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第十三話 不完全な魔法



 ――ギルドには闘技場のような場所があり、リン様の権限でそこを貸切ることにしました。


「……なぁ、ほんとにいいのか? 三人がかりなんてよぉ」

「構いません。むしろそれくらいしないと、相手になりませんよ」

「……っ、このッ」


 そうやって挑発してやると、アレクくんはたやすく乗っかってくれます。扱いやすくて助かります。

 さて、同年代との初めての試合ですし……殺さないように、私は手加減できるんでしょう?


「……ルールは、私が続行不可能と判断した場合。もしくは相手が気絶、降参した場合に終了すること」

「ええ、問題ありません」

「ああ、こっちもだぜ!」


 お互いに距離を取り、武器を構える。

 私は予備武器である直剣を引き抜いて、右腕を後ろに引いて剣先を相手に向ける。弓を構えるように左手も向けて、戦闘態勢に入る。


「――はじめっ」


「――【光速移動】ッ」


 先手必勝。

 私はトップスピードで駆け抜け、一気に距離を詰める。


「まずは、前衛から」

「な、マジかよッ」


 首を切断するつもりで横薙ぎに剣を振るいますが、その直前でアリスさんの短剣で防がれる。動きを封じられた私は、マキアさんの魔法――【ストーンバレット】によって回避を選択させられる。


「助かった!」

「別にーこれくらいー――ッ」

「油断しない二人とも! あの人はかなり速いよ!!」


 だらだらと話しているアリスさんに向けて、【光線】を放ったのですが土の壁で防がれてしまいます。

 殺さないように威力を絞っているとはいえ、彼女たちの連携……それにマキアさんの魔法の熟練度は本当に開花したばかりとは思えませんね。

 まあ、狙うべきはアレクくんでもなく、アリスさんを崩せば一気にその連携は崩れそうですね。小難しそうなところが苦手なアレクくんの補佐――その役割を担っているアリスさんを潰せば、マキアさんは必然的にアレクくんのサポートに回らなければならなくなる。


「――【光の槍】」


 私は開いている左手に槍を顕現させて、変則的な構えを取りアリスさんに狙いを定める。


「うー……【ウィンドヴェール】」

「へえ……あなたもそこそこな魔法を使いますね」


  投擲を警戒して、風の膜をその身にまといその身を守る。

 私は全身に魔力を回して、【光速移動】で距離を詰める――ふりをして、上空に跳躍し、腕に魔力を一気にすべて集中させる。


「【閃光】」

「――ッ!?」


 そこで注目を集めたところで光を放ち目を潰すと、全員が簡単に引っ掛かって……私は着地をして、槍を一突きし【ウィンドヴェール】を剥がすと、アリスさんの鳩尾を思い切り蹴飛ばして、壁に叩きつける。


「――アリス!」


 アレクくんが見えないまま私に斬りかかろうとしてきますが、バレバレな動きで私はひょいとその身でかわすと、足をひっかけてお腹を踏みつける。


「がはっ!」


 苦しそうに悶えますが、私はさらに力を込めて行動不能にまで追い込もうとしますが……「【ストーンバレット】!」と声が響いたので、上方に回避し、岩の弾がやってきた方向を見据える。


「……っ」


 杖を構えて、気丈にこちらを見ている。

 とっくに視界は回復しているようで、その周囲には岩の弾が宙に浮いています。


「いっけぇぇぇ!!」

「……【光の盾】」


 息を切らしながら、倍まで数を増やして私に一斉投射しますが……私はそれを簡単に防ぐ。【光の盾】は鉄壁です。消費もそれなりに激しいですが、それは二年前の話。

 魔力も潤沢になり、そして未だにその貯蔵量は増え続けている。

 まだ本来の私ではない……ということです。


 ともあれ、そんな私の魔力をそれなり(・・・・)に込めた防御魔法です。

 たかが岩の弾くらい防げて当然と言えるでしょう。


「そ、そんな……で、でもまだ――っ」

「……?」


 着地と同時に足場代わりにしたアレクくんを気絶させておき、ただ一人となったマキアさんは懐から……強烈な気配を発する短剣を取り出します。

 なにか、嫌な――いえ、好ましい気配? がします。

 ですが、敵と考えたら嫌な予感がして、私は使わないと決めていた【光の剣】を作り出しその場に構えます。


「――【限定起動:土塊の魔水晶】」


 そう呟いた瞬間、マキアさんから大量の魔力を感じられました。

 しかし当の本人であるマキアさんは冷や汗を流して、息苦しそうにしています。これから、なにが起こるのか――それが気になった私はすきだらけな彼女を放っておきます。


「――【ストーン、バレット】」


 彼女は、再び岩の弾丸を出現させますが……今度は様子がおかしいです。

 十は生成した岩を、なぜか一つにまとめ上げ……槍の形状へと変貌します。


「収束、完了……【アイアンスピアー】!!」

「な――」


 ぎゅるぎゅると回転を始め、岩から金属――鉄に変わり、私へと襲い掛かってくる。

 周囲の空気を巻き込み、炸裂させていくその鉄の槍は地面を破壊していき、私に迫っている。

 その魔力量と威力を瞬時に計算し、私は周囲の景色が遅くなっていくことを自覚していく。……【光速思考】。久しぶりに使いましたが、やはりこれは魔力というより脳への負担が半端ではないですね。

 その分、強力ではありますが。


「さて……」


 今の私にあれを防ぐ術はないでしょう。

 【光の盾】を連続で並べればあるいは――といった感じですが、そこまですると建物が持たないでしょう。

 なので、これをはじき返して、上空へと吹き飛ばす必要があります。


「はぁ……あれ、疲れるんですが」


 仕方ないです。

 私は全ての魔法を解除すると、全魔力を消費する勢いで……ある魔法を使おうとする。


「くっ――」


 しかし、それは形にはならずただの輪郭がぼやけた【光の盾】にしかなりませんが……今はこれでいいでしょう。

 まだ名前を付けることもできない、この不完全な魔法を【アイアンスピア―】に向けて、……受け止める。


「う、ぁ……アアアア――!!」


 そのまま跳ね返そうとする魔法を無理やり抑え込み、そのまま上空に向けようと必死に腕を動かす。

 すでにマキアさんは気絶しており、その場から動くことはできいないでしょう。


「――――ッッ!!」


 なんとか、上空に弾くことに成功し……爆発の衝撃で地面に叩きつけられながら、私は魔力切れの症状である頭痛を感じ、そのまま地面に倒れ伏すのでした。

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