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カレーで異世界制覇  作者: 黒犬
スパイスと出会い
3/26

チキンと干しぶどう

 アニスさんは昼食の片付けと自分は羽をむしった鶏肉の処理しながら、先ほどの見事な弓の事を聞いてみると、


 「私たちアムが産まれるまで冒険者だったのよ」


 なんでも上位の冒険者で結構有名なコンビだったらしく、アムちゃんが産まれたので引退したそうです。

 バルさんとの出会いやコンビを組んだきっかけ、結婚までいろいろ面白い話が聞けました。

ややのろけ大目ですが、

 

それと自分がママチャリ引きながら歩いて道はかなり危険で、

 本来は上位の冒険者の護衛無しじゃ、まず通らない道だそうです。

 バルさんが云うにはスパイスの匂いを嫌がってケイタを襲わなかったんじゃないかと聞き、やはりカレーとスパイスは偉大だと感謝しました。


 大き目の肉だったので苦労しながらなんとか部位を切り分け終わったので、今日の夕飯以外で使う以外は何にしようか考え中にアムちゃんが近づいてきて

 

「おてつだいする」

 

 先ほどニワトリの倍以上あるニワトリもどきの羽をむしるの手伝ってもらったばかりなのに、いい子です


「おわったらオセロ」


 リベンジに燃えてる恐ろしい子。

 今日の夕食の参考に、


 「アムちゃんは食べ物は何が好き?」

 「おにくとあまいの!!」

 「嫌いな食べ物は?」

 「やさい、だってにがいもん」 


 今日の夕飯のメニューが決まりました。


 その後、馬車で5時間ほどで次のキャンプ地まで問題なく到着。

 馬車の中ではオセロで勝てなくてアムちゃんがむくれたので、途中からアニスさんも加わり三人でトランプのババ抜きに変更。

 運の要素も強いですが相手の表情なんかの駆け引きもあるゲームですが。

 アムちゃんの耳や尻尾の動きで丸分かりなので、アニスさんと結託してうまくアムちゃんを勝たせたりと楽しい時間でした。バルさんは寂しそうでしたが。


さて夕飯の準備開始です。

 

 荷物の中から愛用の包丁を取り出し、スープで使っていたタマネギみたいな野菜を貰いみじん切りにします。

 サイズがキャベツみたいにでかいですが見た目はタマネギ、生のまま食べてみたら食感や辛味もタマネギその物です。

 

 アニスさんと一緒に焚き火用の枯れ木を集めていたアムちゃんが、

 大量のタマネギのみじん切りを見て、すごい渋そうな表情してますが


 火は石を組んで作られた場所で、焚き火を下に燃やしてそれを使うようです。

 枯れ木を集めて火を付ける時、アニスさんが何かを呟いたら燃え始めたのはびびりました。


 スープでも使っていた鍋を借り、鍋が温まったら瓶の中のギーをすくい鍋の中に、

 乳脂肪独特な香りが周辺に広がり、さらに香りを出すためにベイリーフ入れさらに香りを強める


 こちらの様子を見ていたアニスさんは葉っぱを鍋に入れたのに驚いたが、ベイリーフの爽やかな甘い香りを嗅いで不思議そうな表情をしている。


 「ケイタさん、今葉っぱ入れたみたいだけど」

 「はい、月桂樹の葉っぱを乾燥させたベイリーフです」


 鍋に入れなかったベイリーフの葉をアニスさんに渡し説明してみる。


 クスノキ科の常緑樹、月桂樹の葉を乾燥させた物。 爽やかな甘い香りなどの風味を加える。

 一般的に「ローリエ」と呼ばれていて煮込み料理などで使われる。


 「じゃあ、お昼のスープにも入れたら美味しくなるのね」

 「はい、臭みを消して風味付けに使えます」


 いつの間にかバルさんとアムちゃんが近くに居て、ベイリーフをくんくん嗅いでいる。

 甘い香りがするのでアムちゃんが口の中に入れ吐き出しているのが微笑ましい。


 いい感じでギーも温まったので、大量のみじん切りのタマネギを鍋の中に入れる。

 あとは焦がさないようにヘラで飴色になるまで、ひたすら炒める。


 タマネギが炒め終ったら、食べやすいように切られた鶏肉を入れ、火が通るまで炒める。

 アムちゃんがお手伝いしたい。というので空のペットボトルを渡して水を入れてきてもらう。

 2往復もするとちょうどいい量になったのでお礼を言ったら、

 照れくさそうに笑ってアニスさんの方に行く。


 30分ほど煮たら四角い箱に入ったカレールーを入れるだけです。

 カレールーを加え、お玉でかき混ぜてたらいつの間にか三人とも近くに来ていて、

 カレーの香りの魔力に引き寄せられたようです。

 

 「ケイタまだか、初めて嗅いだ匂いだが腹が減ってたまらん」

 「おにいちゃん、オナカすいた」

 「もう少しだから、みんな行儀よく待ちましょう」


 と鍋の中を見たら色を見て三人とも固まっています。

 土とか泥とかの単語が聞こえますが無視する方向で、

 小皿に少し入れ味見をし、


 「少し、辛いかな」

 

