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カレーで異世界制覇  作者: 黒犬
スパイスと出会い
8/26

お別れは笑顔で

 シーブ商業都市、シューネ大陸中央に位置し広大な穀倉地帯を有し、大陸を縦断するラトリ川の傍にあるため豊富な水源と運搬手段も同時に持ち、あらゆる種族も受け入れ、税が安く大陸中から物が集まりそして出て行く。

 都市の人口は200万人で大陸有数の大都市。

 都市の運営は有力商人やギルドの代表が議員になり決議で決める。


 「金を持つ者、富をもたらす者に祝福を、災いをもたらす者からは全てを奪え」


 が都市の方針であり、

 数十年前にこの都市の利益を狙ってちょっかいを出した国が消えた。

 食料や物資などの物流が止められ。周辺国が同盟を組んで脅し、

 多額の賠償金を請求され鉱山などを奪われ、周辺国に領土を分配され消えた。


 国の方針通りに全てを奪われただけである。


 戦争などの時は物は売るが肩入れはしないという、立場的には中立を宣言しており。

 新規の商売を始めるなら一番適している場所である。

 成功して莫大な富を得るか、失敗して全てを失うか、

 この世界に新しい風を吹き込むかは挑む人間次第である。


 「すごいね」

 「そうだね、すごい人と馬車の数だね」


 早めに出発して昼前には到着したんですが、検問がありそこで時間を取られている様で、前には馬車や旅人、商人など長蛇の列が出来ている。

 並んでいるのは半分以上は人間で他にも様々な種族がいて、獣人、ドワーフ、エルフ、リザードマン、の姿もちらほら見える。

 このペースなら夕方所か夜中になりそうです。


 「仕方ないが、あそこを通るか」

 「そうね、どうせあそこに顔を出せばばれるし」


 夫婦で色々相談しています。すると馬車が並んでいる列じゃなく長く立派な石造りの橋の大きな門のある方に向きを変え、

 そこを通るのは立派な4頭立ての馬車や、強そうな冒険者の一団など、自分達の馬車はかなり場違いな雰囲気がします。

 橋を渡り門の近くへ行くと、門の衛兵が止めに入ります。


 「なんだ貴様ら、この門はお前らのような者が通る為のものじゃない。街に入りたいなら正規の手続きをしてから入れ」


 正論です、バルさんを見ると俺に任せろという表情で愛用のナイフを衛兵に見せます。

 アニスさんも弓を見せたら、

 衛兵の表情が変わり、いきなり敬礼をして、


 「失礼しました、お入りください!!」 


 あっさりと入る事ができました。

 不思議に思ってるとナイフに掘り込まれている紋章を見せてくれました。

 右側に牙を剥く犬、左側がドラゴンが彫られ互いを見詰め合うデザイン。

 

 「かっこいいですね」


 そういうとバルさんとアニスさんは互いに見詰め合って嬉しそうに笑ってくれました。


 門を潜ってからしばらくは穀倉地域が続き、抜けると自分が想像していた以上の大きな街並みが見えてきた、

 2,3階建ての洋風の建物が多く立ち並び、いくつもの搭が建ち、寺院らしき物も見える。

 無数の人が行き交っているのも見えるが、あまりの巨大な街と人の多さで興奮する。

 きらきら光る水面も見え巨大な河川も見える。

 アムちゃんがおおきいすごいと、目をきらきらしながら見ている。


 「おにいちゃん、ふね、ふねいるよ」

 「本当だ、すごい街だ」

 「どうだケイタ、気に入ったか」

 「はい!!」

 

 正直、この街で一人でやっていくのは不安で仕方ないがそれ以上に楽しみもある。

 

  市街地に入り馬車を止め、馬車を降りて身体を伸ばす。

 バルさんとアニスさんが降りてきて。


 「ケイタ、少し用事があるから待っていてくれ」

 「ごめんね、アムをお願いね」

 「遅くなるかも知れないが、アムの事を頼む」

 

 そういうと腕を組んで人ごみの中に消えていく。相変わらず仲がいいというかラブラブだな。

 

 「アムちゃん、少し街を見て回る?」

 「いい、おにいちゃんとオセロがいい」

 「じゃあそうするか」

 「うん」 

 

