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恋の咲かせ方を知らない花達~彼と彼女らは恋をする  作者: デブ猫太郎
Chapter2 友達の作り方
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2-1「初めての約束」

今日からchapter2の方を進めていきたいと思います。このchapterでは大地と友達となった若葉がどのような成長を見せるのかというものにしたいと思いますので、よろしくお願いします。

* 9月3日 昼 海花町かいかちょう駅前 *


 昨日の放課後、天の棟の屋上で過去と向き合うために、新学期からこの学園に転校してきた女の子 茎元くきもと 若葉わかばに対して自分の思いの丈を伝えた。そして俺達は友達となり、彼女の心の隙間に入り込むことに成功した。


 これは彼女と友達となった次の日の事――


 灼熱の太陽がまだ夏は終わってないとばかりに暑い日差しを容赦なく注いでいる。そして、俺は海花町かいかちょう駅前のベンチに座って、その日差しを浴びていた。なぜ休日に、こんな暑い場所にいるのかというと、それは昨日の放課後までさかのぼる事となる。



* 9月2日 放課後 天陽学園 校門 *



 それは俺が言った言葉が発端だった――



「俺にこの町の案内をさせてくれないか?」


 俺は友達として、茎元にこの町の案内を申し出た。


「でも……呼べる時が来れば、ちゃんと呼びますよ?」


 こうやって、彼女が赤らみながら語った後の事。俺達は屋上から離れ、少し談笑を楽しみながら学園の校門付近まで来ていた。もうすぐ校門を出ようという時、彼女は俺にこのような疑問を持ちかけてきたのだった。


「それで、大地くん。町案内と言っても…いつ行くのですか?」


「そういえば決めてなかったなぁ。………良かったら、明日行かないか?」


 彼女は俺の発言に聞き、数秒間行動を停止させた。そして、彼女の顔は見る見るうちに紅潮こうちょうしていく。


「あ………明日ですきゃぁぁぁぁぁ!?」


 彼女はその提案にとても驚いたらしく、言葉を噛んでしまったうえに、現在位置から三歩ほど後ずさった。


 ――数秒止まっていたのは、俺の言葉を理解するのに時間がかかっていたからなのだろうか。


「えっと……都合悪かったかな?」


 俺は彼女の強烈な反応に少しだけ困惑してしまう。そして、明日は都合が合わないのかなと頬をかいてしまう。そうだとしても、仕方のないことだ。元々予定が入っていたとしたら、いきなり明日なんていう急な申し入れを受けても困ってしまうのは当然のことだろう。


 すると、彼女は頬をかいた俺の行動を見て心理を読み取ったらしく、首と手を同時に左右に大きく振った。


「い……いえっ!違います!違います!」


 彼女は俺の言葉をとても焦りながら全力で否定していた。そして、顔を赤らめたまま、体をもじもじさせている。


「あの……ただ心の準備ができていないだけなので…」


 彼女のその発言に少し心臓が跳ねてしまう。けれど、彼女がこのように語るのも自然の摂理なのだろう。ただでさえ、先程まで一人でも平気だとか、一人でやってきたなどと、泣きながらに口にしていたような子だ。


 この子はまだ友達というものが、どういうものなのかという事を知らなすぎるんだ。俺は彼女の行動や言動で改めて自覚した。俺はまだこの子の心の隙間に入り込んだだけに過ぎない。彼女が心の中に抱えているものは、俺が思っている以上に闇が深い物なのかもしれない。


 けれど、彼女の心に踏み込んでしまった以上は、彼女に色々な事を知ってもらいたい。彼女に変わってもらいたい。俺は彼女に友達というものがどういうものなのかという事を教えてやる必要がある。


「そんなに気負わなくても大丈夫だ。友達に対して、心の準備なんてもんは必要ないんだよ」


 俺の言葉を聞き、彼女は少しだけ首をかしげた。


「そういうものなのですか?」


「そういうものなんだよ」


 彼女は俺の言葉を聞いて安心したのか、胸に手を当て一度深呼吸をする。本人には自覚はないかもしれないが、小声で「そうなんだ…」と呟いていた。


「それじゃあ……そうだな。明日の午後1時に海花町かいかちょう駅前に集合とかでどうかな?」


「じゃ……じゃあ、それでお願いします」


 茎元はそんな言葉を聞いても、体をもじもじさせながら答えていた。未だに先程の不安が取り除けないのだろう。


 ――反応が初々しすぎる。なんかこっちまで恥ずかしくなってきちゃうじゃないか。でも、これで了承は得た。


「じゃあ決まりだな。それじゃあ、またあし……」


 俺は身を翻しながら、別れの挨拶を言おうとする。しかし、それはある行動に遮られた。それと同時に彼女が出たある行動に異常に心臓が跳ねてしまう。


「あ…あの…ちょっと待ってください」


 茎元は下を少し向きながら俺のシャツの袖の端をつまみ、俺の歩みをさまげていた。本人には自覚は全く無いのは彼女の顔を見ていて明らかなのは分かっている。しかし、俺はその行動にかなり戸惑ってしまった。


