(8)A 2018年6月7日木曜日 立候補締切日
立候補締切日がやって来た。朝、起きてサイドテーブルに置いているスマフォを見ると加美からメッセが入っていた。つい先ほどの発信だ。「こいつめ」と思いながらスマフォを手にすると内容を読んで速攻で返信をした。
加美:夕方、会えませんか?18時過ぎになるかもですが、私の予測ではもう少し早くお会いできると思います。場所はその時に自ずと分かるかと。
肇:ここにきてなおトンチ問答か?ま、いい。受けて立とう。
加美:じゃあ、その時にお待ちしております。
ベッドから這い出して顔を洗って制服に着替えた。キッチンに行く前にスマフォを手にすると別のメッセが飛び込んでいた。母親だった。
母:肇くん。そろそろうちに来てくれないかな。ニコちゃんも会いたがってるし。
母さんの親バカ極まってるな、これ。
肇:勿論会いに行くよ。行くけど受験勉強中の息子だと忘れて欲しくないな。
母:だよね。ごめんね。私もそろそろ仕事に復帰しなきゃ行けないし早めに来て欲しいな。ところでちゃんと食べてる?
肇:大丈夫。親父にも食わせてるからさ。料理の腕は上がったと思うよ。友達の家で夕食に呼ばれたとき自分で焼いたケーキを持って行ったら大好評だったし。
母:良かった。じゃあ予定を立てたら連絡して。肇の好きなもの作って待ってるから。
母:ところで友達の家に呼ばれたのって相手は誰かな?
肇:親友の子だけど。
母:陽子さんだったっけ?
この後根掘り葉掘りいろいろと聞かれてしまい朝からぐっだりしてしまった。母さん、今そういう事を言いますかねえ。ほんと、たまにしか会わなくても母親は母親だ。抵抗しても無駄。彼女が知りたいと思った事は全て説明する羽目になり、ある事は打診して返事すると約束させられた。
放課後の選挙管理委員会の受付は俺が当番の日だった。陽子ちゃんも生徒自治会室に来てくれた。例によって会長兼選挙管理委員長の古城もすぐやって来た。あと1,2年生各1名の選挙管理委員の子も同席して立候補者に備えた。
古城は俺の方を見ていった。
「大丈夫だよ。肇くん。リラックスして待つべし」
古城はなんやかんや言ってこういう大船に乗って待つような所は会長らしい風格がある。去年みんなと古城を推した甲斐があったと思う反面、成果を持続できるかもう少し心配しないかねと思ってしまったのは確か。ほんとハラハラさせられる。




