第十八話 海の支配者①
――王国の領内に『魔王』がでたという噂はあっという間に広がり、国民の不安は一気に募りだし……私は気軽に外を出られるようにはいかなくなりました。
なので、城の訓練場でリン様と……三人組で特訓を重ねています。
しかし、魔王との戦闘を重ねてからというもの――私の『光魔法』はより凶悪に、より殲滅的になったように思います。
まず【光の剣】ですが――触れたものを消滅させてしまう……限度はありますが、鉄くらいなら簡単に消し去ってしまいます。
まあ、そうしないように制御可能なのでまだこの魔法はマシなほうです。
問題は、【光の盾】と【光速移動】です。
「――【光の盾】!」
「きゃっ!?」
まず、攻撃を受け止めるのではなく――弾き飛ばすようになりました。
いまもマキアさんの魔法を掻き消すのではなく……マキアさんに向かっていくようになってしまいました。
そして【光速移動】は――
「……っ、が!」
速度があがり……制御不可能になってしまう。
より速く、と望んだ結果ではありますが……これでは意味がありません。ということでここ最近は模擬戦の戦績も芳しくなく……私は夜遅くまで特訓に励んでいます。
――そんな感じで、月日はあっという間に流れていき、魔王襲来から一週間。
国境付近に、魔族が現れたという情報を受け取り……私たちは、王都から国境の街――『クルスト』に向かうことになったのでした。
***
国境の街、クルストは特筆することのない貿易都市です。せいぜい海産物が有名なことくらいでしょうか。
私はあまり魚を好まないので、とくに魅力的に思えないことが残念ですが……ここに観光できたわけではないと気を引き締める。
「で、魔族がでたという海岸まできたわけですけど……魔物がやたらと多いですね」
「そうだね、でも……相手にするまでもない」
リン様の言う通りです。
魔物たちはなぜか私たちを差し置いて、なにかから逃げるように……海岸まで向かっているという様子です。
すっかり怯え切った様子で、攻撃する気すら失せていきます。
「普通に考えるなら、あの海の向こうに――魔族、ないし強力な魔物が現れたと考えるべきですね」
「ってことは、泳いでいくのか?」
「バカね、そんなことしたら危ないでしょ」
「……いったん街に戻って、対策を講じるべきですね。魔物たちが怯えるものの正体も解っていないわけですし」
踵を返し、海に背を向けたその時でした――遠くから閃光が走っしたのは。
「でももったいないなー……こんなきれいな海なのに、魔物だらけなんて」
「……っ! 下がって――【光の盾】ッ!!」
私は海に近づこうとしていたマキアさんを掴んで、後ろに投げ飛ばすと即座に防御魔法を展開し、その閃光を受け止める。手応えからして、単に魔力を放出しただけのようで……これなら跳ね返せる、と感覚で理解した私は、そのまま前に押していき――
「う、あああ!」
真っすぐ、閃光が向かってきた方向へと打ち返すのです。
……しかし、地平線の先まで届くはずもなく……そのまま空中で消えてしまいました。
「はぁぁ……いまのうちに撤退しましょう」
「――ご、ごめんなさい!」
「いえ、私は大丈夫です……それより、思い切り投げてしまいましたが……そちらのほうはなんともありませんか?」
「え、うん。アレクが受け止めてくれたから……」
「そうですか」
マキアさんは申し訳なさそうにしながら……私たちの後を追って、街まで無事に帰還するのでした。
「あの閃光を撃ってきたのはリヴァイアサンって言う魔物らしい」
翌日、調べものをしてきたリン様がそういって席に着き……全員が揃ったところで話し合いを始めるのでした。
「それで、リヴァイアサンは知っての通り……災害級の魔物。普段は深海に生息しているはずなんだけど……たぶん目撃情報があった魔族がなんらかの工作をしたと思われる」
「……そんなことはどうでもいい。それより、そんな奴相手にオレらは何ができるんだ?」
「…………海の支配者、リヴァイアサン。周囲に水が大量にあるなら、その強さは――無敵とされている」
「……っ」
遠距離はあの閃光。近づけば、嵐に大荒れた海。
そして全長五十メートルはある巨大な体……リン様の得意とする戦法も、そこまで大きかったらは凍りつかせることは難しいとのこと。
……私もそうですね。
というより、私の戦い方が対人すぎるのです。
「――でも、突破口がない……わけでもない」
「そりゃあ……」
「わたし、ですよね」
「――!? マキアがか!?」
「……確かにー、土属性の魔法は、水に有効だけどー……相手は海そのものだよー」
「そう……だけど、土属性には『収束』っていう特性もある」
――魔法を使い続けると、属性以外に特殊な効果が表れることがある。
例えば私の光魔法も、その先があるし……マキアさんの土属性にもあるはずです。
「私の氷属性も元を正せば、水属性の『凍結』って特性から派生したもの……だから水属性を極めているリヴァイアサンには通用しない……でも、ありとあらゆるものを『収束』させることができる土属性なら――」
「むりです!! わたしなんかには……そんな大それたことは……」
リヴァイアサン攻略に必要なマキアさんの魔法――ですが、肝心の本人の意思が伴っておらず……そのまま他に解決策が見つからず、難航してしまうのでした。




