魔王城
―――その日は唐突に訪れました。
魔王が再び王都に襲来し……こう宣告したのです。
『勇者よ、国民よ、人類よ……我ら魔族は切り札を手に入れた』
……きっと、それは兄のことなのでしょう。
以前に、見つけたら知らせてくると言っていましたし……なにをと問い返すこともありません。
私たちは、急遽……国王の命によって、魔族たちが住まう場所……魔界に向かうことになりました。
魔界は魔物や魔族たちが住まう、とても危険な場所で……私一人ならともかく、他の皆さんには命を落とす危険があるかと思われましたが――今までの経験で、何とか乗り越え……いや、まあ、ほぼ全員死にかけてしまいましたけど。そのせいで、一度王国に返りましたし。
……お世話になった人たちなのでいなくなったことは、少しは悲しかったですけど――正直、兄さん以外にはなんにもいらないので、身軽になったというものです。
「あは、兄さん……もうすぐ、会えますね」
私は魔界で一人、淡々と魔物、魔族を滅ぼしていく。
私の行く手を阻むのなら、女子供だろうと容赦はしません。光の剣で、槍……途中からは面倒くさくなって、盾をずっと顕現させておいて、敵を自滅させてやりました。
そうして、奥地へと進み……私は、魔族を殺す度に魔力が尽きかけていく。
ですが、なにかを捧げると、あっという間に二倍の量になって魔力が復活するのです。――その度に、兄さんへの愛情以外に対する感情の揺れというものが薄くなっている気がします。
きっとそれは、情や本能――人間の持つ野生なのでしょう。
まあ、だからといって兄さんへの愛情は薄れる気がしません。きっと理性でも愛していると理解しているからなんでしょうね。
「さてと……ここが魔王城――いかにもな雰囲気ですね」
すでに、光の盾は盾ではなく鎧――つねに全身を守って、攻撃を反射させています。
まあ、そこまですると頭痛が酷いので、多用はしませんが……敵の本陣ですからね。使えるものは積極的に使っていきましょう。
………しかし、魔族ってこんなにも弱かったでしょうか。
簡単に倒せましたし――なにより、いままで襲ってきた魔族は一癖、二癖くらいあったというのに……
「まあ、楽にこしたことはないですからね」
といって、深くは気にしないようにしました。
***
先へ進んでいくと、徐々に魔王城の生活感? らしきものが見えてきて……まあ、敵を出迎えるものではなく、普通に建物として利用していることが判明しました。
だからなのか、人間である私を見て、ひどく怯えている様子で……まあ、立ち向かって来ないなら、手にかける必要もないですし放っておきますけど。




