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小説を書こう!  作者: 小説家の集まり
第六回 テーマ:海
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テーマ:海 "海に来ました" 作者:ハセガワハルカ

小説を書こう! 第6回テーマ・指定等


テーマ:海

禁止指定:"海"の描写(言葉・キャラに自分の考えを話す上で海を使う場合はあり)

指定事項:学生を主人公に


第五回(自分の中で)ということで、原点に立ち返って見ました。

 僕と彼女が付き合い始めてから、初めてのデート。

 お互い、友人同士という間柄が長かったせいか、やっぱり距離感が掴み図らくて。デート一つ誘うのにも緊張してしまった。

 だけどやっぱり、男として。ここは彼氏である僕の方から誘ってやらないといけないだろう……、ってことで、僕は勇気を振り絞って彼女に聞いたのだ。


「デートをしないか?」

「……喜んで」


 この時点で、僕のテンションゲージはMAXを振りきって三週くらい。

 舞い上がって調子に乗って、行き先の全権を彼女に委ねてしまったのだ。


「どっか、行きたい所はあるか。外国とかじゃなければ、何処にでも連れてくぜ!」

「……海に、行きたいわ」


 なんて、彼女が言うものだから。ええ、来ましたよ。

 答えてやりましたとも。初デートくらい、彼女のリクエスト通りに叶えてやりたいと思うのが人情じゃないですか。だから推して参りましたとも。

 照りつける太陽。拭きつける潮風。高々とそよぐ波の音は、まるで俺たちを歓迎しているかのようで、否が応にも気分を高揚させる。

 夏――と言えば、海。

 そんな妄想をしながら、やってきました。

 ――いまは冬なんだけど。


「――凍えるような寒さ。拭きつける冷気。陰気にそよぐ波の音が、まるで私たちを馬鹿にしているかのようで、すごく……耳触り」

「お前が来たいっていったんだろう……」


 僕の責任じゃないはずだ。……いや、もちろん、徹頭徹尾彼女が悪いとは流石に言わないけども。

 うん。思い返せば、半々くらいだ。フィフティフィフティー。喧嘩両成敗とも。

 僕が、『冗談だよな?』って聞いた時、彼女が、『冗談よ。いやね、本気にしないでよ』って返してくれれば、それで終わりだったのに。

 あろうことか彼女は、『冗談? 私はいつでも本気よ? 今週末は、すごく海に行きたい気分なの』なんて仰るものだから。

 俺も意気地になってしまったのだ。


『……ほ、ほほぅ。言うじゃないか。言われてみれば、僕もなんだか海が恋しくなってきたよ』

『あら、さすが私の恋人なだけあるわ。気が合うじゃない』

『お前こそ、僕の深層心理に芽生えていた願望を目ざとく看破するなんて、気が効くってレベルじゃあないな。以心伝心ってヤツだ』

『これがほんとの両思いってことなのね。あぁ、はやく今週が終わらないかしら。海が私を呼んでるわ』

『サーフィンに遠泳、スイカ割りなんかしちゃったりしてな』

『もう、やめてよ。今すぐ水着に着替えたくなっちゃうわ』


 てな感じで。 

 あの時の僕たちは、本当にどうかしていたとしか思えない。"初デート"という魅惑の単語に浮かれすぎていたのか。


「……正直、反省してるわ。ごめんなさい」

「お前が真正面から謝るなんて、本当に後悔してるんだな……」


 さもありなん。

 冬の海の想像以上の寂しさと、想定外の侘しさにはいくら彼女といえど、テンションだだ下がりの様子。

 縮こまってしまっている。寒いし。

 せっかくの初デートなのに……。

 ――と、僕がため息を溢しかけたところで、彼女はパンッ、と手を叩いて立ち上がった。


「まあ、文句ばかり言ってても始まらないわ。冬の海には、冬の海らしい楽しみがあるでしょう」

「これっぽっちも、楽しみなんて思い付かない。……が、その心意義には賛成だ。とりあえず、スイカ割りでもしようか。せっかく持ってきたんだし」

「見て、このスイカ、凍ってるわよ」

「うおっ、マジか。すげえ、霜噴いてる!」


 まあ、なんだかんだで。

 初デートin冬の海は、それなりに楽しかったりした。

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