始まりの始まり
パチパチパチと誰かの手を叩く音がする。
「おめでとう。いや残念でしたって言う方が正解かもしれないね。」
ーーただっぴろい空間に声が反響する。
「誰だ!?」
「誰だっていいじゃない、まぁ呼びたいならそうだねぇ、シンとでも呼んでくれたらいいよ」
目の前の空間がぐにゃりと歪んだかと思えば椅子に座った一人の少年が現れた。
見たこともない現象、普通じゃありえない空間と驚きの限界点に到達していた俺は固まってしまっていた。
「なっ・・」
「まぁ混乱するのも最もだしそこに座りなよ」
っと言って少年がパチンと指を鳴らすと、椅子とテーブルが先ほどと同じようにぐにゃりと歪んだ空間から椅子とテーブルが現れた。
「は・はぁ」
なんてつぶやきながら出てきた椅子に腰掛ける。
「さて、聞きたいことも山ほどあるだろうけど、黙って聞いててくれてると嬉しい。まず君は死んだ、いやもう少しで死ぬ」
「はぁ!?なんだよ死ぬって!死ぬってわかってるならなんとかしろよ」
いきなり言われた衝撃的な発言に対して、勢いよく立ち上がったせいで椅子が倒れて後ろのほうでガタッと音がするが気にも留めずに少年に詰め寄りかけ首元を掴もうとするが通り抜けてしまう。
「痛っ・・・え?なんで?」
「はぁ、こうなるとは思っていたけど予想通りすぎてね」
なんていいながら頭を掻いている。
「だからそこらへんも含めて説明してあげるからさぁ椅子に座って、そのままでも僕はいいけどね」
なんて何の気なしに言う少年に少しイライラしながら他にできることもないので椅子に座る。
「まずは軽く僕の紹介だ。僕は君たちより高位のまぁ正しくは高次の世界にいる学者みたいなものかな?
で研究の一つとして進化やそれらに近い実験をしている。そして君が選ばれた。だから死ぬ。」
「はっ?えっ?まって俺が死ぬのはお前のせいなのか?」
「あぁそうだよ、君は僕の研究の一つとして一度死ぬんだよ。そして別の世界に行って生きてもらうんだ」
「え?なんだそれ。転生しろって?そんなことできるのって・・・もしかして神様?」
趣味として色々な小説を読み漁っている自分の中にあるカテゴリーには似たようなものがあり、そういたものは往々として神様の不注意だとかお願いで別の世界に連れてかれるものが多かった。
「う〜ん、もしも自分より高位高次の存在を神様と言うなら、そうなのかもしれない。だから確認してもいないししようもないから、自分たちより上の存在にはあったことないけどね」
「神様のせいで死ぬって普通は謝罪とかが先にくるんじゃないのかよ?」
「だから言ってるでしょう。僕は神様じゃないし、そもそも君が死ぬのは僕の実験のせいだって。君たちの世界じゃ実験動物に謝罪をするのかい?」
「動物と人間は違うだろっ!!」
「僕らからしたら会話できること以外にさしたる違いなんてないよ。そもそも神様が謝るなんて文学が存在しているその世界が異質なんだよ。」
「なんでそんな人が小説なんてもの知ってるんだ?」
純粋に気になったことをつぶやいていた。
「環境の確認は大事だろ?どの世界で実験するか下調べもしないで研究ができるわけないじゃないか。今回の研究内容は知性があるヒト種の発展について?みたいなものだからね。行ってもらう世界には君と同じような存在がいるし、ある程度知性がないと困るから。君が選ばれたのはある程度の知識、体格、それから憧れを持っている人から選んだだけなんだよ」
と言いながら少年はどこからともなく取り出したカップにお茶を淹れて差し出して来た。
「さぁ、少しは落ち着いてきたかい?これでものこれでも飲みなよ」
そう言われて差し出されたお茶を一口飲む。飲むと思いの外美味しかったためか少し気持ちが落ち着いてきて、脳が正常に回りだしている気がする。実際言われた通り、小説に出てきている異世界転生や召喚は憧れるものがある。
ーーーだって男の子だもん。ーーー
なんてボケれるくらいには落ちついてきたのだろう。
するとクスッと笑い声がする。
バッと顔を上げると少年がおかしそうにクスクス笑っている。
「それは流石にないんじゃないかなぁ〜。だいたい君の年齢とそれはあってないでしょ」
なんて言われて恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になる。
「まぁ言い忘れてた僕も悪いんだけど、ここでは君の考えてることはだいたいわかるからね。君が割と乗り気になってくれてることもわかったし、説明でもつずけようか」
と言いながら少年はカップに口をつける。
頭にあるものを文字にするのがこんなに苦労するものだとは思ってなかったです