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第十五話 リングベル・フィーアスの実力②



 ――リン様の受けた依頼というのは、危険な魔物の群れを討伐するというもので……現在はその出現地帯に向かっている最中です。

 その魔物は――ベビーモスという、二本の大きな角が特徴的な魔物で、いわゆる災害指定されているベヒーモスの幼体ということになります。

 そんな危険な魔物が群れを成してもいいのか、ということを考えてしまいますが……まあ、子育てをするなら群れを作るのは当たり前ですよね。


「というわけで、この山岳地帯にいるけど……ついてこれそう?」

「ぜぇ、はぁ……な、なんとか」


 私とリン様を除いた全員が息を切らして……肩で息をしています。

 私は、鍛えているのでこの程度で体力は削られませんが……それは小さいときからの英才教育の賜物というやつでして、この三人組は正直途中でギブアップするかと思っていました。

 正直、驚いています。

 ですが、さすがに気力だけでは体を動かすことができないのか……全員が地面に突っ伏しています。


「……仕方ない。ここで仕留めよう――ディーリヤ」

「はい」

「魔力は、ある?」

「……【閃光】程度なら、問題ないです」

「そう……じゃあ、お願い」

「分かりました」


 私は、魔力を練って、頭上に大きな光球を出現させて……辺りまで届かせるくらい眩しい光を放つ。

 すると、地面が揺れるほどの衝撃が伝わってきます。

 地震と勘違いしてもおかしくないほどの強い地揺れですが……足音のようにも聞こえてくるのですから、呆れたものです。


「そこで待ってて。十秒で終わらせてくる」


 リン様はそう言って、氷の鎧と砕氷を周囲に浮かべると……崖から飛び降りて、足音のするほうへと一気にかけていく。


「は、はぇー……」


 アレクくんが、そう言葉を漏らすのも無理はありません。

 なにせ、人間が出せる速度ではありません。……下手をしたら、私の【光速移動】よりも速いかもしれません。

 ……それを可能としてる魔力操作の練度と、魔力量には感服するしかありません。


「さ、さすが『氷上の妖精』様……」

「……そういえば皆さんはリン様のことをそう呼びますけど……それっていったい何ですか?」

「え? 知らないの!? 高ランクの冒険者って、だいたいこういう二つ名がついてるし……なにより、フィーアス様って、冒険譚に載ってるくらい有名なんだよ!?」

「そうなのですか。……ちなみにその由来ってわかります?」

「それこそ、まさにその冒険譚に載ってくるくらいには! えっとね――」


 マキアさん曰く――、災害級の魔物を湖に叩き落してその水をすべて凍らせ……そのまま討伐したことが広まってそう呼ばれるようになったそうです。

 その美貌と、湖をすべて凍らせる様が相まって……『氷上の妖精』らしいです。

 まあ、実際にリン様の魔法はすさまじいです。

 ……けれど、真に恐ろしいのは……その精度なことはあまり知られていないようですね。


「あ、始まりましたよ」

「え、どこだ? 視えねーぞ?」

「あそこですよ。ほら」


 私はリン様が五匹のベビーモスに突っ込んでいったほうへと指を指しますが……誰もピンと来ていない様子で、首を傾げています。


「……仕方ないですね。――【光景透写】」

「おお! すげぇ!」

「……光の像を複製して空中に浮かべて、拡大しているだけです……本当は特定の相手を監視するための魔法なんですけどね(ぼそっ」

「ん? なにか言ったか?」

「いえ、それよりも――ここからは見ものですよ」


 氷で作った剣を振るい、ベビーモスを翻弄していき……空中は砕氷でキラキラと輝いて、まるで劇でも見ているかのように錯覚します。


「きれい……」


 まるで舞うように、危なげなく攻撃を回避するリン様。

 その度に足を斬りつけていき……凍らせていく。攻撃されるたびに動きが鈍っていく様は、まるで物語の英雄そのものです。


「あっ、倒れた! ……でも、なんで? 攻撃してないよね?」


 ベビーモスは突然、斬られてもいないのに地面に倒れ伏してしまいます。

 痙攣するように泡を吹いて、リン様はそれを確認すると、刃を伸ばして首を一刀両断します。


「リン様はずっと、全員に攻撃していますよ」

「? どうやって?」

「んー……まぁ。言ってもいいとは思いますが、自分で考えても分かると思いますよ」

「えー」


 といって不満そうにする皆さんですが、これしきのことは見抜けるようになってもらいたいところですので。

 安易に何もかもを教えるというわけにはまいりません。

 ちなみにこの戦法は私もやられました。

 ……これは初見殺しもいいところですし、少し難しいと思いますが……答えは画面に映し出されているので、あとはいつ気付くか。それだけですね。

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