#01 園織島
数多くの異能力者が住む園織島では超能力、魔法使い、魔術師の中から最強と言われる者が10人ずつ選ばれ順位付けされている。そして最強と言われる10人の超能力者の1人、惣野千欧は記憶喪失になっていた。
日本から1900m離れた所にぽつりと浮かぶ巨大な孤島 園織島、そこでは超能力者や魔法使いに魔術師などの他、700万人もの人々が暮らしている。
そして僕は園織島に住む第2位の超能力者――――なのらしい。
だが僕はまだ信じられない、自分が惣野千欧という超能力者だった事も…全く覚えていないんだ。
目が覚めると病院のベッドの上だった。
医者に「貴方は記憶喪失です。」なんて言われて最初はびっくりした、退院してから不安で仕方なかった。もし僕の事を知ってる人に会ったらどんな顔をすればいいのか、僕は記憶を失う前まではどんな人だったんだろう。
学校に行った時にクラスメイトになんて言おう、というかどんな人がいるんだろう。
知らなかった、知らない事がこんなにも怖いなんて…。
教室の扉の前で脚が動かなくなっていた。
まず何を喋ればいいのか、喋りかけられたら何と喋ったらいいのかを考えていた。
「皆んな、おはよう!」
扉を開けそう挨拶をした。
するとクラスの奴等が不思議そうな顔をしてこっちに振り向いた。
皆んなは黙ったまま一言も喋らない。
その雰囲気に耐えられずにっこりと微笑んでから開けた扉を閉めて、走って外に出た。
こんな事なら黙って入れば良かった…。
もう恥ずかしくて学校に戻れない、家に帰ってゆっくりしよう。
「君、学生だよね。何してるの?」
「はい…そうですけど……。」
「君、名前は?」
「惣野千欧です…」
警官の顔色が変わる。
「ッ……君、ちゃんと学校に戻りなさいよ。」
注意はされたが学校に戻る訳にはいかない。
そのまま家に帰える事になった。歩いているだけで誰もが避けているのが分かる、僕はいったい本当にどんな人だったんだろう。
急に身体がフラつく、誰かにぶつかってしまったようだ。
「痛ッ…!?」
女の人の声が聞こえた。
どうやらぶつかってしまったらしく、パーカーを着た女が座り込んでいた。謝ろうと声を出そうとした瞬間…。
「すっ…すみませんでした!」
涙目で女は謝ってきた。
「別に良いよ。前を見てなかったのは僕の方だし、僕の方こそごめん。」
すると女はキョロっとして「あんた本当に第2位?」と尋ねてきた。
僕は…第2位―――――――――この園織島にいる数多くの超能力達の中でも最強と呼ばれるfby10の第2位、そんな自覚は全くないし今も信じられないってのに……僕は第2位なんていう器じゃないんだ。
「取り敢えず助けて! 私、追われてるんです。」
追われてる? いったい誰に…助けててっどうすれば?……僕じゃどうしよう出来ないじゃないか。
女の後方から空を斬り裂く様な大きな音が聴こえた。
女の後方で何かが光った。
すると曲線を描いた光線の様な物がこっちに向かって飛んできた。
危険を感じとった僕は女を突き飛ばした。
なんとか僕達は光線を交わす事に成功した。
「奴が来た……逃げないと…。」
女は僕を置いて走り出した。向こうから歩いて来ているのは恐らく高校生だと思われる男だった。
男は僕は見てニヤリと笑った。
超能力者や魔法使いや魔術師が普通にいるのがこの島、園織島だ。
その為、犯罪の取り締まりはかなり厳重になっている場所でもあるがやはり、それでも犯罪は起きてしまう。