EX「とある一家の一幕」
エイプリルフールという事で、出来心で特別篇を書いてみました。これはChapter3のとある日の話ですが、本編とは全く関係ありませんのでご了承ください。そんなもの書いてる暇があるなら本編書けよって感じなんですけどね。本編とはキャラの性格や言動がほんのちょっと変わっている可能性があるので、そこは目を瞑って楽しんでいただけたらと思います。
* 自宅 自室 *
「大ちゃん!大ちゃん!」
俺は甲高い声によって、深い眠りの中から意識を覚醒させられる。
「何だよ…あかり。もう少しだけ寝させてくれよ?」
少しだけ目を開けると、そこには茶髪の小柄な女の子が立っていた。その子は寝ている俺の前で小さな胸を突き出すような体勢で腰に手を当てている。
登校日になると毎朝俺の部屋に上がり込み、叩き起こしに来る幼稚園の頃からの幼馴染の木之下 あかり…のはずだったのだが――
「大ちゃん!お姉ちゃんに対して、呼び捨てとは良い度胸ね?」
「はぁ!?姉ちゃん!?何言ってんだお前!?」
俺はあかりの発言で纏っていた布団を払い除けるように飛び上がる。けれど、俺が見たあかりの表情は真剣そのもので、それに加えて俺の発言による怒りで顔を紅潮させていた。
「言った通りの意味よ!あんた、ちょっとそこに座りなさい!」
「はっ…はいっ!!」
俺はあかりの怒りの言葉に驚き、反射的に正座をしてしまう。
――どうなってるんだ…?それから、目の前のいる幼馴染のはずの小さな女の子から起床早々に説教を受けてしまうという、この状況は一体…?
「もう…お姉ちゃん、朝から大声出さないの。大地くんも…ちゃんと謝って?」
おそらくはあかりよって開かれた部屋の扉の向こうから女の子が一人現れる。あかりに似た顔立ちのその子は俺達二人に視線を向けながら、頬を緩めていた。
――あかりより少しだけ背が高くて、茶髪でくせ毛…ということは…。
「しずくちゃん!」
「何?大地くん。いつもは【しずく姉ちゃん】って呼ぶのに。どうかしたの?何か悩み事?お姉ちゃんの胸、貸そうか?」
「はあぁぁぁぁぁ!!!???」
俺はその発言にまたしても驚き、しずくちゃんに詰め寄った。
「大地くん…あの…いくら私が好きだからって…私たち家族だから…そんな事しちゃいけないんだよ…?」
俺に詰め寄られたしずくちゃんは顔を紅潮させて、目線を泳がせていた。
――あかりだけじゃなく、しずくちゃんまで…
「何言ってんの、しずく!大ちゃんは【私】の事が一番好きなの!しずくよりずっとね!いくら大ちゃんと双子だからって…いい気にならないでよ!?大ちゃんより少しだけ早く出てきただけのくせに!!」
しずくちゃんの発言にあかりは酷く憤りを示し、しずくちゃんに詰め寄っていた俺を払い除けて対峙する。けれど、妹のしずくちゃんもあかりの発言を鵜吞みにしようとはしなかった。
「へぇ…お姉ちゃん、私に妬いてるんだ?大地くんと生まれた時から一緒にいる【私】に!」
「何ですって!」
しずくちゃんは負けじと目の前のあかりの顔に額を合わせていた。両者の間には激しい火花が飛び交っているように見える。
――普段大人しいしずくちゃんがこんな風になるなんて…。ていうか、姉弟?双子?訳が分からないが…この場は逃げた方がよさそうだ…。
俺は言い合いをしている二人をよそに、急いで部屋を出て階段を下りて行った。
* 自宅 リビング *
――何がどうなってんだよ…まったく。
「あら、大地。起きたの?どうだった?愛しのお姉ちゃん達の熱い目覚ましは…」
――この感じ…まさかっ!?
「そっ…空さん!?」
「空さんなんて随分と他人行儀な呼び方するのね。お母さんを女として見るようにでもなった?ふふっ」
「なるわけないでしょうがぁぁぁぁぁ!!!」
こんな風に俺に対して悪魔のような笑顔を向けてくる女性 木之下 空さんは朝食の用意をしているようだった。いつものように胸元が緩くなったシャツを着て、その上からエプロンをかけている姿はいつにも増して母親らしい雰囲気を漂わせている。
――空さんが俺のお母さんだって…。俺は気でも狂ってしまったのだろうか…。
「大地。悪いけど、林檎を起こしに行ってもらえる?」
――今…なんて…?り・ん・ご?果物か?
