二
『季節の名前』
冬の名前も知らないで
あなたはぼんやり歩いてる
冬の名前も知らないで
雪の港は風が強い
冬の名前も知らないで
膝皿かかげてこすい顔
冬の名前も知らないで
船はゆっくり大きな胸をする
冬の名前を見捨てては
『もう、握りしめていたシャワーヘッドも壊れてしまったよ』
冬の名前が知りたくて
あなたはずいぶん気付いてる
冬の名前は港湾だ
あなたはすっかり悦に入る
悦に入る
どうしてそんなに投げやりで
どうしてそんなに受け身の肩で
季節は全然成り立たないのに
あなたはどうしてそんな顔!
あなたは素知らぬそんな顔
『もう信仰はやめた』
信仰だと……?
なんにも知らないんだなそれとも
なんにも知らないのは俺だけか?
『眠り』
茶を飲んで少し眠った。
それから、そばをすすってまたしばらく寝入ってしまった。
起きると茶が椀を満たしている。
アレ誰かが注いだな
と思うともうまぶたが重い。
金星が見える時間にまた覚めた。
閉めたカーテンが開いていたので気づいたのである。
窓にまた、顔がうつりそうになると、
ズーン
と首、肩にゆるくあたたかい衝撃が来る。
しまいには気絶していた。
『(契り)』
一
噴水の下で
噴水と公園の下で
噴水と公園の真ん中深くで
噴水の下で僕らはトレードした。
もう二度と孤立にりんごをかじらぬように
それでもなおふたりが窮苦にあえぐとしたら
肉の家体が大きく胸を張れるように
ふたりは相互に扶けるだろう
ふたりが窮苦にあえがぬように
契りは固く交わされよう。
挙動は価値を汲んでいるでも孤立に読むでもなく
波紋のエコーでまたそれを確認する。
みんながそうしてふたりもそうしている。
それを秀でているでも劣っているでもなく
うらやむでもなくみんなは進んでいる。
ふたりも進んでいる。
(いちのいち)
トレードは鍵だ
ふたりはそれを気づかなきゃ
トレードだけが気づかせてくれる
『なんでみんなが悲しいってわかるんだ?!』
わかるんだよ
もうそうやって捉えられるようになったんだよ
おそいんだよ
二
なんでもなかったんだトレード
僕らは噴水の下でトレードした
でも事実なんにもなかったんだ
そう思いたい。
道路にりんごを投げ捨て
契りを破って
窮苦はすっかり生活に挙動にひとつひとつに入ってきた
(変わらなかったじゃないか)
結果なにも変わらなかった
『でも、僕らがえらんできた選択だけに意味が生まれるのであって、そのうえの後悔だけが僕たちを錯覚させる』
そうだったんだ
僕たちは錯覚していた
そのモアレの中にあった。
三
ふたりの血がつちけぶる石原に散開したとき
散開すれどもなめらかによってひとすじに
ひとつになって流れてほしい。
よって、肉の大地は鼓舞をしらない糾弾をしらないその顔で
たくさんのひとつがみんなして同じことを言う。
殻に契りは固く守られる。
瞬間もなく僕たちはずっと守っている。
みんながそうしている
そうしているのは僕たちだけだとおもっていたのに
僕とキミとふたりでぼくたちで
でももう発露してしまった
露呈してしまった
突然ではなく過程があった
錯覚ではない。契機があって、きざしがあった。
でもまだ終わりではないと信じている
僕たちは固く抱き合って血をひとつにした。
『餃子』
自分のセルフィッシュに過ぎることを考えていた
人生は餃子に似ている(人生は餃子に似ている)。
外側は皮、内側で肉
自分がセルフィッシュであることを考えていた。
キミに近づこうとする挙動が全部セルフィッシュ
すり鉢は指で彫って黒地を出そう
いろいろ忙しいのはわかってる
ボクが全部セルフィッシュ
ねえ、人生って餃子に似てない
外側で皮。内側は肉で
外側にボクとキミの肉の皮。内側にボクとキミの悪魔。
全部悪魔のせいにしよう
ぜんぶぜんぶあなたが悪い
街の善、聖人の善なんて振り払おう
女人の悪魔
ぜんぶあなたのせいにしよう
いつまでもいっぱいにあふれたキミの個人
どこまでもつきることなくやさぐれたボクの個人
聖人のその、不変さ!
