テーマ:殺戮 “断罪(てんし)” 作者:ムーギネーター
指定:戦闘シーンを入れる
禁則事項:近距離武器の使用禁止(ナイフ、ダガー以外)
禁則事項2:視点移動は(使うとすれば)一回限り。二人の視点しか使わないこと。
※この企画は誰でも参加出来ます。
もし『自分も参加したい』と言う場合には企画主催者である『月影舞月』さんにメッセージかコメントをお願いします。
とある戦場―――
幾多の命が絶え、血が大地を禍々しく染め上げたその場所に10人の人影があった。その全身は泥と返り血で皆染め上げられており、彼らがココでどれだけの事をしたのかを明確に示していた。
傭兵。それが彼らに共通の肩書きだった。幾多の戦場に身を投じ、金次第で敵にも味方にもなる死神部隊。それはこの戦争においても同じであり、今も敵であるS国の指揮官を討ち取って雇い主であるN国に勝利を齎していた。
「今回も楽な任務だったな」
敵の亡骸の側に佇んでいた隊員の1人が、余裕をその顔に湛えながら呟く。まるで運動でもした後の様なその口調からは罪悪感など微塵も感じられず、それが彼の異様さを際立たせていた。
「全くだ。手応えが無さ過ぎてつまらねえな。俺達に勝とうってんなら、神様とやらでも引っ張って来た方が良いんじゃねえのか?」
その独り言に対し、近くにいた熊の様な体格の隊員が同意する。彼もやはり言葉や顔に嘲りの色を浮かべており、その異様さを滲ませていた。
「まだ任務中だ、私語は慎め」
そんな彼らに対し、隊長を務める男が叱責の声を飛ばす。2人はそれに対して一応の礼を備えた返答をしてから、再び持ち場へと戻った。
「コレでN国に敵対する国はない……か。しかし傭兵の我々を最前線に出して自分達はシェルターに引き籠る事を選んだ国が、戦後にこの勝利を誇ると言うのも妙な話だな」
皮肉めいた言葉を吐くと、隊長は雇い主に作戦の完了を報告すべく通信回線を繋いだ。
と。
「な、何だお前は!? ぐわあああああッ!!!」
「な、何を……がばッ!!!」
「ま、待て! お前達ののぞ」
「ひっ……うわあああああッ!!!!!」
繋ぐと同時に鼓膜を介して伝わったのは、自分達の今回の指揮官を始めとする軍上層部の声。常に傲慢にして不遜であった男のそれとは思えぬ程怯えた声で悲鳴が紡がれた直後に隊長の耳に金属の牙が肉を貫き分厚い壁を破砕する不快な音が次々と響き、同時に相応に重量のある物体が床に倒れ込む音が続いた。
「!?」
音だけで何が起こったかを把握して、隊長は驚愕を感じる。
<コレで我らと我らが主を愚弄した者達は全て断罪したか>
<いや、まだだ。この者達が造りし人形とそれに護られし者共が残っている>
<そうであったな。しかしこの者達も愚かなものだ。主を愚弄しなければ、我らに絶やされる事も無かったであろうに>
<それが人間のどうしようも無い程に愚かな欠陥。以前も天に昇らんと塔を建てようとしたのがその良い例だ>
<ああ、アレか。あまりに薄汚いが故に記憶の片隅に忘れていたな>
そんな彼の思考を無視するが如く、通信機の向こうの2人は無機質な声で確認作業と会話を行う。それらは磨き上げられた水晶を髣髴とさせる綺麗な声であるが為に、余計に異常さが際立っていた。
「……!? 本国が襲撃された! すぐに戻って迎撃に向かうぞ!」
「「「「「「「「「ハッ!!!」」」」」」」」」
何故か身体を奔った寒気に促される様に、隊長は指示を出した。それに対してその場にいた9人は即座に応答すると同時、隊長と共にその場を飛び出して本国へと戻って行った。
そして1時間後に帰還した瞬間。
「な、何だ……コレは……」
「生体反応ゼロ……。全滅、だと……?」
視界を埋め尽くしている光景を見て、思わず隊長は絶句した。
