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閑話 新人冒険者



 ――わたしの名前は、マキア。つい先日魔法開花の儀を終えて成人となった村娘。

 今日は、幼なじみたちと一緒に有名な冒険者が利用しているっていうギルドに来ています!

 わたし含め、村の全員の憧れである冒険者。それも『英雄級』ともなれば、興奮ものなのだ。もし、会えたら……なんて妄想もしてしまう。


「ねねっ、アリス。もし『氷上の妖精』とか『絶姫』とか『剛腕演武』なんて有名人に会ったらどうする!?」

「えーどうだろー……サインとか~?」

「え~もったいなくない? アレンは?」

「オレは断然、弟子入りだな! そんな機会滅多にないだろうし!!」

「だよねえ……」


 みんな夢がないな~わたしなら、きっと今までの功績とかそういうのを聞きたいな~。


 なんておしゃべりしながら、ギルドの前まできたのだけど……なんかすごく威圧感が半端じゃない。

 まるで、昔村に襲ってきた魔物の群れを見たときみたいに体が知らず知らずのうちに振るえてしまっている。


「お、おい……やべえぞ。何がとは言えねえけど、やべえ」

「そーだねー……今日はやめとくー?」

「っ、いいえ! こんなことでくじけたらだめだよ!」


 そう二人とわたしを奮い立たせて、意気揚々と扉を開いて一気に視線を浴びるんだけど……思ったより、注目されていないというか……空気としては外から感じたほど、重くはない。

 どころか、祭りの前みたいな静けさすら感じる。

 屈強そうな戦士とか、魔法使い……重そうな鎧を見事に着こなしている騎士――はてには、街中を歩くような恰好をしている銀髪の女の人とか……!?

 え!? あれ、『氷上の妖精』の二つ名を持っているリングベル・フィーアス様だよね!? まさか本当に会えるとは思えなかった!!


「うっ……」


 けどその喜びはすぐに打ち砕かれる。

 なにせ、こんなにも静かな理由を知ってしまったのだから。


「…………」


 すごく、じぃーっとこちらを観察してくる視線があるからだ。

 まるでこれから起こることを予見して、それを楽しもうとしている『絶対的強者』の視線。思わず、体が震えて歯をうまくかみ合わせることができない。


「あ、ああぁ……」

「ん……? どうしましたか、ほら。新人ですよ、皆さん。こういうのって一度締めたりするものではないのですか?」


 異変に気付いたその人――栗色の髪に、綺麗な翡翠色の瞳を持った女の子はこちらを見て、そんな物騒なことを呟いています。

 見た目は、十歳かそこらの幼女なのに……どうしてか、強大な魔物に見えて仕方ない。


「うっ……な、なにビビってんだよ、俺!?」

「うー……怖いー」


 他の二人も似たような反応をしてる。


「はあ、やっぱり所詮は創作ですね。現実で起こるはずもない、ですね」


 そういって、興味を失ったのかわたしたちから視線を外しますが……そこへ、先程見かけた『氷上の妖精』様が近づいていきます。


「お待たせディーリヤ。というかなにしてるの?」

「いえ、ただの観察です。私みたいな感じの人が入ってくると、どうなるのか見てただけです」

「……それは、ディーリヤがいるから無理だね」

「え?」

「ん? だって、すごく注目されてるでしょ?」

「ああ……それもそうですね」


「っぷはぁ! ……はあ、はあ」


 そうしてわたしたちはまともに息を吸うことができるようになります。

 必死に空気をかき集めて、その場にへたり込んでしまう。

 それを見られてたのか、『氷上の妖精』様は栗色の少女――ディーリヤと呼ばれていた少女に向けて、わたしたちに謝るように指示します。


「え、どうしてです? 私はなにもしてないですよ?」

「……それだけ威圧しておいて?」

「ん、と……どこをどうみたら威圧しているんですか? 私の体をよく見てください」


 確かに見た目はかわいらしい少女だけども!! その魔力? オーラ? 的なものが溢れて、怖いんですよ!


「……とにかく、謝ってきて」

「はぁい」


 といって、こちらに駆け寄ってとりあえず手をさし伸ばしてくる。

 その目は、こちらを歯牙にもかけていないようで……ほんとうに興味もなさそうな様子で、遠目から見ているときよりも恐怖を感じました。



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