表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lv1冒険者が神になるまで  作者: 韋駄天使
第一章 冒険者始めました
4/7

新メンバーと鍛冶神幼女

 「さて。次は我の出番かのぉ!手当てじゃ!手当てじゃ!」これでもかとはしゃぐ幼女。

 「リブ?手当てってどーするのさ?」僕が漸く体を起こしながら問いかける。

 「心配には及ばんぞ。お前さんよ。少し借りるぞ」そーいうと先程の戦いで石の剣になったビカースを取り出し、フェンリルの前まで歩いて行った。

 「フェンリルよ。たらふくはやれんがのぉ。我からの感謝の気持ちじゃ。口を開けよ」そーいうとビカースで自分の手首を真っ赤に染める。

彼女の手首から流れ出るそれは一滴も余すことなくフェンリルの口へと入っていく。




 暫くして……

「これくらいで仕舞いじゃ、終いに仕舞い。我が倒れるからのぉ」そーいってフェンリルの周りを歩き始める。相当血を使ったのだろうフラフラと酔っぱらいのように。。。コケた。僕は石のように重たい体をゆっくりと、慎重に、重々しく起こそうとする………

 

「大丈夫だよーー!!僕が見てるからさ♪ちょっと疲れただけだよ!きっと♪」体長は5~6メートルはあるだろうか。全身は傷付き、毛はその血で真っ赤に染まっている。どこからどう見ても死にかけ。死に体。それでも何処か幻想的で荘厳な気高さを感じていた巨大狼から想像とは正反対の声が聞こえる……… 

 「ん!どうしたの!?あっ驚いてるんだね!?無理もないよねぇ-!そうなんだよ!神様の血って言うのはこの世界で1番の回復効果があるんだよ!!まぁ人が飲んじゃえば!過成長で爆発しちゃうけどね-!」………困る。反応に困る。リブはいつも僕にこんな感情を抱いていたのか。。。

 「フェンリルよ。それ以上口を開く出ない。馬鹿がバレてしまうからのぉ」少し落ち着いたのか。リブが地面に倒れながらケラケラと笑う。 

「酷い!!僕泣いちゃうよ?僕が泣いたら地面もつられて揺れちゃうよ??」はやく謝れと言わんばかりに突っ込む巨大狼。

 「それで?我が口を開くのがやっとと言うくらいまで血をくれてやったのじゃ。お主はもう動けるんじゃろーなぁー?」さすが神なのだろうか。動けない宣言をするのにも煽りに抜かりがない。

 

「うん!お陰様でね!!………………………………………………………………………………「えっ?皆ここ笑うところだよ?僕は昔、太陽と月の化身を食べたんだよ?その僕がお陰様って…………アハハッこんなに面白いのに笑えないなんてギャクセン低いなぁ」……さすがに僕はこれほどじゃないと思いたい。。。

 「小娘。体くらいは動かせるかのぉ?」

 「はい……なんとか…」幼女はフェンリルの声が届かないようだ!

 「ヒドイ……リブゥ………ヒドイよぉーー……」先程までの天真爛漫な無邪気な声がどんどん力を無くしていく。

「泣くでないぞ!!!歩く災害とはよくいったものじゃ。」

 「ほんとに揺れるの?」僕は気になってリブを覗き込む。

「揺れるなんてもんじゃないぞ?あのバグールの町でさえ皆で仲良く土葬じゃな。まぁ生き埋めじゃがのぉ」まるで冗談を言うかのようにリブが答える。

 「はらフェンリルよ。我らはここから拠点の町まで帰る力も残っておらん。お主の背中なら3人なんてお茶の子さいさいちょちょいのちょいじゃろ?」

「そーだね!!任してぇー!!僕頑張っちゃうよ!?」これは本当に友達というのだろうか?……


!?そんなことを考えていると急に背筋が凍る感覚に陥る。

振り返ると先程までの血赤い狼は姿を消し、いや。居るのだが。赤の色なんて何処にもなく。根元は純白で毛先にかけて少しずつほんの少しずつ黒いインクを落としたように………妖艶なる狼の悪魔の姿に変わっていた。

 

