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詩集  作者: dischingguissxxhh
4/6

『聖人奇跡だとは思わなかった』

灰の体、ハイファイ、体、のいい

拝を能くアイス、スティール。

野、月の、二月の、俺の。

灰の欲望

二月の二つの名をつけて

名前をつけてお前に送る



聖人の、とある奇跡の

鈍色に光る御骨の同一人物一〇三人目。

アイス棒の呼ぶ宝石なんで?

ミディオカーな特産品まで気持ちよくはならないだろう。



ていよく盗んんでアイススティール

c、f、doomにはまって落ちろ

p、s、お前に送るは添加

キャビンに提がった干し肉どうぞ。



雑誌を読まんでも

知らんだろうに雑誌めくるかよ

献花よ献花よあくまでお前にささげたつもりよ

マッチポンプポンプ水。



アーキテクトにつつんで殺す。

咥えたせんべいワココと鳴らす

今しがた牛を解いた新鮮なシャツ

流し目に線路が抜けて曰く『錆います』

牧歌を国を読まんでも

知らんだろうにめくるか雑誌を?



殴るぞ

構造にくるんで殴るぞ

俺が持ち得なかった狂気、皿、拳銃そしてよほど疲れたように見えたのだろう。すべてが馬鹿らしく見えると同時にすべてが色づいて見え始めた。



はあ

光彩の加減じゃなくて本当に行動だった

あなたの動きについてくる

あなたがなにをどのように変えてしまったのかを!

本当に紫だった



女人は血けぶりハイウェイ馳せた

呉の港で悪魔に会った

太陽に、もう、太陽に倒れなくていいんだよ。

だって僕も聖人奇跡だとは思わなかったからさ。



『あなたに会いたい石化して』

社会死と呼ばれる状態がある

誰が見ても明らかに死んでいると言うだろう

プロジェクタイルに伏している

そんなあなたを街路で見つけた伏していたあなた

誰もが見てもいないしアーケード通り過ぎていた

あなたが神だ状況に化けて私を呼んでいるのだ

私とあなたの二人間あなたは死んでいた。

頭はやぶれ身は飛んでいた流れる血は何条も風に沿った

私はあなたを苔で拭き浄めた

誰もが私たちを見なくなった

かれらは死を見ないようにしている

それを私は身につまされる思いで通り過ぎ去られた

周りは暮れるに追われて逃げ出した

私はあなたの身を浄めるので精一杯だった

苔はくすんで灰になった

石化の予兆がやってきたと思った

あなたは硬直して石化を待った

私は泣いた。私はあなたに石化してほしくなかった。石化が鍵だから。石化だけがあなたと私をつなぐ鍵だから。つながりは言を断って関係を切り裂いた。石化してしまったら会ってしまう。私は気づきたくなかった。

プロジェクタイルは吐唾の痕だった。道路の灰が青くなった。つばは体を貫いてプロジェクタイルになって透き通っていった。

誰も声を上げなかった

誰も拾い上げなかった

誰も石化に気がつかなかった

誰も死者に気づかなかった

誰もが通り過ぎてあなたと私をあとにした

誰もが!

あの頃の私へ: ごめんね。ついにとうとうこんどこそはと心待ちにはしてくれてたのね。

声を上げてよペトリファイドを

石化のあなたを拾ってよ

誰もができなかったことを

土にけぶって終わりだなんて!

言わないでほしい関係を切らないでほしい気づかなくていいあなたに会いたい!

あなたに会いたい!