「ど……どうしたっ?やっぱり…ダメだったか?」


 彼女は下を向いたまま、首を大きく横に振った。


「違います…。でも…友達なら…これ…を」


 俺の言葉を否定した彼女はゆっくりと自分の右手をあげて、小指だけを立てるという形を作る。


「友達って…約束する時、こうするんですよね……?」


 彼女が呼び止めた理由はこれだった――


 彼女が申し出た提案とは、お互いの手の小指だけを交わらせるというもの。約束する時などにする定番の行為、【指切り】だった。


 ――全く…こいつって奴は…どこまで。


「指切りは友達でなくてもやるんだよ」


 俺は彼女が差し出した小指に自分の小指を交わらせる。ただ指切りをしているだけなのに、なぜだかとても胸が高鳴った。


「えへへっ。約束ですよ?」


 それは彼女がこのように、笑顔で指を交わらせているのを目の前で見ているからだろう。彼女は俺から指を離した後、後ろに身を翻した。そして、数歩歩いて行った後に再びこちらを振り返った。


「それでは明日、よろしくお願いしますね?私のお世話係さん?」


 ――何だよ…茎元。普通にスキンシップ出来るじゃないか。これなのに何で友達出来なかったんだ。


「おう!また明日な!」


 彼女は俺に手を振った後、俺が帰る方向とは逆の方向へと歩いて行った。俺はそれを見送り、自宅への帰路を歩いて行った。



 ――案内するなんて、かっこいいこと言ってしまったものの。




* 昨夜 自宅 自室 *



「どうしたらいいんだーーーーーー!?」


『そんなの知るわけないじゃん。大ちゃんが考えてよ』


 あんな啖呵を切った俺だが家に帰った後、飯や風呂などを済ませて寝る準備まで万端という段階で異常な焦燥感にかられたのだ。そして、情けない事が携帯に手を伸ばし、あかりに助けを求めていた。


「でも、あんな事されたら期待に応えてやりたいだろ?」


『じゃあ、応えてあげてさしあげたら?』


 ――なんか不機嫌そうだな?しかも、急に丁寧な口調に……。


「なんか…お前怒ってる?」


『べ……別に怒ってませんけど?ただ…小一時間ほど茎元さんとの惚気話を聞かされた私の身にもなってほしいものですね?』


 ――やっぱ…こいつ怒ってるだろ?


「そんなこと言うなよ。俺とあかりの仲だろ?」


 俺はあかりの機嫌を取ろうと、何とか言いまわしを考える。


『そうだね~。私と大ちゃんの【仲】だもんね~』


 ――今、ある部分だけ強調されてなかった?でも、これでもだめか。それなら………。


「今度、何でも好きなもの買ってやるよ」


 ――これならどうだ?


『ほんとっ!?……んんっ!!そ…そんな手には乗らないからね?』


 あかりは魅力的な提案に心が揺れ動くも、咳払いをして雑念を振り払った。


 ――うーん…これでもダメかぁ。それなら………。


「じゃあ、今度好きな所に連れて行ってあげるよ?」


 俺にはあかりが電話の奥で息を呑んでいる事を感じる事が出来た。


 ――これは勝ったな。


『ふん!しょうがないから…今回は協力してあげる。今回だけだからね?』


「さすがはあかり!恩に着るよ!」


* 海花町かいかちょう駅前 *


 といったことが昨日起こったのだ。俺はあかりに気負いすぎないように言われ、あえてラフな格好を選択してやってきていた。


 ――こんな服装で本当に大丈夫なのだろうか。仮にも女の子と二人で歩くわけだし。


 そんな事を気にしていると、いつの間にか駅前にある時計の針が12時55分を指していた。


 そろそろだ。けれど、本当に茎元は来るのだろうか。それに駅前とは言ったものの、そもそもこの町のことを知らない彼女がこの場所を知っているのかというのも不安だった。しかし、そんな不安もすぐに払拭ふっしょくされた。



 それは駅から道を挟んで、反対側の歩道に彼女の姿を視界に捉えたからだった。俺は彼女に自分の居場所を伝えるように手を振った。すると、向こうもこちらに気づいたようで車が通っていないのを確認し、道を渡ってこちらに近づいてくる。



「すいません!遅れちゃいました?」

次回「楽しい町案内」。

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