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小説を書こう!  作者: 小説家の集まり
第四回 テーマ:殺戮
19/25

テーマ:殺戮 『殺戮少女』  作者:友達

テーマ:殺戮

指定:戦闘シーンを入れる


禁則事項:近距離武器の使用禁止(ナイフ、ダガー以外)


禁則事項2:視点移動は(使うとすれば)一回限り。二人の視点しか使わないこと。


修正しますた。

テーマは飾りです。すみません。

 真夜中、私はふと殺気を感じた。研ぎ澄まされているが、感情を捨てきれないようで、どこか幼い、そんな殺気だった。

 辺りは闇で囲まれている。その中にちょこんと、街灯に照らし出された私がひとりきりで佇んでいるだけだ。

「……どうしたの? 誰かいるんでしょ?」

 私の感じている気配は、少し心が揺らいだようだ。落ち着きがなく、凶器を弄る様子が目に浮かんでとても滑稽だ。

「私を私と知っての事なんでしょ? そんなもんじゃ殺れないよ。誰もね」

 殺気を最大限感じさせ、相手を威圧しながら振り向く。これで相手は逃げた。

 はずだった。意外にも相手はこちらへボウガンを放ってきた。躊躇なく、どこか起こっているようにも思えるが。

 不意を疲れた私はうまく回避が取れず、その場に転んでしまった。

 私の不意を付いたのは攻撃ではない。ボウガンのセットには音があるのだ。聞き逃すはずがない。問題なのは相手だった。

 ボウガンを撃ってきたのは、三日前殺したはずの彼だった。



 引き戸をがらり、と開ける。

 そこは玄関だった。ほぼリビングと一体化していたが。

 中には、すまなさそうな笑顔で彼のお母さんが四人がけテーブルに座っていた。リビングで彼の遺影を見ながら。顔は笑顔だったが、目はこちらを向いていなかった。

 私は、おばさんに会釈を済ませると、靴を脱いで上がろうとした。だが、一瞬そこで手を止めた。いや、止まった。

 ──いないはずの彼の靴が、あったのだ。

「おばさん、これ……」

「気にしないでいいのよ」

「違います。遺品は整理したって言いましたよね? じゃあなんで……」

 これ以上追求しようとしておばさんの顔を見ると、自然と口が止まった。おばさんも、涙を浮かべていた。気がつけば私も泣いていて、彼の靴に水玉のシミが出来ていたほどだ。

「……ごめんなさい」

 私はそう言って、靴を脱いだ。彼の部屋へと続く廊下へと足を踏み入れる。

 遺品はさっき言ったとおり片付けられているだろうが、好きな人の温もりを探すのはおばさんも許してくれるだろう。

 だが、彼の部屋へ近づくに連れて涙が溢れ出してきて、右か左か分からなくなってきた。右にも左にもドアがあって、意味がわからなくなってる。一旦床へへたり込んで、視界がひらけてきたころ、立ち上がって、ドアを開いた。



 ボウガンの弓を尻目に、私は手に持った改造エアガンで応戦する。

 相手は矢を雨のように乱射してくるのに対し、こちらは改造とはいえエアガン。護身用なのでそうそう頼りには出来ない。段数はこちらのほうが上だが、この状況じゃあっちも結構持ってきているようだ。惜しみない矢の嵐や、挑発にのったことから、怨恨的な犯行であるのは間違いない。よくあることだ。

 私は今までの走り方を変え、音を消すことに集中した。矢の角度や音から相手の位置を推測。一体相手にここまで丁寧にやるのは久しぶりだ。

 私は、彼の姿が頭をよぎり、自然と笑みがこぼれた。



 ドアをひらくと、そこには彼の部屋が広がっていた。

 意味がわからずに、なにか喩えようのない吐き気が胸を襲った。私はうずくまり、廊下に出た後、腹を抱えて丸くなった。私のうめき声を不審に思ったのか、おばさんが私の近くにいた。