石化して

もうあなたに会いたい私なの

誰もが私たちを知らんぷりしていった

でも? それと同時に私たちはだれにも気づかれず会うことができるようになった

石化は鍵だから。



道路の灰は青くなった

何条もの血は風に沿った

匂いは緩やかに光の方へ

吐唾と同時に弾痕がそっくり浮き上がった

身は裂け頭は剥がれ千歳飴のような四肢はツートーンに沈んだ

あなたが私の宗教だったのね

誰もが通り過ぎて行ったけど、私だけがあなたを見つけられたのね。

社会死と呼ばれる状態がある。誰が見てもかれは明らかに死んでいると言うだろう。



『アイスクリーム』

落ち着いたかわからないけど

落ち着いたら言うつもりなんだ



アイスクリーム夏なら溶けてて向こうに座ってたあなたの顔が透けて見えたのに

ボクは見なかった

見ればよかったかな!



侵害したい

薄幸なあなたを

侵害したい

どこを見ているかわからないあなたを

いっしょに見に行きたい

水族館に透かした魚を



落ち着いたら言うつもりだったんだけど

もう言えないけど

言うね。



侵害したい

あ、時間切れだね

侵害したい

ねえ、いつ?

知ってるの?

どうでもいいけど足どけてよ



チキチキ、チキチキ、チキチキチキ

落ち着いてんのかわからないけど

自分がいまなにしてるかわかってないけど

チキチキ、チキチキ、チキチキチキ。



アイスクリーム夏なら溶けてて向こうが透けて見えたのに

あなたが見えたのに

海兵さん、係留にはじけて向こうが見えたのに

見ればよかったかな?

見たかったのに

見ればよかったのに!