 少し用事を済ませてから馬車の中に戻りいつもの位置に座り、そのままアムちゃんが僕の身体を椅子代わりに、ちょこんと座りいつもの定位置に着く。

 オセロの盤面を用意して自分は黒でアムちゃんは白。

 今の所自分が全勝してるがかなり僅差での勝負になってきたので油断はしない。


 「じゃあアムちゃんから」

 「うん」


 10戦目、64マスある盤面は白と黒がほとんど同数で埋まっているがわずか2枚の差で白が多い。


 「参りました」

 「アムのかち?」

 「アムちゃんの勝ち」

 「やった!!」


 からだを180度回転して自分に抱きついてくる。

 そのまま受け止めて、頭を撫でてやる。


 「強くなったね、免許皆伝だ」

 「めんきょかいでん?」  

 「僕より強いという事かな」

 「えへへ」

 「あら、お邪魔だったかしら?」


 アニスさんが帰ってきた、バルさんは木箱を肩に乗せて後ろにいる。

 両親が帰ってきたのを見て馬車を降りて、


 「おとうさん、おかあさん、おにいちゃんにかったよ!!」

 「そう、良かったわね」

 「良かったな」

 「うん、めんきょかいでんだよ」


 嬉しそうに報告するアムちゃん、バルさんとアニスさんが帰って来たという事はお別れという事だ。

 自分のリュックを背負い、ダンボールを積んだママチャリを下ろそうとしているとバルさんが下ろしてくれた。

 自分も馬車を降り最後に挨拶をする。


 「用事は済みましたか?」

 「ああ、助かったよ」

 「ええ、少し遅くなったけど、ちょうどいいタイミングだったみたいね」

 「はい、それとお礼を言おうと思ってこの街まで乗せていただいて、本当に助かりました」

 「お礼を言うならこちらだよ、アムの面倒を見てもらって」

 「そうね、料理も教えて貰ったし、夕飯まで」

 「なにより楽しかった、いい旅だった」

 「ええ楽しかったわ」

 「たのしかった!!」


 バルさんが皮製の袋を手渡してきました。

 

 「これは?」

 「給金だ、アムの遊び相手や夕飯、アニスの料理の先生のな」

 「受け取れません」

 「俺は商人だから対価は支払うさ、それにこれから何かするにも金は要る」

 「ではお借りします、きちんと稼いでお返しします」


 バルさんが驚いた様な顔をした後、頭に手を置いて、


 「子供が変に気を回すな、大人に甘えればいいんだよ」


 置いた手で髪をぐしゃぐしゃにして撫でてきます。


 「そうね、もう少し甘えてくれていいのに」


 アニスさんがぐしゃぐしゃにした髪を直して、僕の頭を胸元持ってきて抱きしめながら、

 

 「子供は大人に迷惑を掛ける物よ、だから気にせず受け取りなさい」

 

 僕は情けないような申し訳ないような気持ちになり、そのまま頷きました。

 それでようやく抱擁を解いてくれて、


 「あと、これを持って冒険者ギルドの受付に行きなさい。いろいろ力になってくれるから」


 赤い蝋蜜で封された手紙を渡される。


 「ありがとうございます」 

 「もし何かあったら、俺の故郷の場所は覚えているな」

 「はい、シナモンがあるかもしれない場所ですよね」

 「俺達はそこに居るから何かあったら来ればいい」


 それを聞いてアニスさんが一瞬驚いた顔をしてすぐ笑顔になる。


 「わかりました、何か無くても遊びに行きます」 

 「アム、ケイタさんに挨拶は」

 「うん、おにいちゃんかがんで」

 「アムちゃん何かな」

 

 目線を合わせる様にかがんでアムちゃんを見る。

 ほっぺにチュウ的な事かと思ったら、


 喉を噛まれた。


 といっても甘噛みような感じだが、噛み終わったら顔を真っ赤にして馬車に戻っていく。

 バルさんとアニスさんが驚いた顔をしている。

 何かのおまじないか何かなのかな、と思ってたらアニスさんが、


 「アムがしたそれね。主人の故郷の求愛の行動なの」

 「えっと、あの」

 「喉って身体の中でも急所じゃない、だからそこを噛んだり噛ませたりは親愛と信頼の証なんだそうよ。私が主人にされた時驚いたし」

 「その、アムの事よろしく頼む」


 ほっぺにチュウというレベルじゃなかった。

 アムちゃんの事は嫌いじゃないが子供というか幼女だし、


 「では、そろそろ行く」

 「そうね、お別れもすんだし、またね」

 「はい、ありがとうございました、お見送りします」

 「いや大丈夫だ。ケイタとはまた会えるしな」

 「はい、また会いましょう」


 そう言うと、二人は馬車に乗り市街地の外へ向かって行く。

 自分は2人に向かい頭を下げ、大きな声で、

 