 「リブの血貰ったからね!血生臭いのはちょっと嫌だし……一身一新したよーー!さあ♪みんなー-!早く乗ってぇー!!」

そーいうとフェンリルは1人1人服の襟を咥え背中に投げ込んでゆく。

 「全員乗ったぁー?じゃあしゅぱーーーーーー……とーーーーーちゃく!」

 「フェンリルよ。やはりお主には血をやり過ぎたのぉ。我以外へばっておるぞ?まぁよいか」朧気な意識の中でそんな声が響いた。




「さぁ!リブと僕が無事下界に逃げれてこーやって会えたことを祝ってかんぱーーーーーーいい!!」意識がはっきりしたときには4人で町の酒場にいた。どーやら僕だけずっと意識が朦朧としていたらしく、待ちかねた皆が強引に連れてきたらしい。

 


 円形のテーブルには所狭しと料理が置かれ、僕の右側にはガツガツと料理を食べるリブが。

 反対には飲み物を飲んで楽しそうに笑うルルムが。

 目の前には…………「誰………ですか!?」そこには見たことのない女性が立っていたのだ。そう。立っていた。いすの上に………フェンリル……ニチガイナイ!!

 「流石にあの姿のままだとねぇ!これならまぁ獣人で通用するでしょ!?」年は20前半くらいだろうか?体の背中半分が全てのフサフサの毛で覆われているような。毛皮を羽織っているような。まぁ悪魔や神様がこの下界に来るときは容姿は仮の姿らしいので……分からないが……そのまま過ぎる……毛もさっき見た白と黒のグラデーションだった。

 「でも納得ですよね。あの狼さんの時より今の姿なら性格も分かりますよね」ジュースだろうか?飲みながらルルムが微笑む。


 「それでのぉ、小娘よ。これからどーするつもりじゃ?その千彩侯の元へもどるのか?」急に真面目なトーンでリブは話す。

 「いえ……物心ついたときから師匠の元で勉強してたんですけど……魔力だけ上がっちゃって……師匠が他の世界も見て来いって」

「なら決まりじゃな!!小娘我らと共にいこうぞ。魔法使いは居て損はないからのぉ。フェンリルも馬鹿力しかないしのぉ」

「えぇ!リブーーー!!僕も入れてくれるんだね!!嬉しいなぁ!!!」

 「良いんですか!?嬉しいです!でも…私魔法ちゃんとつかないです…けど」

「それは問題なかろうのぉ?フェンリル?」

「大丈夫だよー!!僕の爪には魔法を嫌う性質があるんだよ!!まぁ普通ならそれを人間用に加工なんて無理だけどねぇ~。リブなら目を瞑っても出来るよねー♪」

「本当ですか!?うれしいです!ありがとうございますリブさん!フェンリルさん!」

 「まぁ神具みたいな性能じゃないがのぉ。予め一定以上の魔法を出せなくするストッパーみたいなもんかのぉ。コントロールとは甚だと遠きものじゃがな」……………

「えっ!待って待って!なんで僕抜きで話が進んでるの!?」ここで漸く話に入る。

 「うるさいぞお前さんよ。男ならドンと構えておけ。感情を揺らすな。我らのガールズトークを邪魔するでないわ!それに曲がりにも我はお前さんの主であるぞ?主神であるぞ?この鍛冶神。信仰心を骨の髄まで叩き込んでやろうか!?」



そうしてここにリブ教が誕生したのだった………


「おまえさーーん!起きるのじゃ!朝じゃぞ!太陽じゃぞ!モーーニングじゃ!」日の出と共に幼女が飛びかかってくる。鶏たちが悪い。。。

「どーしたのリブ?」

「昨日言ったじゃろ?あの小娘に魔法制御の腕輪を作ってやらねばのう?いくらでかい大砲とはいえ打てば後は動かないのはのぉ。鍛冶神に言わせれば、スクラップじゃぞ?粗大ゴミじゃ!早急に修理が必要じゃ!!」仲間になったことでルルムさえ煽りの餌食に………いや最初からか。

 

