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第十一話 月日の流れと成長



 ――時は流れて、二年と少し。


 私はすっかり勇者として周知となり、どこを歩いても人に群がられ、サインなんかをねだられる有名人となってしまいました。

 けれど、そのどれもが空虚なものに感じ取れてしまい……私はお人形のように受け答えするだけの、哀れな勇者――





 を、演じているにすぎないんですけどね。

 だって、何を悲しむ必要があるのですか? 兄さんから、記憶はたしかになくなっていました。ですが、それはいろんな解決策があります。魔法で取り戻したりなど、最悪記憶が戻らなくたっていいんです。

 だって、その人が兄さんなことには変わりありませんし。


「ディーリヤ」

「はいリン様」


 二年も経って、まだ成人も、魔法開花の儀も行っていない年齢ですが……すっかり背も伸びて、見上げることしかできなかったリン様とも少しは並べるように、


「ディーリヤは、変わらないね」

「……そう、ですね」


 は、ならなかったですが、精神的にも魔力的にもすっかり大人顔負けレベルには成長することができました。

 実力で言っても、少しは並べるようにはなったんですよ? 未だに勝ち星を取ったことは少ないですけど。


「今日は、ギルドに行っていつもの情報の進捗確認と、依頼の受理」

「分かりました。では、さっそく向かいましょう」


 そして今の私は、国の勇者であり、ギルドに所属する冒険者として魔物討伐を生業としています。

 ……まあ、正式に登録しているわけではありませんが。

 高ランクの冒険者であるリン様――リングベル・フィーアスの付き添いとしてですが。


「もうすぐ成人だしね。そろそろギルドの空気にも慣れておかないと」

「そうですね」


 ディバルト公爵家の失脚により、私は貴族としての地位は失い……唯一の知り合いであるリン様に保護された形と表向きにはなっています。

 裏事情も承知のうえで預かってくれるリン様には……多少、特別扱いしてもバチは当たらないでしょう。

 そうですね。……兄さんに二人きりで話していても、許す……かもしれません。


「行こ」


***


 王都にある冒険者ギルドは比較的、治安は悪くないそうですが――それでも荒くれ者は後を絶たず、とくに女性、子どもということで悪目立ちするかもしれないと警告されませが……そこらへんにいる冒険者風情に、この私をどうこうすることはできないでしょう。

 なにせ、今の私は……


「ここ。私は受付に行ってくるから、ディーリヤはおとなしくして待ってて」

「……あそこの席に座っています」

「うん」


 普通、冒険者は依頼表を持って活動すると聞いているのですが……リン様クラスにもなれば、受付にいって『指名依頼』、もしくはランクに合った依頼を探すしかないそうです。

 まあ、今回は私に合わせて少し危険度の低い魔物を選んでくださるそうです。


「ん……」


 しかし、どうも慣れませんね。他人からの興味というものは。

 疑問と、嘲りと、……あとはたぶん魅力的か、でしょうか。リン様と入ってきたという時点で、知り合いということは確定。そして、まだ成人もしてなさそうな子どもの容姿。

 そして、……実力。

 ここでは、実力が物を言う。

 毎日、飽きるほど血と血の抗争を繰り返している冒険者ですから……さぞや、自分の目と腕には自信があるんでしょう。


 きっと、彼らの目にはどんな魔物が映っているんでしょうね? 中には彼我の戦力差を計ることのできない新人(・・)もいるようですが、仲間に窘められています。

 ……つまらないですね。

 兄さんの前世の書物にあった、『テンプレ』というんでしたっけ? こういった場所に来れば必ず発生するものと知っていたのですが……やはり、物語の中でしか起こりえませんか。


 と、そんなことを思っているときです。

 ギルドの外から、若そうな声が聞こえてくるのは。三人ほどでしょうか。……そして聞こえてくる内容からして、今から冒険者登録をする。


 つまり、成人したての、ド新人です。

 なぜか手間取っているリン様を待つのにも退屈していたので、暇つぶしに本当の子どもと新人が組み合わさるとどうなるのか観察してみましょう。

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