 「ありがとうございました、また会いましょう」


 二人は笑顔で手を振ってくれた。馬車の後ろが見えるとアムちゃんが大きく手を振って、


 「おにいちゃん、ばいばいまたね!!」

 「アムちゃんバイバイまたね!!」


 馬車が見えなくなるまで笑顔で手を振り続け、最後に頭を下げお辞儀をする。

 笑顔でお別れをするのに目から溢れる物を見せない様に、

 涙が止まるまでしばらく掛かったが、顔を上げ前を向く。

 これからやる事はいくらでもあるのだから、とりあえずアニスさんに渡された手紙の冒険者ギルドに向かう事にする。




   ◇   ◇   ◇


 門を潜り近くの村へ向かう。

 門の所で衛兵や冒険者が大勢集まり盛大に見送られたのには苦笑したが、

 それより10年ぶりに向かう故郷の事を思うと頭が痛い。


 「久しぶりね、あなたの故郷は私との結婚報告以来かしら」


 アムを胸元に抱いて頭を撫でながら妻が言ってくる。


 「そうだな、あの時以来だな」


 自分の一族が住む森は、古くから森を守りながら狩りなどをして暮らしている。

 古いから排他的な所があり、外から人間の嫁を取るという事に大反対された。

 次の長である兄が一番反対して大喧嘩する事になり、

 集落のの周辺に大きな被害を出したのを思い出す。

 兄が地面に大の字になりながら最後に、


 「お前はもう一族の者じゃない、二度と足を踏み込む事は許さない!!」

 「ああ、こんな一族こちらも願い下げだ!!」


 そう言って故郷を飛び出したのを思い出して苦笑いをする。

 若かったと今でも思う、その後に妻の実家に自分の関係がばれて家に戻るよう言われた時にまた一悶着あったのだが、

 それが原因で妻も家から絶縁され、お互い故郷と実家に戻れなくなった。

 アムが産まれて危険な冒険者を引退して商人をとして大陸中旅をしたが、同じ場所は長居をしない生活だ。

 ケイタと出会ってからのアムの変化に気付いた。

 わがままも言わないアムがケイタの別れで大泣きをして初めてわがままを言った。

 別れたくない一緒に居たいと、自分達の都合で友達を作る事も出来ない環境をアムに強いていた事を恥じた。


 「故郷に戻れたらアムにも友達できるだろうか」

 「あら、私達の子供よ大丈夫よ」 

 「ああ、そうだな」

 

 くーーっ。

 可愛いお腹の鳴る音が聞こえる。

 アムがお腹が空いたというが次の村までまだ距離がある。

 

 するとアムが白いびにーるというケイタが持っていた袋をアニスに渡す。

 すると中から、ハンバーグにトマトソースを掛け、タマネギや葉物をパンで挟んだハンバーグサンドが多めに入っていた。

 中に「食べて下さい」とメモ帳で書かれた手紙が入っていた。

 他に小さめのビニール袋が入っていて「使って下さい」と瓶に入ったシナモンシュガーやスパイスが数種、オセロやトランプが入っていた。


 アムがオセロがある事に大喜びで、アニスはスパイスがある事に驚き笑みを浮かべる。

 自分も自然と笑みを浮かべている。

 とりあえずアムが自分の分のハンバーグサンドを持ってきてくれて、

 それを受け取る。

 アムとアニスが手を合わせているが、俺はハンバーグサンドと手綱で両手が塞がってるので、

 心の中で手を合わせて、


 「「「 いただきます!! 」」」


 相変わらずケイタの作る飯は旨い、しばらくは味わえないから味わいながら食べようと思い。


 いつもよりゆっくりとした食事になる。


                                          

ひとまずお別れです。

次から商業都市編です

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