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センソウ  作者: quark hound
8/13

No.8

純粋に彼女のダンスに心踊らされたのだと気づいたのは、後になってからだ。僕は思考も意志も思想も、何もかもを投げ捨て、彼女に見入っていたらしい。こんな経験は初めてだ。これまでどんなに素晴らしい映画を見ても、どれだけ美しい音楽を聴いても、どれほど美味な料理を口にしても、僕は無作為に頭を巡る無意味な、あるいは有意味な言葉から解放されたことはなかった。だけど今日、たった数分間ではあるが、一切のことを忘れ、僕は終始、ただただ彼女に見惚(みと)れていた。真実を垣間見た気分だ。ある意味、僕にとって記念すべき日となった。

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