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No.1
「ねぇ、センソウってなぁに?」
「どうしたんだい?いきなり」
不思議そうな、何も知らない無垢な顔で、六歳の幼い少女は僕を見上げて訊いてきた。
「みんなが言ってるの。センソウが始まったって。センソウってなぁに?」
そう。少女の言う通り、最近遠くの国で戦争が起こったのだ。
ここは比較的高度の高い座標に位置した街なので、場所にもよるが、夜になれば遠くに戦火が光っているのが見える。花火のような音も微かに聞こえてくるようになった。
「赤くて綺麗だね」
少女はぽつりと呟いた。
地平線上に輝く紅い戦火。点いては消えを繰り返して、色は異なるが、さながら蛍のようだ。