「遺品整理……やっぱりまだやってなかったんですね」

「そんなわけないわ。ほら」

 私を振り向かせてドアを開けると、そこにはまっさらな部屋が広がっていた。

 そこにはさっきのような変な感覚はなく、ただただ虚しさだけが部屋を支配していた。

 さっきの幻覚はなんだったのか。わたしには知る由もなかった。


 おばさんに会いに行った次の日、彼は普通に私に挨拶してきた。

「よっ」

 いつもと変わらない声で、いつもと変わらない笑顔で、いつもと変わらない顔で。

 またどうしようも無い吐き気がこみ上げてきた。

 私のものなのに……、私のものにしたはずなのに、それを死の法則を無視して私の前に現れた。

 結局のところ、通学路で私は嘔吐し、学校は念のため休んだ。



 真夜中、彼のことを思い出しながら私は夜道を散歩していた。

 たしか最初の出会いは、私が十人殺したマンションの近く。あの頃は一般人の気配すら気づけず、人に対しては細心の注意を払っていたっけ。でも、見つかっちゃった。

 あの時は同級生に見つかったと思った。けれど、次の日もまた次の日も普通に接してくる彼を見ると、どうしても好きになってしまった。

 こんな私でも、普通に接してくれる。

 勉強するときも、学年上位であれば気軽に誘って、「俺、上も下も居ないからさ~、家で教えてもらうとかできなくって。兄弟欲しいな~」とボヤいていたのを聞いた覚えがある。

 思い出に浸っていたら、それを邪魔するかのように、殺気を感じた。



 特別な人──、そう、彼を○すために私は本気でかかっていった。

 それは私に出来る精一杯の愛情表現で、意思表示だった。

 それが覆された……?

 なら

 ならもう一度○すまで。

 相手の真後ろに位置取った私は、後ろから押し倒してやった。

 手足をじたばたさせるのに対して、包丁を首筋に当ててやったら静かになった。

「なんで……、なんで貴方がいるの!?」

「クソ……、こんなことなら兄貴に言っておけばよかった。言っておけば死ぬことはなかったのに……」

「あに……き?」

「知らねえのかよ、俺と兄貴は双子だ。そうか、根暗女だから知らないのか。ロクに付き合いもせずに一方的にストーカー、最低だな、お前」

「違う! 私にはこうするしかなかった……」

「殺人鬼、いや殺戮野郎がか?」

「だって、そんな私にも別け隔てなく……」

「それは兄貴が知らなかっただけだ」

「嘘だ! そんなの信じない!」

「勝手にするがいいさ。だが、俺はお前の好きな彼じゃねえ。そこんとこ……おえぇっ」

 腹部に包丁を突き刺すと、男は血を吐き出した。

 男を殺したとき、私はいつものような快楽を抱かなかった。

 途轍もない不快感。

 いつものように、胸が締め付けられるような感覚じゃない。ただ純粋に不快だった。

 彼のもとへ行きたい彼のもとへ行きたい彼のもとへ行きたい

 私は包丁をこちらに向けた。

 多くの人の血を吸った包丁は、赤黒くキラリと街灯を反射した。

 その光は私を狂わせて、惑わせて、惚気させてくれるのだろう。

 いますぐイクからね、君の元へ。

 人を殺すときの、焦燥感や罪悪感、恐怖心や憎しみが胸の中でぐるぐるまわって、光って、私を狂わせる。

 殺戮野郎が最後に○すニンゲン。

 それは、私。


 自分の包丁の先を胸に当てる。

 力を入れるとすぅっと吸い込まれるように中へ入っていく……。

 イタイイタイイタイイタイイタイ怖い怖い怖い怖いタノシイタノシイ

 狂ってしまいそうな快楽がどっと押し寄せてくる。

 もっと、もっと心臓をかき回したくなってきた……。

 ぐじゅぐじゅになったこの世界。

 結局、私みたいなヒトデナシは助けなんかないのだ。

 一方的な愛で終わってしまうのだ。

 それでよかった。

 それで……



 だれかに、たすけてほしかった

 だれかに、あいしてほしかった


 そんなわたしは、ころすことしかできないけど




 少女の亡骸は、涙の跡が付いていたという。














期限ギリギリですみません。

テーマ無視ですみません。


……ですが割と気にいってます。

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