↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/44

Episode.44

もうすぐ春になる頃、王都の街並みは花に彩られ暖かなな風も吹くようになっていた。


アキラは少しだけ緊張した面持ちで、リリアーナを船でのランチに招待していた。


船のランチは高級を謳っているいるだけあって、

繊細で綺麗な盛り付けがされている。


味ももちろん一流で、満足がいくものだった。


「ちょっと話があるんだ」


アキラは心の中では言葉を慎重に選んでいた。


リリアーナは座ったまま、柔らかい笑みを浮かべてこちらを見つめる。

デザートのケーキを、軽く口に運ぶ仕草が可愛らしい。


「話って…何か大事なこと?」


リリアーナが軽く尋ねる。


「うん、そう…大事なこと」


アキラは小さく息を吸い込み、目をしっかりと彼女に向けた。


二人の間に、柔らかい光が差し込む。

街並みは静かで、遠くで鳴く小鳥の声だけが耳に届く。

アキラは言葉を探しながら言葉を紡いだ。


「リリアーナ、君と出会ってから、僕の世界は変わった。君となら、どんな困難も乗り越えられる。

君のことを、もっと大事にしたいと思っている」


リリアーナは静かに聞き入る。


その瞳はいつも通り強く、しかしどこか柔らかさを帯びている。

アキラはポケットから、小さな箱を取り出した。


「…だから、結婚してほしい。誠実に、君を守り続けたい。ずっと、隣にいてほしい」


指輪は古びていて、彫刻がされているようだがよく分からない、

しかも、中央には中ぐらいな石が、左右にはさらに小さな石がはめ込まれているだけだ。

指輪は変色し、石も輝きを失っており、ぱっと見ただけでは、

そんなに価値がある指輪には思えなかった。


「修復してみて」


リリアーナはくすりと笑って修復する。


「凄い」


古びた状態ではまったく分からなかったが、

”修復”をすると、イメージは一変して、その凄さに驚かされる。


この指輪がそこらの宝石店で売られている品とは、かけ離れた特別な品である事が、

その繊細な彫刻と輝きを取り戻した宝石で分かる。


「”鑑定”ではSSランクで、何代目か前の王が、王妃の為に作らせた物だそうだ、

 新品はいつでも贈れるけど、これほどの品は、もうなかなか贈れないと思って」

 

リリアーナは少し息を呑み、微笑む。


「…アキラ、ありがとう」


言葉少なに、しかし確かな感情を込めて頷く。その目には涙が光る。


「私も…ずっと、あなたと一緒にいたい」


アキラは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じる。

ゆっくりと指輪をリリアーナの指にはめる。

指先から伝わる温もりが、互いの心をさらに強く結びつける。


その瞬間、背後で柔らかい羽音が聞こえた。

振り返ると、ナイトが嬉しそうに尻尾を振りながら、二人の周りをくるくると回っている。まるで祝福しているかのように、白い毛並みが光を反射し、羽が柔らかく揺れる。


アキラは微笑み、リリアーナの手をしっかり握る。


「ナイトも、祝福してくれてるみたいだな」


リリアーナは笑い、ナイトの頭を撫でた。


「ええ、本当に…幸せな瞬間ね」


その日の王都は、外からの喧騒を忘れたかのように静かだった。

小鳥の声、遠くの鐘の音、そして窓から差し込む冬の柔らかな光。

それらすべてが、二人の新しい日々の始まりを優しく包み込む。


アキラとリリアーナは、互いの目を見つめながら、これから先の人生を共に歩むことを心に誓った。ナイトも二人のそばに寄り添い、まるでその誓いを守るかのように静かに座る。


――こうして、平凡でありながらも、心から誠実で、温かい一日が続いていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。