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36. 追憶する姫君③


 デューハイトン帝国の建国祭が行われた。残念ながら訪問は叶わず、自室で変わらない日々を過ごしていた。


 その中の一日は、約束してしまったことがありウィルへの手紙を適当に書いたのであった。


 前回の別れ際に、手紙を誰にも書いたことがなく書き方がわからないという話になった。教育係の一人に聞こうかなと話せば、ウィルに止められた。何でもかしこまった丁寧な手紙は求めていないのだとか。自由に書いてと笑顔で告げられたが、今思えばやはり遊ばれてるなと感じるのであった。それでも固い文は頭を回転させる必要があるから、私からしても自己流で書くことの方が圧倒的に楽であった。


 それと手紙を送る際にやって欲しいことを伝えられた。それは、魔法を使ってウィルにしか開封できないようにして欲しいのだとか。何故かと問えば、自由な文面を他の人が目にして色々とこじつけられては面倒なんだとか。その時はそれもそうかと納得したが、よく考えれば一国の王女の手紙を勝手に開封する方がよほど無礼かつ面倒なことに発展すると思った。承認してから気づいたことで、時既に遅しだが。



 とにかく、言われた通り自由に書いてみることにした。



『ウィルへ


 自由に書くという話だったので、色々と形式を無視して書こうと思います。と言っても適当に書くので悪しからず。


 フィーディリアの花が散り終わり、完全な春の終わりが告げられました。同時に夏の始まりも告げられたけれど、あまり実感はありません。他の国々では、夏は気温が上がり暑くなるという話を聞きます。しかし、エルフィールドは特段暑くならないので春と夏の境目はいつもフィーディリアの花に頼りきりです。いつかデューハイトン帝国に行き、暑い夏というものを感じてみたいものです。


 以前、淑女教育に力を入れると言いましたが宣言通り頑張っています。けれど理由はウィルの前での振る舞いではなくて、12歳になったら解禁されるお茶会の為です。12歳になればやっと国内のご令嬢方と交流することが許されます。彼女達の前で王女として恥じない姿を見せる為に日々勉強中です。今度会うまでに少しでも淑女に近づけるようにします。


 目標を立てて勉強する日々ですが、やはり代わり映えのしない日々でもあります。学べる環境に満足していますが、最近は退屈に感じることもありその点は不満に感じています。


 特に退屈なのが自由時間です。まだ年齢の近い友人もいず、同年代の話し相手と言えばウィルしかいないため一人で過ごすことが多いのです。だからといって来る頻度を増やさなくて大丈夫ですからね。


 近頃は王立図書館で時間を潰しています。私の行く時間は人がいなくて、実質貸し切りです。ここにはたくさんの魔法の本があり、読んでいて楽しいです。どのような本があるのかと思い、図書館内をざっと見て回りました。やはり魔法の本が大半を閉めていました。さすが魔法の国ですかね。ですが、少し気になったのはそれ以外の本が少ないということです。例えば他国に関する本は全くありませんでした。他国の文化や風景を見られるかなと期待していたので残念です。


 魔法の本ばかり読んでいても少し疲れるので、何か別のことをしようと考えました。そこで思い付いたのが王城探検です。城内だけでもまだまだウィルに紹介しきれてない場所が多いので、いつか見て回るためにしています。それと王城は私が普段過ごす場所ではありますが、知らない場所もまだまだ多いので改めて探してみようと思い探検をしています。これが思いの外楽しいのです。城内に私の魔力が感知できれば常に侍女などのお付きの人とくっついていなくていいので、本当に言葉通り一人で回れています。


 最初の方は、見知った場所を見て回りました。それも回りきったので、よく知らない場所へと足を踏み入れてみました。決して危険な場所ではありませんよ。エルフィールド王城内ですから。特に面白い場所はないなと思いながら散策していましたが、ある日とても興味深いものを見つけました。それは高度な認識阻害魔法がかかった一面の壁です。おそらく壁の向こうには何かあるのだと思います。何だろうと思って行こうとしたのですが、残念ながら今の私がこの魔法をとくのには少し力が及びませんでした。なので、次に会うまでにとけるようにしておきます。そうしたら二人で壁の向こうに行ってみましょう。とても、とても気になるので優しいウィルならば付き合ってくれますよね。楽しみに待っています。


 ここ1ヶ月はこのように過ごしていました。変わらない日々の中にも何とか変化をつけて、彩りのある日々にしていましたよ。


 次に会えるのを楽しみにしています。それよりもウィルからの返事を楽しみにしていますからね。


 ではまた。

 

                    ロゼルヴィア』      


 手紙にはしっかりと魔法をかけて、ウィル以外の人間が見れないように施した。


 さすがに封筒にはしっかりと形式を守った書き方をした。


 書けるだけ書いて満足した私は、ウィルが読んでどのような反応をするのか想像しながら手紙を送り出したのであった。


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