(5)B 2018年6月4日月曜日
(承前)
ほどなく陽子ちゃん宅に到着。陽子ちゃんが家の鍵を開けてようとした。
「あれ、開いてる」
恐る恐るドアを開いて中へ見た「?」な陽子ちゃん。何かを見つけると猛然と玄関に入り廊下の奥の方へキッと顔を向けると「ママ!」と叫んだ。
奥から陽子ちゃんママが出てきた。仕事場から戻ったばかりのようで仕事着らしいブラウスにチノ・パンツでエプロン姿だった。
「あ、来たね。肇くん。しっかり勉強していきなさい」
挨拶しようとしたら先に陽子ちゃんが怒り出した。
「ってママ、早く帰るって19時かなあって言ってたじゃない」
「陽子。せっかくあなたの彼氏が遊びに来るんだからご馳走してあげたいじゃない。早く切り上げられたからってだけだしぃ」
ちなみに陽子ちゃんも俺という親友を持ったばっかりに母親からからかわれているのだった。
陽子ママに応接間に案内されると俺はバッグの中から紙包みを取り出した。
「これ、フルーツケーキです。家で作ったんですがよければ皆さんで」
陽子ママは大喜び。
「肇くんがお菓子を作る人って伝説かと思っていたけど本当だった訳ね。これは楽しみ。じゃあ後でコーヒーを淹れてあげるからお勉強頑張ってね」
そういうとニコニコしながら応接間を出ていかれた。何回かこういう勉強会を陽子ちゃんの家でやっているので慣れたというか諦めた。俺を連れて来ないと陽子ママが色々陽子ちゃんに文句を言うらしく陽子パパは陽子ちゃんに諦めて俺を招待した方が世の中は平穏と言ったとか言わないとか。何故こうなるのかはもはや陽子ママだからとしか言いようがないだろう。
18時前にコーヒーブレイクしたらと陽子ママに言われてダイニングで陽子ママと陽子ちゃんお手製の甘みを効かせたクッキーなど頂いた。そんな休憩時間が終わって応接間に戻るとメッセで古城に今日の状況を聞いた。今日の当番責任者は吉良小夜子だったけど古城は毎日行くつもりと言っているのは聞いていた。
肇:お務めご苦労様です。
ミフユ:今日も開店休業だった。まだ2日目だからって小夜子ちゃんには話しているんだけどね。
肇:昼休みに北校舎に行ったけどあいつ、麻野くん経由の伝言でやりたいようにやると宣言してきたけど意味がわからん。
ミフユ:なるほどね。
ミフユ:で、そっちはどうかな。陽子ママには可愛がられてるんでしょ?
肇:というよりもてあそばれてるというのが正しい評価。
ミフユ:気に入られているんだからいいじゃないの。私が遊びに行った時も日向くんについてあれこれ色々聞かれたよ?
肇:それは初めて聞いたな。古城、そういう話は教えてほしい(真顔
ミフユ:個人情報保護の観点からその要請は却下します。(真顔
ミフユ:ダメよ。そういうのは。ま、困るような話はしてない事だけは約束します。
肇:さいですか。じゃ、勉強に戻るから。
ミフユ:Bye.
それにしても会長選はヤバイよ、そりゃあと思うが古城はまだ平気らしい。言い方は微妙に大丈夫かな感が出てきたが。
陽子ちゃんがシャープペンシルを動かしていた手を止めて聞いてきた。
「冬ちゃん?」
「うん。今日も立候補者は誰も来てないって」
「肇くんは誰か2年生で見込んでいる人いない?」
「いない。加美だろうって思っていたからなあ。ってそういう陽子ちゃんは?」
「いない。まあ、それは私も一緒かな」
そんな答えの出ない話をしながら勉強していたら20時前に陽子パパが帰って来られた。
「肇くん、いらっしゃい」
「お邪魔してます」
「ママが食事だから呼んできてって言われてね」
この一言で勉強会が終わり、(陽子パパのフォローはあるにせよ)陽子ママにいじられる第2ラウンドに突入したのだった。




