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小説を書こう!  作者: 小説家の集まり
第四回 テーマ:殺戮
16/25

テーマ:殺戮 “理不尽” 作者:音操

指定:戦闘シーンを入れる


禁則事項:近距離武器の使用禁止(ナイフ、ダガー以外)


禁則事項2:視点移動は(使うとすれば)一回限り。二人の視点しか使わないこと。


※この企画は誰でも参加出来ます。


もし『自分も参加したい』と言う場合には企画主催者である『月影舞月』さんにメッセージかコメントをお願いします。


 表と裏は表裏一体であり、それは決して人の目に付く事は無い。

 誰しもが自らの裏を見る事は叶わず、裏が表を見る事は叶わない。

 時に人は安息しきっている。どこに、裏の存在があるのだろう? ……何よりも近い場所。自らに最も近い場所にこそ裏はある。だが、裏とは見えないものだ。故に、裏の存在を知っていても普段の生活ではそれを知覚することは叶わない。


 世の中の恐怖とは数え切れない物がある。だが、最も恐ろしいモノは我々の範疇を超えた別次元の存在。漠然とした恐怖。理解できない狂気。それは理解できないまででいい。我々に出来るのはそれをありのままの情報として処理し、その光景が何であるかを理解しない逃避のみだ。

 それらは決して理解してはならない。なぜなら、彼らの恐怖とは我々の脳内で処理出来る情報量を大きく越えているからだ。


 「怖い」

 誰かが呟いた。

 「怖い」

 それに誰かが同意した。

 「怖い」

 言霊は伝染し。

「怖い」

 恐怖は波を打ち。

 「怖い」

 絶望は生気を奪い取る。

 それはゆっくりと。歩くような速さで。けれど、逃げ切れない。

 狂気が渦巻く。気がついた時、それは死期同然だった。狂気から逃げる術は死のみ。故に、全ては死に。



 全ては終わる。



「ふざけた世界だ」

 確かに、ふざけている。だが、変えられるのか? 否。変われるのならば、当に変わっている。

 だが、それは良かれ悪かれを別としてだ。悪くも良くもならない。ただ略奪されるだけの生。それ以上に悪い事を探すのは逆に骨が折れる。

 悲鳴が轟く。いや、それは錯覚だ。悲鳴は轟かない。聞きなれた騒音。その意味すらも忘れてしまう位にこの音は聞きなれてしまった。

 遅れてやってくる静寂。一つの悲鳴が止み、一つの命が消え、日常の一コマが繰り返される。

 そう。当たり前なのだ。この虐殺されるだけの日々は。

 誰一人としてそれに疑問を出す訳でもなく、それと同様にそれが正しいとも思わない。疑問を持っても変えられない。疑問を抱き、それに答えを出そう物なら死んだ方が幸せだ。そこまで以上の恐怖を感じないのだから。

 「……はは。こっちじゃ、これが普通なのか?」

 信じられないと言うように笑う。少年と青年の境目に位置する外見。青少年と呼ぶだろうか。

 身長は一般的成人男性と同じ位か。体にはあまり筋肉がついておらず、逆に無駄な脂肪がついているようにも見えない。よく言えば一般的な外見だ。

 黒い髪と黒い瞳。露出した肌からは僅かに焼けた小麦色の肌。黒いシャツに青いジーンズ。だが、その姿には暗い空気が見えない。

 そう、空気だ。この者は違った。虚ろなガラスに風景を写している者達とは違う。確かな意思の有無。その視線は揺るがず、ただ目の前の光景をありのままに写していた。逃避する意思は欠片も見えず、どこまでも真っ直ぐな視線に宿るは確かな憎悪。だが、それはただの憎悪ではない。

 希望を信じ、明日へと歩もうとする者達の優しき怒り。理不尽に未来を奪われた子供達を埋葬する親達の切実なる叫び。故に、正しき怒り。

 「さてっと……」

 青少年はそう呟くと、悲鳴が止まない方向へと歩き出す。

 それはさながら、死がゆっくりと迫るように。



 阿鼻叫喚の日常。

 生きてることが呪いのようで、死ぬことが祝いのような生活。

ならば、蹂躙されるだけのこの人生は……なんなんだろう? 

 誰一人として救われず。

 誰一人の例外も無く。

 全ての人類は蹂躙され。

 全ての人間は死に絶える。

 なんて、理不尽な世界。



 「よう。始めましてだな、化け物共。そして、さよならだ」

 全てを諦めた悲鳴の中に、一つの意思が生まれた。ただ慟哭するだけの日常に、感情が混じり込んだ。混じり込んだ感情はうねり、影と成す。

 生れ落ちた感情は駆ける。そして、見る影が消え失せるまで切り刻む。

 つい先ほど、影だと感じた黒いモノはつい先ほどまで生物として存在していた何かだ。とはいえ、それを生物と呼ぶには抵抗がある。

 それは例えるなら、足の生えたイソギンチャクだ。その外見を理性が拒絶し、本能が享受する。それは人間とは徹底的に相容れない存在だと。そして、次に理性を退けた本能が叫ぶ。手遅れだ、と。

 絶対的な死。理解をすれば、発狂せざるを得ない。

 「散々楽しんだんだろ!? なら、もういいじゃねぇか!!」

 次々と標的を影のように切り刻んでいくその姿……確かに、それは正義だ。悲鳴を上げる人々を救った。

 だが、同時に理不尽だ。理不尽な正義。一切の情け容赦も無い、無情な鉄槌。なんて、憐れ。

 そこまで一方的な殺戮を終え、青少年は辺りを見回す。

 黒い影は大地にこびり付き、人間の血と混ざり合い不規則に変色している。が、死んだ者の埋葬などは当然しない。一々悲しんでいては、生きていけない。

 ならば、再び歩き始めよう。悲しむ内に誰かが死ぬのならば、全てが終わった後に悲しもう。



 話を変えよう。

 彼は、狂人と呼ばれていた。

 誰よりも早くあのイソギンチャクのような化け物を視界に捕えてしまい、誰よりも早く狂ってしまった。故に、彼は大きくその思考回路を変換させた。

 即ち、化け物を見ても理解をしない。目の前にいるモノが生物であろうが無機物であろうが、敵意や 害意を剥き出しにしているのならば殺戮し尽くす。故に、彼は狂いながらも人間でいられた。

 通常なら、理解をする前に死んでしまうというのに、彼は耐え切った。それを可能とした常人離れの精神力。それは、幸か不幸なのか。今となっては闇に包まれたままだ。

 狂っている。その在り方は歪んでいる。存在その物が間違っている。

 だが、それでも彼は殺戮の限りを尽くす。一度狂ってしまったら、二度と戻れない。その胸に、人への憧れを抱きながら。




 本来ならば、交わる事は無かった。

 表が裏を見る事など、望むことは出来ても誰一人として成し遂げるのは不可能だった。

 死んでるも同然の平和を、いつまでも続くと信じている者達からしてみれば裏が見えないのだからそう思うのも仕方の無いことだ。だが、一つだけ間違った……いや、間違ってしまったことがある。

 彼は、何の間違いか裏を知った。平和が死んだようなものだと理解してしまった。故に、狂ってしまった。それは防衛反応。誰にも咎めることは出来ない。



 ……さて、今の安息が裏表ある一面なのか。それとも、誰一人として気がつかないだけなのか。

 誰一人として知らないのだろう。なぜなら、仮に知ってしまえば狂う他ないのだから。

戦闘シーンが薄かったり、展開がやや強引だったりかもしれませんねぇ。

精進しなくては。

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