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64. 再び縮まる距離

 

 感傷に浸りながら互いに気持ちが落ち着いたところで、気になることを聞いた。


「叔父様……アルバートさんは知っているのですか」


「あぁ。彼には7年前に全て話してある。その時に、俺は彼にライナックの体を届けることができた。ロゼには黙っていたが、ライナックのお墓がアトリスタ邸近くにあるんだ。今度一緒に行こう」


「はい、もちろんです」


 全てを知った上で、アルバートさんは叔父様にライナックになることを提案したんだとか。というのも、ライナックが常々アルバートさんに叔父様の話をしていたようだ。商会に関してよく知る人間でもあるから、自分がいなくなった時には任せられるとまで言っていたようで、実際ライナックは叔父様と会うたびに商いの話をしていたようだ。そのおかげで、今まで無事役目を果たせたのだと言う。


「叔父様が結婚に興味がなかったのはライナックのフリをしていたからですよね」


「……それも含まれる」


「その必要がなくなった今、いつかは結婚したいと思いますか」


「そうだな…………いつかはしたいと思う。けど、きっと無理だ」


「何故ですか」


「今まではライナックのフリをしていた分人との距離を無理にでも近づけていたが、本来はそういう性分じゃないんだ。たとえロゼと過ごした日々があっても、女性とろくに話したことがない」


「そう考えると叔父様凄いですね。完璧にライナックでした……どうかなさいましたか」


 叔父様の表情が曇り出す。


「え、……いや。何でもない」


「……言わなければわからないこともありますよ」


「……その、言葉遣いがな。距離を感じるんだ」


「あ…………」


 無意識に、面識のあまりなかった叔父に対する言葉遣いをとっていた。だが別人のフリとはいえ、これまでは楽な口調で接してきておりそちらに親しみを湧いていてもなにもおかしくはない。


「わかったよ叔父様。元に戻すね」


「あぁ、ありがとう」


 自分で言っておいてなんだが、この口調だと叔父様という言葉に変な感じがする。何かスッキリするような呼び方を考える必要がありそうだ。


「そうだ」


「どうした、まだ何かあるか」


「これからどうしよう」


 正体を知られた今、アトリスタの名前を借りるのは厳しいものがある。アルバートさんにかける負担が比にならなくなるからだ。2人でもう一度旅をする……今度は彼は叔父(ライオネル)として、世界をまわることが頭をよぎった。


「……これから、か。もう確定していることもある気がするが」


「え?」


「取り敢えず、話をしなくてはならない人達に会うべきだな。それから考えても遅くはない」


「そうだね」


 ウィルやお嬢様、そしてリズベット。


 会わなくてはいけない人がたくさんいる。彼らと話を付けた後でも、これからのことは模索できる。最後の大仕事になることを感じながら、近づく別れを寂しく思うのだった。


「ロゼ、まだ夜は長い。明日に備えて寝なさい」


「そうする。叔父様……回復する間、ずっと傍にいてくれてありがとう」


「大したことじゃないさ……おやすみ」


 柔らかく微笑みながら頭を撫でてくれる姿は、本当に家族そのものだった。


「おやすみなさい」


 こうして濃い夜を終え、あとは日が昇るまで眠るのだった。
















 翌朝、何の問題もなく起きた私は身支度をすませていた。叔父様がドレスを臨時で用意してくれたみたいで、それに着替えていた。


 朝食を取り終えた頃、ここが本館だと初めて気付いたのである。別館でないことを少し疑問に思いながらも、本館の執事から呼び出しを告げられる。大公殿下より謝罪をとのことだった。立場上、当然ながら私が大公の元へ足を運ぶ。場所は何度か訪れたあの部屋だ。


「…………」

 

 正直、どんな顔をして行けばいいのかわからない。ロゼルヴィアとしてきちんと話すのは7年ぶりだ。今まで抑えてきた気持ちは、魔神と対峙したあの日に無理やり整理をしたもののきっと完璧ではない。


「…………」


 事務的な話で終わるかもしれない。その時はこちら側もそういう態度でいなくては。


 それでももし私的な話があったとしたら……潔い姿を見せなくてはいけない。そう考えているのに、それができる自信がない。この数日間療養したものの、一度溢れた気持ちを修復することはできなかったようだ。


 それでも、私は────。


 浮上する多くの考えの中、どうか正しい選択をできるように小さく意気込んだ。


 部屋につくのはあっという間で、扉の前にたてば一気に緊張が走った。早まる鼓動を抑えながら扉を叩いた。


「どうぞ」


「失礼いたします」


 扉にかける手に不用意に力を込めながら、私は中へと踏み出した。

 

 中では大公殿下が1人佇んでこちらを見つめていた。


「…………」


 入室時用に挨拶をしなくてはいけない。そうわかっているのに、大公殿下を、彼を、ウィルを目の前にした途端、頭が真っ白になる。抑えなくてはいけない感情が込み上げてきて、対処に追われる。扉が閉まる音が聞こえ、挨拶に対する焦りを感じるものの挨拶文を思い出したその時。


「ヴィー……!!」


 ウィルにより強く抱き締められたのだ。


 思い出した言葉は再び飛び、追われていた感情を受け入れざるを得なくなってしまった。


「…………ウィル」


 最善の道を選ぶから。必ず選ぶから、どうか今だけはこの時間を許してほしいと1人願うのであった。

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