『セラピスト』

ぼくは絶え間なく絶え間なく絶え間なく

ドアを開け続けて気づき続けている

ぼくはぼくの庭の中でセラピスト



あなたはいとまなくいとまなくいとまなく

向かいのドアを開け続けて気づき続けている

あなたはあなたの庭の中で

あなたのセラピスト



絶え間なく気づいた

いとまなく気づいた

それらはすべて閃光とした

消えない昼間の閃光としていた

なんども髪を振り乱した

なんども叫ぶのを聞いた

ぼくは早くぼくたちふたりが気づいてしまえばいいと言った

あなたは叫んで聞かなかった



あなたはあなたの

ぼくはぼくの

箱庭の中で

あなたはセラピスト

ぼくはセラピスト

おたがいがおたがいに気づいたことがあれば言おう

おたがいに気づこう

おたがいがおたがいに



気づきを感じないあくまで庭の中で

ぼくたちふたりは開けていた

ビニールの壁とパイプのドアを

紙のレンガとプラスチックのちょうつがいを

手をかけ手をかけ手をかけた

ぼくはセラピスト

あなたはあなたのセラピスト



『涙の弾道に倒れた』

涙の弾道に倒れたひとを思いながら冷たいシャワーのしたで考えこんだ

すりガラスに映るきみの手に

笑いかけた

すりガラスに映るきみの目に

思ってないことは言えないと思いながら怖くなった

涙の弾道に倒れた床の上で一番低いところにいると思いながらひとを待った

すりガラスにつけられた手に

拉致監禁の記憶を振り返った

すりガラスに映るきみの目に

絶えない恫喝を思い返した

きみはシャワールームの中でひとにレイプされていたのだ

ぼくは一番低いところにいながらそれを見ていた

思いだした

他人に、思ってもないことは言えないか、言ったとしても嘘くさくなる

自分がミーハーであることを思い知らされるようで喉がつかえて苦しくなった

きみの目はおそらく深く暗い壺になっているはずだ

僕はそれを見るたびに底なしの天を見つめるようで恥ずかしかった

きみの目を見つめることが失礼だと思うようになってしまったのはそれからだった

涙の弾道に倒れたこと

手をついたのはバランスを崩さないためについたのだろう

思ってもないことは言えない

言葉を惜しむようになったのはそれからだった

そのうちなんにも話せなくなった

おしの子供が歩くと言われた

僕は相手のせいにしながら内心自分が得てきた経験によって対話をはなからあきらめているということを認め始めていた

認め始めてはいたがそれをよく考え返して自分の悪を認めることをしたくなかった

認めることはなによりも苦しいことだった

よし認めたとしてもそれからどうすればいいかわからなかったし行動できなかった

すべては自分の怠惰のために自分がなにもしないのだと思ったが、それでも行動できなかった

思うばかりで話さなかったし手を動かさなかったし頭を動かさなかった

自分の中に怠惰を認めたが、認めたことでなにか革命が起こったわけではなかった

気づいたことで有能になれたわけでも、行動するようにもならなかった

疑問に思う余地すらない

涙の弾道に倒れた

涙の弾道が体をつらぬいた

涙の弾道に伏して自分が一番低いところにあることを思った

思いはしたがそこで止まってしまった



『うぐいす』

指の腹にはキーボードのほこりばかりがいっぱい

ソッブ、ソッブ

手のひらにうぐいすを寝かした

うぐいすは死んでいた

ソッブソッブと鳴く声すら聞けなかった

うぐいすに塗ったつばは乾いていた

塗りなおすことすらしないで眺めていた

うぐいすは担架に運ばれ霧の中

誰に運ばれ霧の中

誰に運ばれてんのだろ

そもそもどこへ



指の腹にはキーボードのほこりばかりがいっぱい

苔で手を洗った

ついでにうぐいすも拭いた

うぐいすは豆色になって光った

あのとき拭いた苔が担架の車輪をすべらせた

拭かなければよかった

霧の中にんじん色の行灯が遠くになってぬるくなるまで

うぐいすは運ばれていった



手のひらに乗ったうぐいすちゃんは大きなほこりになった

僕の大きなほこりとなった

とりあえず休日になったから全部忘れようと思った

そしてまたはじめからボタンを押してまたまわりのひんしゅくを買おうと思った

全部思って全部しなかった

うぐいすちゃんうぐいすちゃんは

怒られてもなにもいわないんだねえ

でもいってもいいかい

なんかいっておくれよう

もう冷たいんだから

いまならいえるようぐいすきなの

おれが鳴いてもひとが見ててもよ



うぐいすの代わりに鳴けたらよかったのに

窓からひとに見られても鳴けばよかったといまさら思う(思うだけでなにもしない)

ケッケッケッ

ソッブソッブソッブ

ひたひたひらり

霧の中



『悪魔のあかい』

悪魔はあかいいろをしていない

だってそれはわかりやすいものに泣くものだから

恥じたりするものだから

だから悪魔はあかいいろをしていない


こないだ呉の港であったよ悪魔に

なんかさあかくはなかったよ

いろはなかったよ

ナイロンファーのもふもふ毛布をかぶってて

汚いブーツをはいてたよ

しかもそれが夏だってんだから

それからずっと僕は悪魔と海を眺めてた気がする

悪魔はなにも喋らなかった

海を見ていればそれでよかった

ずっとみていたけれど

波の反射光に焼けた網膜が悪魔をあかくみせた

それで、僕は悪魔に恥ずかしいのって聞いたら

うん恥ずかしいよって答えてくれた

高くて変な汚いフォルテの声だった

変な声だねって僕が言ったら

もっとあかくなった気がした

それを言ったので僕は恥じた

悪魔は言ったので僕は恥じた; おれじつは悪魔なんかじゃなくてただの浮浪者なんだよ

僕たちふたりは恥じた

でも僕は悪魔が悪魔であることを信じた

悪魔は笑った

笑いながら泣いていた

悪魔は投げやりになっていた

僕たちふたりでわかりやすいものに泣くものだから

ついに日が落ちて人がはけた

悪魔さんまたあえますか

もうあえないよ

じゃあ手を握って合わせてねがっていいですか

いいんだよそんなことしなくても

でも、そうしないと悪魔さんとあえないことを乗り越えられません

じゃあいっしょにねがおうか

はいねがいます

その夜に、初めて僕たち以外の人が本当にいなくなればいいとふたりでねがった


悪魔はあかいいろをしていない

恥も外聞もなければあかくなりようがない



『映画』

ウォークマンを片手にたずさえて、ザ・スミスとかデュラン・デュランを流しながら、それを味噌汁に入ってるしじみぐらい円く小さい貧相なヘッドホンでいっしょうけんめい聴いて歩いてる後輩と待ち合わせをした

