閑話 王として
――我はこの国の王として、国を守らなければならない。
しかし……これはあまりにも、強力すぎる。一国が保有していい戦力ではない。
「で、どうでしょう? この力をこの国に向けて使わない。そして、魔族からの脅威に立ち向かう……その代わりにといってはなんですが、色々と便宜を図ってほしいのです」
「……少し、考えさせてくれ」
その女――ディーリヤと名乗る、ディバルトの娘は今代の勇者だった。
それだけならば、まだ喜ばしいことだっただろう。……しかし、勇者の力を持ったのが、このイカれたブラコンだということに、我は危惧している。
突然、王城に忍び込み公務中だった我を攫い……さらには、訓練場で『光魔法』とやらを見せつけてきた。
それは、勇者の力、英雄の証と言われても納得できる力だった。
「で、ここにですね、魔族の頭があるじゃないですか」
「――ッ! なに!?」
「ええ。つい先日のことです……私の住む屋敷にこの魔族が現れたんですよ」
「……それを、お主一人で撃退したと」
「そうですね。これでも、まだ信じられませんか?」
「いや、お主は確かに今代の勇者なのだろう……だからこそ不思議なのだ。どうして、我に――『親を排除するのを手伝え』などと申すのだ」
「ああ、それはですね――兄さんと、幸せになるためですよ」
ディーリヤ――いや、勇者は語る。
兄は素晴らしき人格者だと。
兄は、この世で最も偉大な存在であると。
兄は不遇な扱いを受けており、それは改善されることはないだろう。
「つまり、……なんだ。親を魔族と繋がっていると証明するために、勇者を国で認めて、自由に活動できるようになりたいと」
「はい。さすがは国王ですね。察しがよろしいようで」
「…………」
呆れてものも言えなかった。
兄との生活を送るために、一国の王の権力を利用しようなどと……頭がどうかしているとしか思えない。
しかし、この力を国のために使える……それはどんな兵力よりも得難いものであると、冷徹な我が提案する。
確かに、一歩間違えればこちらに牙が向くだろう……しかし、そのリスクを背負ってでも、勇者という存在はほしい。
「よかろう。……近いうちに、場を整える」
「ということは……」
「ああ。その力、思う存分利用させてもらおう」
そうして、我と勇者による密かな取り決めが行われていったのだった。




