No.13
ふと、彼女と交わした会話が思い起こされた。あれは、彼女が進路指導で現実を見ろと言われた放課後のことだ。ちなみに、どんな未来設計かは、その時の僕は知らなかった。
「なんのために生きてるんだろ?」
夢を持っている彼女の口から、そんな言葉が出るとは思わなかった。驚いて彼女を凝視してしまい、ふと目が合って、僕は気恥ずかしさからすぐに視線を逸らした。生きる意味。それを本気で追いかけているのが哲学者で、思春期の人間も同じような疑問を持つ。僕もその一人だった。何の取り柄もない僕はずっと考えていた。今となってさえ答えには辿り着けていないけれど、苦し紛れな解釈なら一つ持っていた。
「なんのために夜空の星は輝いていると思う?」
彼女は驚いたように僕の横顔をジッと見つめた。小心者の僕は目を合わせられずに、真っ直ぐ前を見続けた。少し考える仕草をした後、彼女は言った。
「わかんない。なんでだろ」
「うん。それは、僕にも分からない。もしかしたら、意味なんて無いのかもしれない。ただそこにあるってだけで。人生も同じようなものだと思う。……けど、そこに意味を見出すのが、人間じゃないかな」
そう言った僕を、彼女は不思議そうに見ていた。
僕は探していた。僕の意味を。だが今の僕には、もうこれ以上何を成すこともできなくなってしまった。このまま拷問を受け続け、最後には死に至るだろう。
輝く月光が牢屋へ射し込み、僕の身体に突き刺さっている。僕は叫び声を上げた。
これは衝動的に書いたものです。前半+αは一週間くらいで書いて、久しぶりに充実感がありました。
実は大学の文芸サークルで成り行きでお題ありの小説を書くことになって、夏休みに書いたのを合評していただいたのですが、あまりに酷い作品で、辛口コメントをお願いした先輩にけっこう言われたので、今度は日本文学っぽいものを書こうと思って書いたのが、これです。
けっこう作品としてはまだまだ甘い部分がたくさんあるので、これを元にまた別に加筆修正してしっかりとした作品を作りたいです。
最後に、きっかけを作ってくださった先輩と、アドバイスをしてくれた同学部の友達に、感謝を込めて。