目が合うと、ファッションは大人のたしなみですよねそうですよねセンパイとかなんとか声をかけてきた

どうやらウォークマンをファッションでかけているらしい

スミスとかDDを聴くのがファッションかと聞くと

そうですそうなんですとかなんとか適当なことを言っていた

甚平にヒッピーハット、地下足袋に雪駄

バカである

浮浪者みたいである

ただ人はかれを見なかった

おれの思い過ごしかそうじゃないかはどうでもいい

おれと後輩の恥ずかしい姿を見られなければ、あるいは見られたとしても問題にしなければそれでよかった

ストライキがあーだこーだ

だとか

まるで奇特なことじゃない

だとか

それで有名な曲しか聴かないのだからちゃんちゃらおかしい

おい映画見に行くかとおれが問うと

はいいきますでも冷たい飲み物がいいなあとか返してきたこちらをちらりとも見ないで

お前昨日なにしてたとおれが雑談に花を咲かせようとした

テレ東見てましたずっと一日中 劇団の声優の番組やってたんですよ映画の声優

おれはテレビを見ないのでなにも返せなかったし、返せないなりに気の利いたひとことをくれてやることもできなかった

あ、この曲好き

お前なに聴いてんだ今度はなんだよ

彼女が昏睡状態なんだ……もう目を覚まさないかもしれない……真剣なんだ真剣なんだよ……

それか

映画館についた

デパート付きのシアターだ

中学生のデートコースに定番であった

流れる映画は都会の周回遅れだったはずである

おれの思い違いかそうじゃないかはどうでもいい

おれが問題にしたいのはそのシアターでおれとおれの後輩が見れるような映画が流れているかどうかだった

お名前控えさせていただいてもよろしいでしょうか

本当にそんな手続きあったっけ?

映画を見るだけなのに?