「大地?聞こえなかったの?林檎を起こしに行ってちょうだい。あなたの妹なんだから、それくらいしてやってね?」
「……。はあぁぁぁぁぁ!!!???」
* 自宅 林檎の部屋 *
――まじかよ…。
俺の目の前には可愛らしいベッドで寝息を立てている小さな女の子の姿があった。柊さんの娘がどうしてこんなところにいるのだろうか。けれど、それを気にしていても仕方がない。
――とりあえず、空さんに言われた通りにしないと。
「おい!林檎!起きろ?朝だぞ?」
「ん~……。うるさいよ…お兄ちゃん…」
俺はその瞬間心臓が大きく高鳴り、驚愕のあまり体を仰け反らせてしまった。
――まさか…林檎から…お兄ちゃんなんて呼ばれる日が来るなんて…。普段から妹みたいなものだけど、言われたことがないというか…言われるわけがないのだが。これもまた新鮮だな…一生忘れないでおこう。
「早く起きろ?ご飯食べようぜ?」
「ん~……。じゃあ、お兄ちゃん…おんぶ…」
「お…ん…ぶ…だと!?」
――待て待て、おんぶってあれだよな!?子供がよく親にしてもらっているあれだよな!?
「お兄ちゃん…早く~…」
林檎は俺に向けて手をゆっくりと伸ばしてくる。
――もう…どうにでもなれ!
俺は林檎の手を取り、その手を肩に乗せて足の下に手を回す。そして、ゆっくりと彼女の体を持ち上げた。
その時、俺は感じてしまった。肩の近くから聞こえてくる艶めかしい吐息、背中から感じる体温と柔らかい感触を――
――やばい、やばい、やばい!!こんなの早く行かないと理性が…。てか、普段こいつ見てもなんも感じないのに…どうしちまったんだよ?俺はよぉ…。
俺は林檎を背中に抱えて、急いでリビングへと戻った。
* 自宅 リビング *
「なっ!?」
「なっ!?」
俺が林檎を抱えてリビングに戻ると、先程俺の部屋で言い合いをしていたあかりとしずくちゃんの姿があった。そして、二人はリビングに来てもなお言い合いを続けていたのだが、俺達の状況を見て驚愕したのだった。
「な…ななな…。だ…大ちゃん…それ…」
「ず…ずるいよ林檎!!私だって大地くんにそんな事されたことないのに!!」
言い合いをしていた二人は数秒停止した後、あかりは少しずつ涙目になっていき、しずくちゃんは先程のように顔を紅潮させて腕を扇風機のようにぐるぐると振り回している。
俺もそんな二人を見て同様に驚愕したのだが、それよりも驚くべきことを聞き取ってしまった。
先程まで背中で静かな寝息を立てていた彼女が二人を嘲笑うかのように「ふふっ」と笑い声を上げたのを――
――お…女って…怖い…。
…………………………………………
その後、俺達は朝食を済ませて学園に行く準備をしていた。その時、インターホンが鳴り響き、空さんが受話器を上げた。
「はーい。どちら様ですか?」
「おはようございます。空さん」
――この声…もしかして…。
「ああ、若葉ちゃん!おはよう。勝手に上がっていいわよ?」
――やっぱり…。
玄関の扉が開いた音がしたと思うと、こちらに近づいてくる足音が聞こえる。そして、リビングの扉が開かれ、そこから現れたのはお下げヘアーの眼鏡っ子女子だった。
「何で…お前まで…」
「何でとは失礼ですね?大地くんと一緒に歩いてくれる女子なんて、幼馴染の私くらいのものなんですよ?ふふーん」
本人曰く幼馴染らしい眼鏡っ子女子 茎元 若葉は俺の目の前で偉そうに胸を突き出していた。
――君…なんか人格変わってない?いや、そこで茎元を睨んでる奴らもだけどさ…。
「あんたぁ…」
「はぁ…またあなたですか…」
「グルルゥゥゥゥゥ」
そんな彼女たちを見て、彼女は失笑した。そして、次に彼女が発したのはこれから行われる事となる戦いの【起爆剤】だった。
「これは、これは。大地くんを取り巻く御姉妹の皆さんじゃないですか?おはようございます。………そんな事より、私は大地くんと【一緒】に登校したいので…そこをどいてくれやがりませんかね?」
――うわ~…。
俺はその瞬間、世界が終わったと思った。主に俺の…。
茎元がその言葉を発した瞬間、周りにいる有象無象が俺へと飛びかかり、彼女もその輪の中に加わった。
「何なんだっ!?この世界はぁぁぁぁぁぁ!!!???」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
* 天陽学園 生徒会室 放課後 *
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!……あれ?ここは…」
俺は彼女たちに揉みくちゃにされたと思ったのだが、周りを見渡すとそこは生徒会室だった。
「ふふっ。ようやくお目覚めか?」
「え?会長?」
俺は声が発せられた方へと視線を移すと、そこにいたのは凛々しき完璧超人女子、天陽学園始まって以来の才女の高嶺 麗華先輩だった。
「一体…何があったんですか?」
「何があったと言われれば、君は寝ていたとしか言いようがあるまい」
――さっきのあれは全部…夢…。
俺は少し名残惜しいと思いながらも胸を撫で下ろす。けれど、俺に返答した会長の顔はとても笑っていた。
「君は随分と楽しい夢でも見ていたのだな」
「え?………はっ!まさか…」
「私もとても楽しませてもらった。観察しているのが飽きないほどにな。君がその夢を見ている時にあかりがいなくて良かったな?はははははっ」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
会長の笑い声と共に断末魔のような俺の叫び声が放課後の生徒会室に響き渡るのだった。
もしかしたら、また同じ夢を見る可能性も否定できませんが次回はきちんと本編を投稿します。




