Episode.41
ドラゴンが無事倒されたのを見届けてから、冒険者ギルドへ戻った。
ギルドに入るなり、冒険者達に囲まれる。
「どうだった?」
「無事なのか?」
「生きているな?」
俺は笑いながら言う。
「騎士達の活躍のおかげでドラゴンは倒されました、もう大丈夫です」
そう言うと、冒険者ギルド中に歓声が上がった。
俺はリリアーナと抱き合い、
その後グライブさんに会い、報告しマジックバックを返す。
「アキラ、君は英雄だ」
「いえ、目立ちたくないので、王宮の報告も俺は出さないで下さい」
その言葉にグライブさんは片目をつぶっていたが、何も言わなかった。
そして日が明け、朝から王都の街には、いつもとは違う熱気が漂っていた。
人々の表情は明るく、商店の前には自然と人が集まり、笑い声が小さく響く。
アキラが商人ギルドの広間に足を踏み入れたとき、その光景はまさに祝祭の前夜のようだった。
「おはよう、アキラ」
職員の何人かが顔を上げ、挨拶をする。
昨日までの悲壮感は見えず、代わりに心からの喜びが表れている。
アキラも微笑を返す。
「皆、今日は特別な日だぞ」
ギルド長のグラハムが、少し高めの声で広間に立つ。
威厳ある姿に自然と目が集まる。
「ドラゴンが無事倒された!それを祝って、今日は宴を催す!」
歓声が一斉に上がる。
拍手、笑い声、乾杯の音が混ざり合い、広間は一瞬にして熱気で満たされた。
ナイトは床に伏せて静かにしっぽを振る。
白い毛並みは光を反射し、まるで小さな灯りのように揺らめく。
アキラは思わず笑みを浮かべる。
「お前も楽しもうな、ナイト」
広間の中央には、グラハムの指示で巨大なテーブルが用意され、並べられたのは、酒樽30個に加えて、果物やパン、チーズ、肉など、祝宴にふさわしい食べ物の数々。
樽から立ち上る香りは甘く、樽の木の香りと混ざって鼻孔をくすぐる。
「さあ、皆!勝利に乾杯だ!」
職員の一人が声を上げ、ジョッキを掲げる。
それを合図に、広間中の人々が同じようにジョッキを掲げる。
アキラも微笑みながら、自分のジョッキを掲げた。
ゆっくりとジョッキを口に運ぶ。
酒は冷たく、喉を通るたびに心地よい温かさが全身に広がる。
宴はしばらく続き、笑い声が絶えない。
アキラは、ふと周囲の光景を眺める。
職員たちは互いに肩を叩き合い、冗談を言い合い、表情はどれも生き生きとしている。
彼らの楽しそうな姿を見ると、このギルドに来て本当に良かったと心から思える。
ナイトは、アキラの足元で遊ぶように歩き回る。
時折、尻尾で倒れそうな酒樽に触れそうになり、慌ててアキラが手で押さえる。
「こら、ナイト! お酒をかぶつたら大変だぞ」
白い毛並みを揺らしながら、ナイトは無邪気に鳴く。
宴も佳境に差し掛かり、グラハムが声を張り上げる。
「よし、この勝利を祝して、もう一杯だ!皆も存分に楽しめ!」
ジョッキを掲げる人々の波は、広間中に広がる。
アキラは微笑みながら、再び一口、酒を口に運ぶ。
心の奥底には、満ち足りた幸福感が流れる。
努力と信頼、仲間たちの支えが一つになった瞬間。
これ以上望むものはないと思えるほど、胸が満たされる。
夜も更け、宴が落ち着く頃、アキラは自分の部屋へ向かうことにした。
ギルド内の廊下を歩くと、酒樽の残り香と、祝宴の余韻がまだ漂う。
ナイトも傍らに寄り添い、白い毛を揺らしながら静かに歩く。
部屋に入ると、穏やかな灯りが揺れる中、アキラはベッドに腰を下ろす。
今日の出来事を思い返す。
職員たちの笑顔、ナイトの無邪気な仕草、グラハムの豪快な笑い声――すべてが心に鮮明に刻まれている。
深く息を吐き、心の中でつぶやく。
「これが、幸せってやつか」
ナイトはベッドで丸くなり、白い羽を小さく震わせながら、アキラのそばで眠る。
その姿を見て、アキラも微笑みを浮かべる。
静かに目を閉じると、今日一日の喜びと満足感が、全身にじんわりと広がる。
夜空には星々が瞬き、街を静かに照らしている。
アキラは幸福感の中で深い眠りに落ち、心の奥底に、これからも続く未来への希望を抱いた。