「でも…こんな朝早くからやってるのかなぁ?」

「鍛冶師とは太陽がでてる間は鉄を打ち続ける生き物なんじゃ!!雨が降ろうと槍が降ろうと!鉄を打たないと生きていけない生き物なんじゃ!!」リブはだだをこねる様に話す。さすがは人から神に認められ鍛冶神になったもの。情熱は健在のようだった。


「ほんとにやってる!!あぁでも開店はやっぱりまだみたいだね」僕とルルム、リブ、フェンリルの4人はバグールにある鍛冶屋に来ていた。まだ町ゆく人も少ない、太陽が昇り始めたくらいに。


「たのもーーー!ここの1番偉い奴はどこじゃーー!!」リブが1人店の横にある工場に入っていく。

「どーしたんだい?お嬢ちゃん?危ないよ!ここはお嬢ちゃんがきていい場所じゃないからねぇ」ドワーフだろうか?2メートルを超える巨体が工場の奥からリブを連れて出てきた。朝日に照らされた額はもう汗にまみれ輝いていた。

「人を見かけで判断するでないわ!なら聞くがこの鍛冶屋にフェンリルの爪を加工できる奴はおるのか?」リブは相当怒っている。。。

「さすがにいないよぉ。でもお嬢ちゃん?フェンリルの爪なんてまず手にはいら」

「ここにあるわ!!ほれ?」ドワーフの話も途中に、背伸びをしながらその巨体にフェンリルの爪を見せつける。

「これは!!本物じゃないか!これを何処で拾ったんだい?」直ぐ目の前に居る人間化したフェンリルには目もくれず、驚いたようにリブに問いかける。

 

「鍛冶屋同士が材料の入手先を聞くだなんてタブーじゃないかのぉ?それに手に入った所で加工はおろか砕くことすらできんじゃろぉ?分かったらとっとと我に作業台を一つ貸すのじゃ!なに!お礼に一応もう1つある爪はここに置いていくぞ?」


決まった。即決だった。あっけなく。もうそこにはあっけらかんと笑う幼女がいたほどに。


工場にいた全員が作業を止め幼女を見る。全員が紙に神の行動の1つ1つを記している。

「すごい!!まるで神業だ!!」

「こんな鎚捌きみたことねーべさ!」

「フェンリルの爪がまるで豆腐みたいだなぁ」

皆が口々に思い思いの賛頌の言葉を上げる。まぁ鍛冶神なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが………

嬉しそうだ。背中を見ただけで分かるほど喜んでいた。。。



「出来たぞ!『フェンリルの爪腕輪』じゃ」おもむろに幼女は出来上がったばかりのそれを持ち上げギャラリーに見せびらかす。鋼にフェンリルの爪を混ぜ合わせた者らしく何とも禍禍しく妖婉な雰囲気を醸し出していた。

「おぉ~~~!!!」鍛冶職人たちが一斉にうなり声上げる。


「えっ?もしかして『フェンリルの爪腕輪』が名前じゃないよね?」リブに聞こえないようにフェンリルに聞いてみる。フェンリルはリブが天界にいたときからの友達だったらしいから何か知っているかと思ったのだ。


「いや?名前だと思うよー!リブはネーミングセンスの欠片もないからねー!その神剣ビカースもたしか他の神達が『変身丸』ってつけようとしたリブを強引に止めてつけたらしいしねー!」笑いながら話すフェンリルに僕は恐怖を覚えた………

「まぁ何たらと天才は紙一重といいますしね」横からルルムがクスっと笑う。昨日見たときとは全く違う少女の姿がそこにはあった。安心したような。心の底から楽しんでいるような。


「離すのじゃー!鍛冶とは己で切り開くものぞ!!我に教えを請うでないわ!まぁたまには顔くらい出してやるからの?」甘い。そのうち神具の作り方とか教えそうなほど甘い神様が人混みをかき分けながら戻ってくる。



「ほれ!小娘よ。我が丹精を込めて作った『フェンリルの爪腕輪』じゃ!大切にするんじゃぞ!」そーいってルルムに手渡しているリブの顔は今まで見た中で1番楽しそうだった。

まぁ神になってしまうほど鍛冶が好きみたいだし。

ずっとこの調子なら良いのになぁと誰にも聞こえないように。僕は心の中で呟いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