女人のそのあくどさ
ぜんぶ悪魔のせいにしよう。
ついに聖人のためにボクは家をなくした
ついに女人のためにキミは職にあぶれた
悪魔はなんにもしない
なんにもしないそんな顔で
ぜんぶ悪魔が悪いんだ
でも悪魔だけが遠巻きに見ていて
聖人と女人なんかはまとわる息まいて
遠巻きに見ないでボクキミにとりつかないで
ネゴに確立が揺らめいて
価値の確立が揺らめいて
不労だけを忘れさせてくれる!
エゴに選択が染み込んで
時間軸に沿う不壊の選択が染み込んで
後悔だけを、ずっと覚えている
『剥がれるプライベートな顎の傷』
剥がれる
かさぶた
鏡面見るは
プライベートな顎の傷晴れ間
鏡面下ろす
傷は認知の外へ出る
傷は見えなくなる
僕は言っちゃ悪いが船は出る
僕は傷を知らない認知
かざした指はかさぶたを見る
剥がれるプライベート
プライベートを剥がしていって
コインになって追いかけてくる
言っちゃ悪いが船は出る
プライベートは置いていく
プライベートな顎の傷晴れ間
トレント言っちゃ悪いが船は出る
おれなにも知らないのに
僕が知らないとき、傷はそこにあるのか
傷は逃げていくのか
かさぶたはできるところを間違えはしないだろうか
僕が見ているとき、指は傷を見ているのだろうか
指はかさぶたを剥がしたとき僕が見ていない傷は逃げていくのか
それがきみの戻りだ
類推は耐えぬ流れにしぶく
プライベートは捨ててゆく
言っちゃ悪いが船は出る
それがあんたの戻りとしても
傷は時間を生む
逃げていくのか
傷はいやしをいやすとしても
傷はかさぶたをこやすとしたら
逃げていくのか
傷はいえぬかトレント晴れ間
時間がいやしにいやすとしても
いやしがいかんをこやすとしても
傷はいえぬかトレント晴れ間
いえぬかトレント言っちゃ悪いが
いかんが船を絶やすとしても
傷はいえぬかたよりは来ぬか
たよりがじかんを絶やすとしても
時間は来ぬかトレント言っちゃ
悪いが船は晴れ間に傷は
いえぬかトレントいかんたよりは
来ぬかいかんはトレント捨てるか
晴れ間が船をいやすとしても
船がかさぶたいやすとしても
いやしにいやしがこやすとしても
傷は出ないかトレント言っちゃ
いかんはかさぶたこやすとしても
船は出ないかトレント晴れ間
それがきみの戻りだ
逃げていくのか?
言っちゃ悪いが船は出る
プライベートは捨ててゆく
コインになって追いかけてくるおれなにも知らないのに
剥がれるかさぶた鏡面見るは
傷が認知を離れてく
かざした戻りがいやしてくれる
晴れ間の時間がこやしてくれる
剥がれる
かさぶた
鏡面
見るは
プライベートなトレント晴れ間
いやしにいやしがいやすとしても
かざした指はかさぶたを見る
『姿としてあるおんながた:コンフィーレッキーブルー』
レット・ザ・イラストレーター・フライ!
請負人は自由を手にしなければいけないし、描かれる画は飛ばなければならない。
姿としてあるすべての被依頼人をこの世にして船に漕いでいってほしい。
感謝いたします。感謝いたします!
儀式に、すべての姿としてある人間たちをも、飛んでいけ!
試みようとしてはいけない。
思おうとし、ただ思い、口に出してほしい!
すべての快適よ、すべての壊疽よ、青に飛んでいけ。
瞬間よ、瞬間よ、衝突せよ。
おんながた達はその名のもとに家をなくす。
かれらの肉体の内側は飛んでいく。
パトロンよ、かれらの支援よ!
なおも青青として育つではないか!
感謝いたします