おれの記憶違いかそうじゃないかはどうでもよかった

どんな映画かは忘れてしまった

ジャン=ピエール・モッキーの短編映画だったような気もする

なぜ田舎のシアターくんだりでそんな映画が流れているかはわからなかったし、そもそもモッキーではなかったような気もする

ただ後輩の泣く顔がおもしろすぎて映画館の中で大きな笑い声をあげてまわりのひんしゅくを買ってしまったことだけを思い返している



『ヨハン/フレッシュカラードマン』

夜半 窓外へ肉色の鳴き声が落ち込んできて

用足しへ 壁に手をついた

背後は暗く

鼻先も震えた

だである調の古本にいやらしさをおぼえ

ありきたりな感情の発露によって繰り出される感想を

恥ずかしいとさえ思った

肉色の正体はおれの肉だった

肉のような声

背後の寒気は冗談で済んだ

眠りは浅く 朝まで携帯をいじった

明日も早いのに いつまでも月のクレーターの反射光を知っていようとしている



『俺は逃げ出したのか』

俺は逃げ出したのか

占い師はああ言うが

俺は逃げ出したのか本当に

雉も鳴がずば

俺が撃った

雉も鳴がずば

俺も撃たなかった

俺は逃げ出したのか

星に占いああ言いましたが

俺は逃げ出したのか

俺は逃げ出したのか本当に

濡れた羽ばたき 乾いた振戦

俺は逃げ出したのか

俺は逃げ出したのか本当に

俺は逃げ出したのか

俺は逃げ出したのか本当に


雉も鳴がずば

俺も撃った

雉も鳴がずば

俺も撃った

雉も鳴がずば

俺も撃った

雉も鳴がずば

俺も撃った


雉も鳴がずば

俺が撃った



『浜にて』

『やっぱりかわいそうだね』

そんな手で抱えられても

差し伸べるやさしさを

いとおしくなんておもったりなんかしないんだからな

毛虫にも似た

ひとの踊りを知った

座って知った

体育座り

『もうすこし待ってみよっか近くまで来てるかもしれないから待って』

ひとのいる海浜公園を待った

平らかとおもったらもっとでこぼこしていて

ずっと広い

毛虫にもにた

ひとの踊りをみた

座ってみた

遠くまで

『やっぱり行こっか』

待てないのはあなたじゃなかったんだ知った

『どうしても待てない』

ひとのやさしさを知った

血の悪いのを知った

たちがずるいのも知った

ちょっとそこまで



『沼の色』

評論のところはななめよみ

するけど面白いところはそこなんだよな

寺で泣く

犬と白鳥と知って嗅いだ

でも聴けたからよかったね。

寺で泣く、寺で泣く

でも白鳥が聴けたからよかったね

不安になるけど種明かし

するけど本当に面白いところはそこなんだよな

パンをちぎって渡し鳥

犬を嗅いで

渡っていくところを見る

沼を嗅いで

鳥を知る

鴨も忘れないでね沼に浮いてると

白鳥の下位互換に見えて仕方がなかった

奥に行くと鯉がいるんだよな

あああそこですね

本当はどこだかわかってないんだよなあ

パンをちぎって渡り鳥

よってくるか逃げていくか

犬を嗅ぎなおす

鳥を知る

白鳥が渡っていくのを見る

遠くに渡っていく、渡っていく

犬がいるのを嗅ぐ

鴨が浮いているのを知る

ずっと奥にある気がするから知りたい、知る

泣く、泣く

いつの間にか泣きやんでいるのを、知る

評論のところはよみ飛ばし

飛ばしはすれど

本当に面白いところはそこなんだよなあと思いながら

飛んでいく白鳥、嗅いでいる犬、浮いている鴨、流れていく鯉

よく見てみるとそんな色がたくさんあるのを知る

また泣いた

白鳥も泣いたのかもしれない

知っていたから泣いた

もう文芸雑誌はとらない


耳と言ったら耳が来る

鼻と言ったら鼻が知る

目でと言ったら目だけ後ろ向いて

口が言ったら

器官が優先して知ろうとした

だから雑誌はとらなくなった

隠せない嘘といやらしい白鳥のあこがれを私は知らないフリした



『夏の誕生日』

あなたメガネ外してよ

ほんとの笑顔がみたいだけ

今日もトイレにこもっては

過敏性腸症候群とのワーストバウト

夏の盛りにノーウォーさけぶテレビ消しては

下痢に憂いて誕生日なんか迎えられない

夏の生まれは元気な子に育つんだね

夏の生まれは陽気な子に育つんだね

夏の生まれは陰気なことなくて

夏の生まれはガタイもでっかくて

夏の生まれは風呂にこもったりなんかしない

ソーセージの先を指で押し戻しては

夏の誕生日になる

(駅を下っていけばおかしいひとは増えるんじゃないんですか)



『夏の誕生日二』

どうやら十一曲組のアルバムにはいいアルバムが多いのかなとか思いながら古書店を探る

雑誌をめくってはかごにつっこんでピンク・ムーンとイン・ザ・エアロプレーン・オーバー・ザ・シーとザ・スミスのファーストをみとめる

こんなに有名なものがこんなところで見つかるなんて

それらにはフィラーもないし自分が離れる瞬間もない(暴言の角に解釈もないと言ったって騒音は怒鳴ってこないから嫌いではないんだだから窓の外で工事してるのに僕はいつまでもいられる)