 アムちゃんには辛めな味付けになってしまいました。

 バルさんやアニスさんにはちょうどいいと思うのですが、


 「アニスさん、小さめの鍋ありますか?」

 「あるけど、どうしたの?」

 「アムちゃん用に味付けを変えようと思いまして」

 「少し待ってね」


 馬車の中に行く鍋を取りに行くアニスさんと一緒に、自分もスパイスを取りに行く。

 小さい鍋にアムちゃん用を作り、ようやく夕飯です。


 夕飯のメニューはチキンカレー、異世界の方々に受け入れられるか心配でたまりません。


 みなさんは初めて見る食べ物なので、自分がまず最初に口に入れます。


 「うん、美味しい!!」


 材料が足りないのでカレールーで作りましたが、なかなか美味しいです。

 バルさんの夕飯を催促する視線に耐えながら、タマネギを炒めたかいがありました。

 飴色タマネギの甘味とルーの辛味がちょうどいいです。

 鶏肉も程よい歯ごたえで地鶏のような弾力があり肉からいい出汁が出ています。



 自分のリアクションを見て三人は揃って匙を口の中に持っていきます。


 「「「・・・・・・・・・」」」


 えっ、まさかの無反応。まさかカレーは異世界では受け入れられないのか!!

 カレーの神に祈りを捧げようとしたら、


 『・・・・美味しいっ!!』


 どうやら、初めての感覚で反応が遅れていた様です。


 「甘い、辛い、でも旨い!!」

 「お肉も弾力があるけど、ちょうどいい歯ごたえ!!」

 「おにくもやさいもあまくておいしい」


 気持ちいい反応です。皆さん慣れない辛味と戦いながら飲み物と匙を交互に口に運びすぐ一杯目を食べ終わりお替りしようとし。

 するとアムちゃんがお母さんの食べている方も興味を持ち。


 「おかあさんのもたべたい」

 「うーん、でも辛いからアムは食べれないかも?」

 「たべたい、たべたい」


 アニスさんが自分の匙をアムちゃんの口に持っていく。

 もぐもぐと味わい動きを止めて、とつぜん泣き出すアムちゃん。


 「からーーーーーい!!うぇーーーん!!からいよーーーーー!!」


 泣き出したアムちゃんを見てオロオロするバルさんとアニスさん。

 子供が辛い物食べて、大泣きする経験無いだろうしな。


 「アムちゃん、これ口に入れると辛いの無くなるよ」


 舌を出して辛い辛いと泣いてるアムちゃんに、

 袋から取り出した黒い粒を口に入れてやる。

 少しづつ泣き止み、口の中の粒を味わい笑顔になっていく。

 

 「もう、辛くないでしょ?」

 「うん、甘くて美味しい」


 バルさんとアニスさんが泣いているわが子が、簡単に泣きやんだのを不思議そうに見ている。

 二人にも同じ物を袋から出し食べさせてみる。


 「これは?甘ぇ」

 「甘くて美味しいわ」

 「干し葡萄です、アムちゃん用のカレーに使ったやつです」


   ◇   ◇   ◇

   

 正直驚いている。

 自分達の手に乗っている。大き目の粒の干し葡萄を見て。

 干し葡萄自体はワイン生産が、大陸全土に広がると葡萄と共に広がったが、

 保存食だったり菓子なんかに使われるだけで、子供用の味付けに使ったりはしない。

 それに大陸に普及している物より粒のでかさ甘味も比べ物にならない。

 そう考えるとかなり高価な品だと想像できる。


 「おにいちゃん、あのね」

 「アムちゃん辛いのもういいの?」

 「うん、それでね」


 アムの態度にケイタが何かを気付いたようでスパイスを入れている。

 だんぼーるという木に似ているがやわらかい箱の中から、

 透明な袋に入った大量の干し葡萄をアムに手渡す。

 

 「甘い物を食べたら歯を磨くんですよ」

 「うん、ありがとう」


 アムが自分とアニスの所に袋を持ってきて、笑顔で貰ったよと知らせる。

 アニスと顔を見合わせ。

 

 「いいのか?」

 「はい、街に乗せてもらう運賃の足しにでもなればいいんですが」


 運賃どころかこちらが、金を払っても欲しい物を子供のおやつに寄越す、

 干し葡萄を食べているアムを優しい目で見ている。

 変わった奴だ、だがいい奴だ。

 今はケイタの作ったカレーという食べ物を味わおうと、お替りを器に盛る。

 

 

   ◇   ◇   ◇


 材料が足りないので不安でしたが、皆さんの反応を見ると大成功です。

 アムちゃんが辛いのを食べるというハプニングもありましたが、

 干し葡萄を美味しそうに食べているのは可愛らしかったです。

 本来はバターライスと混ぜて使おうと思ったんですが、米が無いですし、

 あと本格的にカレーを作るのに、足りない材料もあるので困りました。

 明日は市場を開いてる村に寄ると言っていたので、何か見つかるといいんですが。

 とりあえず明日の夕飯も、作らせていただけるか聞いてみましょう。

 

 「皆さん、明日も夕飯作らせて頂いてもいいですか?」


 皆さんの笑顔で返事を返してくれました。


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