勿体ない事をした。


「とりあえず、攻略対象者とやらを思い出すかな……レクド王子でしょ? そうなると、絶対ノエル様もいたよね。あとは……誰だろ」


 多分、見せてもらったパッケージには4人くらい立ち絵があった気がする。あと2人、女子がときめきそうな役職で、顔が整ってる人といったら……


「そっか、護衛騎士」


 ライかフェルナン卿のどちらかは、絶対攻略対象者に入っているだろう。それと、顔は分からないけどアルシオ王弟殿下も位の高さ的に考えて、攻略対象者かもしれない。


「待てよ……? アルシオ王弟殿下って、おいくつなんだろう」


 陛下の弟って事だから……結構なおじ様かもしれないよね? それってどんなルートでいけば成功で、ハッピーエンドになるんだろうか。歳の差もストーリーの大事なスパイスなのかな。


 乙女ゲームって奥が深いな……と、しみじみ思う私なのだった。


「何にせよ、ヒロインが誰を選んで、どうやってストーリーを進もうとするのかが重要なのかなぁ……」


 私みたいに前世の記憶持ちなのか、はたまた何も知らない子なのか。


 ていうか、そもそもヒロインはどこからやって来るんだろう。【黒猫の涙】探しが始まっているということは、もう登場していてもおかしくはない筈である。貴族のご令嬢なのかな、それとも王宮に元々いる子なのかな。


「うわ。もしかして私、ヒロイン探しも並行しなきゃダメ……?」


 そう呟いて、ん〜っと腕を伸ばした。


 流石に眠くて頭が働かなくなってきたかも。明日は王宮探索の続きも控えているし、もう寝よう。


 私はベッドのフカフカの魔力に取り憑かれたかのように、朝まで起きる事なくグッスリと眠ったのだった。


 枕が変わると寝れないタイプではないのだ。


 

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