そこに広がるのは正しく惨状。男も女も大人も子供も健常者も病人も若者も老人も銃後の者も兵士も等しくその命を絶たれ穴だらけの肉塊と化して転がっているその様は、正しく地獄と言う言葉が相応しかった。
と。
「コレは断罪。我らが主を愚弄した愚かな生き物と、それを増長させた元凶であるお前達への粛清だ」
「!?」
不意にそんな声―――先程聞いた水晶の様な澄んだ声が響くと共に、数十m先に1つの人影が現れた。
13、4才程の少女だった。血の様に赤い髪をツーサイドアップにし、ルビーの様な光沢を放つ赤いリボルバー拳銃と軽鎧―――明らかに時代遅れな武器と防具を身に着けている。こちらを射抜く瞳は金色に輝いており、明らかな異質さを隊長達に感じさせた。
「な!? こ、子供!?」
「繰り返す。コレは断罪。お前達に選択権は無い。大人しく裁きを受けよ」
驚愕の声を無視して、少女は只淡々と告げる。容姿から察せられる年齢に見合わないその口調で宣告された内容はあまりに一方的で、一切の反論を許さないと言う傲慢かつ威圧的な雰囲気を周囲に放っていた。
そして。
「え……?」
訳が分からないと言う表情のまま、熊の様な体格の男が地面に横たわる。その身体の中央には巨大な穴が穿たれ、そこから背後の景色を見渡せる様になっていた。
「き、貴様……!」
銃を構えた体勢のまま佇む少女を視界の中央に捉えながら、隊長が銃を抜く。同時に放たれたのは大口径の弾丸。常人が喰らえば頭が吹き飛ぶ威力のそれは真っ直ぐに少女の身体を穿たんと迫り。
「ふん……」
“侮蔑する様な少女の反応と共に片手で軽く掴まれた”
「な……何……?」
有り得ない現実に驚く隊長の前で、少女が握り締めた手を開く。同時に落ちたのは当然弾丸。しかしそれはまるで強い力で圧迫されたかの様に変形しており、最早弾丸だった時の姿が想像出来る状態ではなくなっていた。
「こんな物で主を凌駕した気でいたとは……つくづくお前達は救えんな」
心底失望したとでも言わんばかりの語調でそう呟くと同時、少女は再び銃を抜いた。そして―――
「断罪する」
無造作に3発放ち、隊長を含む3人の身体を“粉砕”した。
「こ、このガキが!」
その行動に反応し、残りの6人が少女へと携えている銃器を一斉に構え、即座に放った。
(命中率100%……あのガキが何者でもコレで終いだ! 地獄へ逝きやがれ!)
少女へと殺到する弾丸を見やりながら、隊員の1人はそう心中で嗤った。
だが。
「な……ッ!?」
それが即座に糠喜びに変わると同時、隊員の男の顔を驚愕が彩る。無理も無かろう。
“彼らの放った弾丸の全てが、少女に命中する直前でその歩を止めて地面に落ちたのだから”
「な、何だテメェは!? 一体何なんだ!」
金属と舗装された地面が宛ら楽器の様に奏でた音を無視して、男がその場にいた全員の気持ちを代弁する。既にその表情は恐怖に満ちており、良く見ると身体も小刻みに震えていた。そんな彼へと視線を移すと、少女は只一言こう答えた。
「私はカマエル。罪を犯した人間を断罪する、破壊の天使だ」
その言葉と共に、少女―――カマエルが両手に構えた銃から放った銃弾が6人の頭を木端微塵に吹き飛ばした。
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<終わったか、カマエル>
カマエルの周囲の全ての命の灯が消えると同時、彼女の脳に直接声が響いた。
「ああ、こちらは済んだ。“そちら”はどうだ?」
<こちらも済んだ。しかし主もこんな物に何故愛情を注がれるのか……>
「それは我らの考える事ではない。そろそろ帰るぞ。我らは無駄に地上にいるべきではないのだからな」
<それもそうだな>
そんなやり取りと同時、カマエルの身体を眩く神々しい光が包み込んだ。
そして光が消えた後、そこには彼女がいた痕跡は何1つ残っていなかった。
無残に打ち捨てられた、死体に満ちた死の国以外は。
駄文で済みませんでした!