ユウの過去
まだ、早いのか日の光がさす放課後、氷華は弓道部、剣は剣道部、俺は、いつもなら、部活の助っ人をやっているが今日はないので、一人で帰ることになり、帰ろうとして校門に来た時、ユウが待っていた。
『一緒に帰りましょう』
とユウが話し掛けて来た。
そういえば、ユウは今日転校してきたばかり
だから、部活はやってないのか。
『おう』
二人で無言で歩いていたとき、ユウが口を開いた。
『朝、話した事覚えてる?』
『ああ』
『私のお父さんは、無差別殺人をした人なんです』
『そうなんだ』
『はい、そして私には、家族がいないのです』
『え、なんで』
『私のお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんもみんな、被害者の家族や関係者に殺されてしまいました。私はお母さんに生かされたのです。お母さんは私を逃がそうとした時、殺されました。私はお母さんが殺されるのを黙ってみている事しか出来ませんでした。今の様にうまく能力を使えなかったからです』
『…』
俺はつい、無言になってしまっていた。
『じゃあ、なんで俺の名前を知ってたの?』
『お母さんに聞いたからです。あなたならきっと助けてくれると言っていたからです』
俺はよく分からなかった。何故、ユウの母親に名前を知られているのか。
『後、なんでフルネームで呼ぶの?』
『なんとなくです。』
こっちが名前で呼んでいるのにおかしいと思う。
『じゃあ俺の事はこれからは業って呼んでくれる?』
『はい、火山…じゃなくて業、これでいい?』
『おう』
『親がいないのに何処に住んでるの?』
『この近くの公園です』
『え、今なんて?』
『だから、公園です』
『え、まじかよ、どうやって生活してんの?』
俺は驚いてしまった。まさか、公園で住んでいたなんて
『公園なら、水もありますし、お手洗いもありますので』
『寝るところは?』
『段ボールです。とても暖かいですよ』
『随分と古典的だな』
『はい、昔の知恵は役に立ちます』
『いつから公園に住んでるの?』
『いろいろな場所を転々としています。5年間ぐらいだと思います』
俺は驚いてしまった。5年間もこんな家の無い生活をしていたのだ。
俺も、一度、家出をし、3日で帰ってきてしまった事もあったのだ。俺なら、5年間も、そんな生活をしていたら死んでいたかもしれない。
『あと…いえ、なんでもありません。』
そう思いながらも、俺はユウと別れ、家に帰った。
だが、最後に言おうとしていた言葉に何故か引っかかっていた。