思いもしなかったなと思いつついい誕生日になったななんて帰る

駅には少しおかしい人がいて

日本はダメになったなダメなんだよ警察を呼びなさいねとか傘を振り回して叫んでいた

ちょうど夏の盛りだったけど背後がぞっとしなかったね

今朝テレビの終戦特集を見たばかりだった

おれのすることには関係ないね

おれの頭の中には関係ないね

だってそれ全部

おれの肉じゃないもの

テレビも新聞もラジオもおれの近くで起こってることじゃないから

おれはティーシャツをあおいで友達と会う

おれは早速買ったCDをプレーヤーに突っ込んで味噌汁のしじみみたいにちっちゃなヘッドホンを耳にねじ込む

そして片耳で友達と話しながら繰り返しの鑑賞耐久性にすぐれたナンバーをかける

いい誕生日になったな



『駅前の本屋が塾になった』

駅前の本屋が塾になった

一八禁コーナー自習室

駅前の本屋が塾になった

エロ本コーナーは

自習室


うぶなしせんみつめしかんするおれはじしゅうしつで


駅前の本屋は塾になった

一八禁コーナー自習室

駅前の本屋は塾になった

エロ本コーナーは

自習室


すわるあのこうでのとけいはずすところ


見る


見る


見る


見る


うぶなしせんあのこみつめしかんするじしゅうしつで



『戦士男の時計台十二時』

戦士男の時計台十二時

立ったまま死んで灯台と名を受けた

これらのようなろくでなしにならないようにと一番注意していたはずなのに

なん回も死んだかれの骨が曳かれ稜線を描き太陽の登るほどだった

立ったまま死んで灯台と名を受けた

『ああ』はなんのために?

かれの骨山に太陽が登るとき

誰も追い剥いではならなかったろうに

戦士男の時計台十二時

立ったまま死んで灯台と名を受けた



『マラソン』

あの曲は初めて俺を泣かせてくれた

どうしてそんな曲がかけるのだろう

真に迫ったことなんて一度だってなかったのに

どうしてそんな曲がかけるのだろう

俺が今まで選んできた行動だけが俺をまどわす


帰る場所がわからないと泣く葉っぱたちに

ずっとマラソンしてていいんだよと俺はいう

どうしてあんな曲がかけるのだろう

真に迫ったことなんて一度だってなかったのに


葉っぱは赤黄色で太陽から降ってきたのだろう

だから枯れ木はあんな顔をして立っていられる

ずっとマラソンしてていいんだよ


俺が今まで選んできた行動だけが俺を錯覚させる

泣いたことなんて一度だってなかった

でもモリッシーの反戦歌を知らず聴いて初めて泣いた

どうしてあんな曲がかけるのだろう


帰る方法がわからないと泣く登山家たちに

ずっとマラソンしてていいんだよと俺はいう

登山家は紫の顔して雲から降ってくるのだろう

だから帰り道がわからないと泣く

ずっとマラソンしてていいんだよと俺はいう


繰り返しに耐えうる力をもったものはそういない

二度目を聴いてなおも立ち上がらせてくれるようなもの

だからこそ知らないでも泣けるんだろう


初めて泣いた曲を葬式で流しながら難聴になっていく耳を思う

だれもが迷惑そうにしているが口には出さない通夜で死ぬ



『にじのしま』

自転車で誰よりも早く下校する小さなひとの背中をみる

このひとが輪のなかで誰よりも明るくたからかに笑ってみせ

また誰よりも先にぴんと手を挙げ誰もがわかってはいるが言わないことを言ったりするのをみる

僕はといえばそのひとを自転車で追いかけてみる

そしてそのひとがなんの恥じらいもなくT字路をはすに渡っていくところをみる

そのひとの背中はよろこんでいたようにみえる

その背中を僕に見せていたようにおもう

僕は誤解しなかったしゲンメツもとくにしなかった

しまいにはこちらが恥ずかしくなって側溝の虹を割って固まるひるをみる

虹のしまとひるのしまではどちらが太陽に映えるだろうか




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