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カレーで異世界制覇  作者: 黒犬
スパイスと出会い
2/26

スープに一つまみの

 総合格闘技において一度そのポジションを取られると、返しづらいのは何かと云われれば、

 多くの人はマウントポジションと答えると思う。


 柔道における縦四方固の体勢で、上に乗った方は一方的に打撃を与えることができ、

 下の方の人間も打撃で反撃をする事も出来るが、

 腰の入らない手打ちのパンチと、上からの振り下ろすパンチでは、

 どちらの方が威力があるかは考えるまでもない。

 寝技の得意な人ならそこから相手の腕を取って関節を決めたり、体を入れ替えたりして立場を入れ替える事も可能だが、どちらも高いテクニックを要求され素人にはとても出来ない。

 


 つまり素人がマウントポジションを取られたら相手が飽きるまで殴られ続けなきゃいけない。


 それが五歳の獣耳幼女だったとしても。


 「もう、もう、もう」

 「ごめん、アムちゃんごめん」


 オセロの5連敗目辺りから頬を膨らませて、7連敗目から涙を目じりに溜め、

 10連敗についに爆発してこうして胸とお腹をポコポコ殴られている。

 始めは微笑ましいと思い受けていたが、さすが獣人の血を半分受け継ぐアムちゃん、

 冗談じゃなく痛いです。

 脇を持ち上げて逃れようと試しましたが、するりとかわして打撃継続・・・。


 「もう、もう、もう」


 威力もどんどん上がりポコポコから、ボコボコに効果音も変わってきた気も・・・。


 「バルさんアニスさん、あなたたちの子供は恐ろしい才能を秘めています。いずれ世界も狙える・・・。」


 意識が薄れてくるのを感じ、父さん母さん、師匠。にお別れを呟いていたら、


 「ケイタさん、アム ご飯ですよ」

 「はーーーい!!」


 可愛らしい死神が馬車の外に出て行った。

 なんとか生存できた、アニスさんあなたは命の恩人です。

 ふらふらした足取りで馬車の外に出ると、


 「アムの遊び相手、助かったよ。あの子があんなにすぐ懐くのは珍しい」

 「いえいえ、遊ばれていたのこちらですよ」


 よく分からないという感じの表情をしてバルさんは準備されてる昼食の所に一緒に歩いていく。

 商人や冒険者などが食事やキャンプとする所で、森の中を大きく切り開いてあり、火を扱っていい場所は決められているそうです。


 木で出来た深めのお皿にスープが入れてあり。横には焚き火で軽く焦げ目の付いたパンが添えられている。

 食べる前に、いただきます。をしてスープを飲む。

 玉ねぎと人参の様な野菜が刻んで入っていて後は燻製肉を刻んで塩を加えて煮た塩スープの様だ、

 全体的に味が薄い感じがするが不味くはないが、何か一味足りない気がする。

 パンもややぱさついているが、他の人たちを見るとスープに浸しながら食べている。

 バルさんが御代わりしようとお皿を出したのを見て


 「バルさん、少し待って下さい」

 「ケイタ、どうした」

 「いい物があるので少しお待ちを」


 馬車に戻るとダンボールからお目当てのスパイスの入った袋と、白っぽい塊の入ったガラス瓶を取り出した。


 「お待たせしました、これを掛けて食べて下さい」

 「この黒い粒をか?」

 「はい、アニスさんとアムちゃんも試してください」

 

 3人とも少し摘まんで入れてみる。そして匙を口に入れ。


 「うめぇ!!」

 「・・・・美味しい!!」

 「おいしい」


 三人ともいいリアクションです、次はどうでしょうか。


 「よろしければ、パンにこれを塗って浸して食べてみてください」

 

 すると先ほどと同じかそれ以上の美味しいというリアクションをし、

 自分も味を確認してみる。

 ブラックペッパーが味を引き締め、ギーを含んだパンがスープにコクを足している。 

 三人とも御代わりをして残りのスープもきれいに完食しバルさんが、


 「ケイタこの黒い粒は何だ?あとパンに塗った物は?」 

 「ブラックペッパーの粒とギーです」

 「ブラックペッパー? ギー?」

 

 ブラックペッパーはコショウ科の植物の果実を乾燥させたもので、収穫時期によりブラック、ホワイト、ピンク、グリーンに分けられ。

 ブラックよりホワイトの方が辛味は強く、グリーンは爽やかな香り、ピンクは微かな甘い芳香がし、爽やかな辛味が特徴なスパイス。


 ギーは水牛や牛、山羊などの乳を乳酸発酵させて作るバターの一種で、インドではサラダ油の代わりに使われたり、独特の風味はあるがカレーに風味やコクをつけることができる


 簡単に説明をするとバルさんがよく分からないという表情をしている。


 「アニスさんすいません、せっかく作っていただいた料理に手を入れて」

 「いいのいいの、お野菜の苦手なアムも珍しく全部食べてくれたし」

 「うん、お兄ちゃん。おいしかったよ」

 「それで図々しいお願いなんですが夕飯作らせて頂けないでしょうか?」


 そろそろカレー、スパイス分が切れそうなんです。

 一日一食はカレーを食べないと調子が悪くなるので、

 スパイスやルーはあるのでお野菜とお肉を分けて頂く事になりますが、


 「あら、いいの。何か必要な物あるかしら?」

 「スープに使われていた野菜と何かお肉があれば最高です!!」

 「お肉、ちょっと待ってね、あなた何かいる?」

 「ああ、近くに鳥の匂いがするな」


 それを聞くとアニスさんは馬車に戻ると大きめの弓と矢を持ち出し、構えて待機する。

 

 「あなた、オッケーよ」

 「ケイタ、離れて耳を塞げ」


 そう言うと離れて耳を押さえたのを確認してバルさんが大きく深呼吸をし、大きな咆哮を上げる。

 あまりに大きな咆哮に周囲に振動が伝わり、それに驚き大きく羽ばたき飛んで逃げようとした鳥を、

 アニスさんが一瞬で射抜いた。


 アムちゃんはすぐに落下した鳥を探しに行き、すぐに戻ってくる

 あまりの連携に耳を塞いだまま固まっていると、アニスさんは自分が獲ったニワトリの倍以上ある獲物を受け取り笑顔のまま、


「これで大丈夫かしら?」

  

 耳を塞いだまま激しく首を上下するので精一杯だった。

   


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